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うつ病でFtXの私が妊娠・出産した話

 こんにちは、そろです。2023年6月に息子を出産しました。
 
 うつ病なのに?性自認がFtXなのに?と疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、私が何を考えて出産に至ったのかを綴ります。
 
 FtXとは何かと思われた方は自己紹介記事をご覧ください。



特に子供が欲しくなかった

 子供が欲しくないといっても、子供が嫌いなわけではないのです。生活のなかで出会う赤ちゃんや幼児のことは微笑ましく思います。ただ、Xジェンダーの自分が妊婦となることには違和感と嫌悪感がありました。また、親との愛着形成がうまくいかなかった私にとって夫はかけがえのない存在で、子供ができれば、安全基地である夫が取られてしまうと思っていました。(私はおそらく、愛着障害の「不安型愛着スタイルASDタイプ」です。)それだけではなく、自分が過干渉やネグレクトの虐待をしてしまうのではないかという漠然とした恐怖心がありました。さらに、生きにくいこの世に子供を産んでもいいのか?苦しめることにならないかという葛藤もありました。

夫の気持ち

 夫と結婚をしたのは2017年。結婚する前に、夫にはFtXであるということと、特に子供は欲しくないことを伝えていました。FtXであることをカミングアウトしたためか、結婚をしてからは一度も性交渉は無く、それでも夫とは仲良く暮らしていました。ただ、夫はそのうち私の考えが変わるだろうと思っていたそうです。
 2020年、私がうつ病になってから夫がはっきりと「子供が欲しい」と言うようになりました。なぜこのタイミングで言うのか?子供を産んだら私は必要が無いのか?悩みました。ただ、夫は「子供がいないと自分の人生が空虚になる気がする」と言ったのです。「そろがうつ病になって、子供が望めない可能性が出てきて強く子供が欲しいと思うようになった」と。私は、このままでは夫の方がうつ病になってしまうのではないかととても心配になりました。
 夫に「産んだ後に私が何もできなくて床に臥せっていても育てられるのか?」と聞くと「できる」と答えます。「男性不妊もあるかもしれない」と伝えると「検査してきた。大丈夫だった」と答えます。「私に似てしまって、メンタルの弱い子になるかもしれない」と言えば「そうならない可能性もある」と答えます。「こんな世に生まれてしまったら可哀想」と言えば「子供はそろとは別の人間なんだから、そうとは感じないかもしれない」と答えます。「障害を持って生まれてくるかもしれない」と不安を口にすれば「その時はその時。なんとかする」と答えます。ああ、本気なんだなと思いました。「あなたのクローンなら産んでもいいのに」と言うと「俺はそろとの子が欲しい」と言われました。ここまで言ってくれるのなら、夫のために子供を産んでもいいかな。そう思いました。

母親の強烈な孫願望

 母は過干渉な人です。新婚生活を始めたときも部屋の間取りを細かく聞いてきて、夫と寝床が別であることを伝えたところ、勝手に性生活を心配して口出しをしてくる有様でした。田舎に暮らし、同級生や後輩が出産をすれば必ず連絡してくるような母です。それで、あなた達はいつ頃子供をつくるの?と子供を作ることがさも自然であり、当たり前のように言われました。FtXであることを伝えたこともありましたが、受け入れてはもらえず、「気の迷いだ」「勘違いじゃないか」「父や祖父母には絶対に言うな」「女性らしい格好をしていたこともあったじゃないか」というかけてはいけない言葉のオンパレードを貰ったので、理解してもらうことはそこで諦めました。
 そんな母親が、よほど孫が欲しいのだと悟ったのはうつ病になったあとでした。2020年、うつ病の診断が下ったあとで、『うつ妊!~私、妊娠しちゃダメですか?~』という本をわざわざ送ってきたのです。こちらの書籍は、タイトル通り、うつ病であり子供を望んでいる方向けに書かれた本です。たとえ心が健康ではなくても子供を産んで欲しいという母親からの強烈なメッセージでした。(なお、こちらの書籍のおかげで「うつ病は気の持ちよう」と思っていた母が「うつ病は脳の病気」と認識を改めてくれたため、書籍の存在自体にはとても感謝しています。)
 そんなにも孫を産んで欲しいのだと絶望の中で感じた私は、夫の希望のことも考え、子供を産むことを決意しました。ただ、認知の歪みから「私は産む装置であって、そのためにしか必要のない存在なんだ」「産むところまではやってやるからあとは勝手に育てて欲しい」「産んで義理を果たしたら死のう」と考えていました。

産むのであれば自分で納得して決断したい

 うつ病急性期に子供を産むという方針を定めた私は、それから1~2年かけてゆっくりと回復していきました。医師にも子供を産みたいということを伝え、少しずつ減薬もしました。同時に、心配なことを少しずつ調べました。

