そらこ

何回か同人イベントに参加しているだけの一般人です。小説とか犬とか日記とかを書こうとおも…

そらこ

何回か同人イベントに参加しているだけの一般人です。小説とか犬とか日記とかを書こうとおもっています。だいたいずっと何かから逃げてる。 BOOTHhttps://sososorako15.booth.pm/items/4328534 奇跡的になにかご依頼あればお待ちしています。

最近の記事

【短編小説】いつか思い出になるとか知らねえよ

夢のなかみたいな夕日と、世界がこれから終わりますと言われたら納得してしまいそうな雲が迫ってきている。空が近い。どこかで見た気がする景色を、ずっと思い出せずに帰路につく。 海辺に住んでいると、よくいいなあ、と言われる。絶対大人になっていい思い出になるよって。 そんなこと知らねえよ。悪態をつきながら、毎日船に乗っている。自転車を押して、たいして便のない時刻表を横目に歩く。 Iターンが流行っているらしく、最近中途半端に都会から来た人間を見るようになった。何が面白くてこんなへん

    • 【短編小説】おーしまい

      「さな、死んだんだよ」 写真におさめたら白く光って色が飛んでしまいそうな空が、窓にうつっている。 カウンターの席しかない牧歌的な喫茶店に似合わない言葉だったので、私はまず、聞き間違えた、と思った。口を開いていた光代のほうを眺め直した。思ったよりも深刻な表情に確信して、身体が固まった。 「え」 「去年。事故で」 ひとつひとつ駒を置くみたいに、そっけなく光代が教えてくれた。 「知らなかったんだ」 光代にそう言われて、羞恥のような、怒りのような気持ちが、ふくふくっと張

      • 【短編小説】お久しぶりです恋人さん

        手を繋ぎたいです、と急に言われて、最初は分からなかった身体が、首の付け根からぐぐぐーっと熱くなって反応する。 「なに、きゅうに」 自分でもどんな顔をしているかわからないまま聞くと、 「たまにはいいでしょ」 と表情を変えずに返された。 指をからめることなく、握手みたいにしっかりと手を繋ぐ。 そのまま土手沿いを歩くと、ちらほらとスーツ姿で自転車をこぐサラリーマンや、大きなスポーツバッグを持った学生たちとすれ違う。目は合わない。けど、意識されているような気配を感じる。

        • 【短編小説】のぞく

          目に入ったのは本当にたまたまだった。電車で偶然隣だった初老の男性が、スマホを開いていた。車両が全部埋まるくらいの混み具合だったので、肩が触れるのは仕方のないことだ。むしろ座ることができない混み具合のなか、こうして席に座ることができたのはありがたいくらいだった。 メモ帳らしきアプリに入れている文字を、改めて打つでもなく、男性は眺めていた。自分は背もたれにしっかりもたれて、男性はスマホを胸の前に置いて眺めていたので、自然と見えてしまった。その画面を見て、あ、と口を開けてしまった

        【短編小説】いつか思い出になるとか知らねえよ

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          【短編小説】指先が眠る街

          ニトリで買った、あの時は確かにおしゃれだと思っていた壁掛け時計を見上げる。秒針がカチ、と無機質な音を立てて動いていた。 眠りたくて仕方がない。それなのに、目を瞑ってもう、何時間も経っている。明日はいつもより早くから出掛けないと行けなくて、そのせいで寝付けないのは分かりきっていた。いっそ徹夜をと思ったけど、正直、一日耐えられそうにない。夕方…いや、昼過ぎには意識を失う予感がする。おじさんなんて、すぐ眠くなる生き物なんだから。そこに「徹夜」が複合されたら、もう起きている方が不思

          【短編小説】指先が眠る街

          【短編小説】まだそこにいてね

          「みゆきちゃんはすごいね」 ゆうりに、手に入らない宝石を見つめるような瞳を向けられて、私は謙遜した。 「そんなことないよ。いつも周りに着いていくのに必死で」 「ついていっている時点ですごいよお」 ゆうりはいつも褒めてくれる。学生時代から、子役として活動している私を誇りに思って、いつも励ましてくれる。ただ、学校が一緒だっただけのゆうり。席が隣だっただけのゆうり。ゆうりのおかげで私は、特別でいられる。だから私はゆうりが大好きだ。 久しぶりに会ったカフェの中で私たちは向か

          【短編小説】まだそこにいてね

          【短編小説】翼をくれよ

          ピアノの旋律が美しくはじまりを奏でる。 興味がなくて半開きのままの目をなんとか閉じないように気をつけながら、口を開く。 「今私の願い事が叶うならば、翼が欲しい…」 歌に乗せると無くなる違和感は、文字で考えると、やけにわがままに、俺には映る。 この歌がどんな風に作られたのかなんて知らない。だからこんな風に残酷に思えるのかもしれないけど、だからって誰かに責められたとしてもそこには何の責任も伴わない、と思う。 この歌の主人公は、やけに利己的だなあとずっと考えていた。 富

