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子どもが大人を好きになるということ 4


人づてに聞いた知らせ。
三年も経ってから。

心が、死んでしまった。
あのひとの手の温かさを
のせられた手の重さを
ずっと大事に抱え込んでいた心が。

私だけだった。
私だけが恋をしていた。
私だけが、あの瞬間を大事に覚えていた。

心のなかでそっと転がし
あたため
感触をたしかめ
いつまでもいつまでも
ずっとずっと
あの瞬間の心の動きを、大事にしていた。

私だけが、そうだった。

死んだ心を抱えたまま
時間だけが流れてゆく
体だけが大人になってゆく。

焼いて弔ってあげることもできない
埋めて弔ってあげることもできない
何もできない。
ただ、それは死んで、そして、私の中にまだあった。
手でふれて撫でてあげることもできない、目にもみえない痛み。

痛みをどこかに移せたらいいのに。
心ではないどこかに。



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