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短編小説

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2023年9月の記事一覧

【短編小説】どうせ今だけ

【短編小説】どうせ今だけ

自殺した幽霊だけが、私は視える。

いつからかは覚えていないけど、もしかして、私自身にその願望があるからかもしれない。

なんで幽霊をみたときに、自殺した人だって分かるの?と聞かれた事があるけど、答えは簡単だった。

本人が教えてくれるから知っているだけ。

幽霊は、自分が視られていると分かった瞬間喜び、私にいつも声をかけてくるのだった。

態度はそれぞれ違った。

みえている、と喜んでいる人、嫌

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【短編小説】絹のようなこころ

【短編小説】絹のようなこころ

絹のように触り心地の良いこころになれたらいいのに、と、バスに揺られながら思った。

空は秋のくせに、気温だけ取り残されたみたいに暑い。

このまま自分も取り残されてしまいそうな気持ちになる。

本当はそんなことなんてなくて、ただいつも通りに、このバスから降りて職場に行けばいいだけ。

ただそれだけで、自分は社会から取り残されることなく、疎外感は消えて、歯車として生きていく。

それがこんなにも虚し

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