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『女は家庭に入れるからいいよな』ということばの残酷さ


これは実際に言われたことがある言葉である。

当時、新卒で入社した会社を二年で辞める前、都合の良いことを言って結局私のキャリアを台無しにした男の先輩(40代くらい)に言われた。当時の私は、その人の言葉も一理あると思っていた。

たしかに、たった2年であっさり仕事を辞められるのは、羨ましいと思われても仕方がないかもしれないと思ったのだ。

ただこの男には『彼氏がいるか』と聞かれたことがあったので、その際に『普通にいないし、結婚もしない』とは言っていたはずだったが、『女はどうせ結婚する』という思い込みのせいでそういう色眼鏡でしか『若い女性』のことを見れないのはかわいそうに思う。

※ちなみにその男性の話は過去に書いたが、今でも恨む気持ちがある。特に運用部署に所属してたと言うたびに、事情を知っている人に「あぁ~」(微妙な顔)と言われることが屈辱的だった。


ちなみにその男性は私が配属されたばかりのときに警察沙汰の事件をやらかしている(色々教えてくれるのは嘘だったし、より人間不信になった)今では永遠にかかわりたくない存在だ。



私は今、障害者雇用の事務員として働いている。


本当はSEとしてシステム開発に関わりたいと思っていた、新卒のあの頃を思い出すと不甲斐ないような気分になる。もう少し頑張れたのではないか、あの時不安を押し倒して開発部署に行っていれば、もっと違う未来があったかもしれないとも思う。


もっと早く、コロナ禍になる前に仕事を辞めて転職をしていれば、こんなことにはならなかったかもしれない、とも思う。

気遣われないと働けない、単純な仕事しかできない、そう思われて働くことに安堵しているが、同時に少しだけ情けなく思う。


私のあの頃抱いていた志は、その程度だったのだろうかと思う。



ただ、あの頃の私に、会社に人生をささげたいわけではないのに、毎日ストレスを抱えて生きる意味ってあるのだろうか、と言いたい。あの頃仕事を辞めたことは、間違っていたと思うけれど、それでも心を殺して働き続けなくてよかったと思っている。


もし誰かが仕事を辞めたいと言ったら、おそらく私は止めると思う。ただ、最近は去年よりは求人状況が良くなっているし、辛くて辛くて仕方がないなら、辞めても良いと思う。

できれば次の職場を決めてからの方が良いけれど、自分が辞めたがっているなら嘘をつき続けなくても良いと思う。


私は1年間無職だった。去年の3月に正社員を捨ててから、4カ月以上無職だった時期を含めたら1年以上だ。


転職エージェントに言われた、

「綺麗な履歴書だと思っていたんですけどね……」

と言った言葉が、当時かなりショックを感じた言葉で、今も覚えている。その人には在職時に相談したことがあり、いくつか面接を受けたこともあった(全部落ちたが……)ので、余計にショックだった。


履歴書に穴が空いてしまいましたね、とも言われた気がする。ブランクのことを穴と呼ぶのか。その時に知った。なんだか、負け犬になったような、悔しくて屈辱的な気分になったように思う。


紆余曲折あって、現在障害者雇用で雇われるに至っているわけで、初めから障害者雇用を目指したわけではないし、楽をしてきたわけでもない。嫌というほど自己分析したし、何度も面接の練習もした。

簡潔に分かりやすく、齟齬がないように話すこと、自分の発達障害の特性を分かりやすく話すこと、色々なことを意識した。


私が「女は家庭には入れるからいいよな」と言われたのは、当時の私は何も知らないまま会社を辞めたからであり、私のことが羨ましかったからでもあると思う。


今更辞められないけれど、その仕事をするしかないと、仕方なく働いている人たちばかりで、同じ部署の数人に「辞められて羨ましい」と言われた。たぶん、揶揄的意味合いもあっただろうけど、それでも『どうせ結婚するんだろ』と思われてるなら、ひどく侮辱的だなとさえ思う。


私が障がい者雇用を選んだのは、自分が発達障害と診断されたこともあるが、それと同じくらい自分が『恋愛も結婚もしない』道を選んだことが、とてもとても、私の中では大きい。


『恋愛も結婚もしない』なんて、今時珍しくないよって思ってもらえればいいけれど、ほとんどの人が結婚するし育児もする。最近ではそうでもなくなっているけれど、今の職場は既婚者や子持ちが多い。


私が恋愛も結婚もしないことに、誰も触れないでほしい。

『人格がおかしいから』
『性格が悪いから』
『変な人だから』
『自己中だから』


世の中は結婚をしない人に対して、奇異の目を向ける人が未だに多い。そんな風に思われるくらいなら、『障がい者だから』と思われた方がマシだし、その話に触れないでもらえた方が良い


誰も聞かないでほしい。


もちろん、発達障害と『恋愛をしない』ことに相関関係はないはずだ。私が他者に恋愛感情も性的欲求も抱かないことは、発達障害との相関性は認められていないし、そこに障害は関係ない。


ただ、障害者だから結婚してなくてもおかしくないと思ってもらえればそれでよいし、誰もそこに触れないでほしい。


だからお互いが好き合って、結婚して子どもを産んで、『普通に』幸せになることは、全然『普通』じゃないと私は思うし、奇跡だと思っている。



おめでとう、と言いたい。そして私は『家庭に入る』ことはないけれど、それでも応援する気持ちはある。


結婚していようがいまいが、互いを尊重し合える社会になることを願っている。



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