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【短編小説】絹のようなこころ


絹のように触り心地の良いこころになれたらいいのに、と、バスに揺られながら思った。

空は秋のくせに、気温だけ取り残されたみたいに暑い。

このまま自分も取り残されてしまいそうな気持ちになる。

本当はそんなことなんてなくて、ただいつも通りに、このバスから降りて職場に行けばいいだけ。

ただそれだけで、自分は社会から取り残されることなく、疎外感は消えて、歯車として生きていく。

それがこんなにも虚しい。

このまま暑さが続けば、時間も止まってくれるだろうか。

そんなありえない妄想をしながら、登校している小学生の群れを、バスの窓からゆっくり眺めた。


おわり

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