          【短編小説】翼をくれよ

          【短編小説】「無理しないでね」という言葉の難しさ

          「まあ、無理せず」 課長からそう肩を叩かれた。窓の外は真っ暗になってもうしばらく経つ。 とりあえず、ありがとうございます、と返事をしたけど、無理ってなんだよと口内で悪態をついた。 パワハラなんてされたことも無く、評判も良い課長なので、別に心から嫌がっているわけじゃない。課長自身もこの部署に赴任してきたばかりで、たまに自分の方が『先輩』とからかわれるくらいだった。そんなこと知らねえよ、という先方からの連絡にも誠実に返事をしている。すごいと素直に思う。 無理しないって、ど

          【短編小説】「無理しないでね」という言葉の難しさ

          【短編小説】桜の降る昼は

          先週まであんなに満開だった桜は、もうかなり葉桜に変わってしまった。桜並木だった公園の一角は、夏に向かって準備しているように、太陽をさんさんと浴びていた。天気も良くて、正直暑い。桜の花びらの絨毯がそこかしこにあるけど、体が春と夏の間で困惑している。 声が聞こえたので目を向けると、花見をしそびれてしまった人たちが写真撮影をしている。かくいう自分も、そこに混ざりたいくらいだった。仕事が忙しくて、この公園にきたのは久しぶりだった。 あいにく、3才になったばかりの娘にスマホを奪われ

          【短編小説】桜の降る昼は

          【短編小説】ポニーテールを眺めるだけの夜があったっていいのに

          頭のてっぺんに近いあたりで髪を結んでいる、華奢な体が目に入った。ポッキーみたいな足がショートパンツから生えている。 体の線とは裏腹に快活そうに、少女は親らしき男性と喋りながらアイスを選んでいた。羨ましいとまでは思わなかったけど、選べば誰かが買ってくれるのってすごいことだよな、と改めて感じる。 少女はこっちの視線にも気が付かず、一瞥もされなかった。父親(多分)との距離が近く、仲の良さそうな雰囲気がまぶしい。 朝からフル稼働していた自分の体に、急に重力がのしかかってきた。ど

          【短編小説】ポニーテールを眺めるだけの夜があったっていいのに

          【短編小説】知らない私を私は知らない

          1Kの間取りの部屋は、1人で暮らすぶんにはちょうどいい。孤独や不安を抱えている今の自分にはありがたい大きさだった。 明日は遅刻しないように、壁に着ていく服を、ハンガーにかけていた。本当は私服でいい会社だけど、入社式があるからスーツを用意している。その服をベッドの上で、三角座りして眺めている。 さっきまで、つい数週間前まで実家の自分の家で観ていた、推しているVtuberの投稿動画を眺めていた。そこまでは良かった。そしてその後、全く関係がないように思える、フリー素材を使った昔

          【短編小説】知らない私を私は知らない

          【短編小説】にじむ空

          センチメンタルが襲ってくるから年度末は嫌いだ。 好きな人だけが課から居なくなって、嫌いな人だけが課に残ってしまった日の帰路、寄り道したくて知らない道路をうろうろしている。 あと一週間後の四月の自分が想像できなくて嫌になる。 落とし穴でもあって、気がついたらその穴に落ちてくれたらいいのに。 そう思いながら、にじんだ空を仰いだ。 おわり

          【短編小説】にじむ空

          【日記】しっぽ

          犬のしっぽがたまに、ジョイントでくっつくパーツみたいに見える時があるよ。 そんだけ。 おわり

          【日記】しっぽ

          【日記】光と散歩する

          よる、犬の散歩にいくと、犬が黒いので光だけがぽーっと浮かぶ時がある。 そんな時わたしは、光と散歩してる気分になるのだった。 おわり

          【日記】光と散歩する

          【おしらせ】頒布物の紹介【文学フリマ広島6】

          2024/2/25(日)に開催される文学フリマ広島6に参加させて頂きます!F-3にいます 諸事情で12時頃には退散する予定です🙇‍♀️ 設営等については、X(旧Twitter)で更新予定です。 【頒布について】 ①小説「眠れない夜明け 眠らないあした」 ②ときめくジャンルしおりくじ ※くじとありますが、欲しいものがあればくじをせずご購入頂いても大丈夫です🙆‍♀️ 価格も以前より見直したので、もし以前購入いただいた方で、奇跡的にまた来ていただけることがあれば、ぜひ前に

          【おしらせ】頒布物の紹介【文学フリマ広島6】

          【日記】いぬのこと

          犬の散歩に行っていたら、同じ黒柴を飼っている人に遭遇した。 その人とは、よく夜に会う。 いつもどおり、犬たちのほうが先にたーっと近づいていく。飼い主たちが、ひっぱられてなんとなく挨拶する。私はこんばんはー、と聞こえるようにいうけど、その人はいつもあまり私へ挨拶せずに、うちの犬の名前をよぶ。 「a(うちのいぬ)ちゃんも服着てないねえ。うちの子も着ないんだよお」 と、相手の飼い主が言った。 冬になると、服を着て歩く犬が増える。他に柴犬を飼っている人はたくさんいて、なんと

          【日記】いぬのこと