うつ病の疾病関連遺伝子は「ヒトの遺伝子の中では」見つかっていない

 精神疾患が遺伝してしまうかどうか、それはうつ病を抱えるひとであれば誰しも気になることではないでしょうか?幸いなことに、うつ病の疾病関連遺伝子はヒトの遺伝子の中では未だに見つかっていないのです。
 
ここで一つ書籍を紹介します。
 
『うつ病の原因はウイルスだった!』著者 近藤一博 / 2021年9月10日 初版第1刷発行
 
こちらの書籍のp62~p97を要約すると、次のようになります。
 
✓ 2003年に完了した「ヒトゲノム計画」では、うつ病の疾病関連遺伝子(その病気へのかかりやすさに影響がある遺伝子)は、ヒトの遺伝子の中にはひとつも見つかっていない。
✓ 脳に潜状感染しているHHV-6というウイルスが、精神疾患に関連している。
✓ HHV-6中のSITH-1遺伝子が発現しSITH-1タンパク質が作られる。
✓ うつ病になる患者のうち、5人中4人がSITH-1の影響を受けている。
✓ HHV-6は最初は血液中の免疫細胞の中に住んでおり、嗅球に移るとSITH-1遺伝子を発現させ、人をうつ病にする。
✓ 宿主の身体に極度に疲労が蓄積したり、強烈なストレスを受けたりするとHHV-6が活性化し、嗅球に感染する。
✓ 嗅球のHHV-6感染量がうつ病の発症に個人差を生み出す。
 
なお、国立感染症研究所によると、HHV-6は日本ではほぼすべての人が生後半年~2歳頃までの乳幼児期に初感染するウイルスです。
 
これらのことから、うつ病は親から子へ遺伝するものでは無い、と考えられます。
 
うつ病が遺伝する訳では無いと知ると、妊娠・出産の罪悪感も減るのではないでしょうか?

妊娠後や出産後にうつ病になる確率は約10%

 公益社団法人 日本産婦人科医会によると、妊娠後・出産後にうつ病になる確率は共に約10%だそうです。
 
https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/jyosei200311/
 
 厚生労働省が2022年に発表した資料によると、2017年における精神疾患の患者数は約419.3万人、気分障害(うつ病、躁うつ病)の患者数は約124.6万人。2017年の日本の人口1.27億人なので、2017年の日本の気分障害者の割合は人口の約10.2%ということになります。
 
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000940708.pdf
 
 つまり、妊娠をしてもしなくても10人に一人は気分障害になるのです。
 
 うつ病患者であることで妊娠・出産に気後れしていましたが、妊娠後誰しもうつ病になる可能性があるのだと思うと、うつ病で妊娠・出産することを申し訳なく思う必要はないと割り切れました。

 以上のことから、うつ病であることを理由に妊娠・出産を否定的に考えることはやめました。

責任を持って生きる

 うつ病急性期に「私は産む装置であって、そのためにしか必要のない存在なんだ」「産むところまではやってやるからあとは勝手に育てて欲しい」「産んで義理を果たしたら死のう」と漠然と考えていた私ですが、愛着障害について調べて考えが変わりました。

乳幼児期の養育者との離別により愛着障害になる

 愛着障害とは、養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子供の情緒や対人関係に問題が生じる状態です。 主に虐待や養育者との離別が原因で、母親を代表とする養育者と子供との間に愛着がうまく芽生えないことによって起こります。
 私は、自分が愛着障害ではないかと疑っています。きちんとした診断は受けていませんが、愛着障害について調べていくと当てはまることが多々あるのです。うつ病の原因のひとつにも、愛着障害があるのかもしれません。

大人の愛着障害が他の疾患の発症原因になってしまうことがあります。
・うつ病
・心身症
・不安障害
・境界性パーソナリティ障害 など

引用「マドレクリニック」http://www.madreclinic.jp/pm-top/

  子供を産んだらどこかのタイミングで死のうと思っていましたが、それはとても無責任で、愛着障害により第二の自分を作ってしまうことになるのではないかと恐れるようになりました。
 ありがたいことに、夫に出会ってから生き直しをさせてもらって、私はもう十分に「子供」を堪能しました。愛情も貰いました。親ではなく、夫という新たな安全基地が得られたいまなら、親となって子供を産んでも大丈夫だと思えました。
 また「私は産む装置であって、そのためにしか必要のない存在なんだ」という考えは認知の歪みから発生していて、少なくとも夫は私を必要としているということが分かりました。

 知識を得たこと、夫に愛されたことで、時間はかかりましたが子供のためにも責任を持って生きようと思えるようになりました。

最後に

ここまで読んでくださってありがとうございます。
 
以上のことから、私はうつ病でFtXではありますが、子供を産み、生きてきちんと育てようと自分で決めました。
 
今後、母親であることを求められて違和感を感じることもあるかもしれません。困難にもぶつかるでしょう。
 
最後にもう一度
 
産まれた息子を何が何でも幸せにできるよう、生きて最大限努力します。


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