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スポーツと武道・武術

似て非なるもの

基本的にスポーツは欧米のものです。武術や武道は日本のものです。ルールは違えど「体を使って何かで勝負する」という点では同じものです。でも似て非なるものですね。

色々なスポーツに武道の動き(古武術、合気道)を取り入れようとする方は少なくありません。体を使うということでは同じですし、武術の方が日本生まれなので日本人の体に合っているのではないか?と考える方もいると思います。

その中でも野球は大分前から武術や武道、合気道等を取り入れてきました。
実際、野球の王貞治さんを指導した荒川博さんは合気道の植芝盛平翁、居合道の羽賀準一師範に師事していました。初代「安打製造機」と言われた榎本喜八さんも荒川博さんに習い合気道を取り入れていました。桑田真澄さんは古武術研究家の甲野善紀さんに習い古武術を取り入れて成功を収めました。

他にも合気道などを習いに道場に通った方はいるそうです。甲野善紀さんは他にもバスケット選手やサッカー選手の多くを見ています。

古武術は、江戸時代の終わりごろまで行われていた武術のことで、その古武術からヒントを得た体の動かし方をスポーツに取り入れて、好成績を収めている選手がたくさんいます。野球、サッカー、卓球、スピードスケートなど、特に種目が限定されるわけではなく、あらゆるスポーツに取り入れられています。(びわこ成蹊スポーツ大学スポーツ学部教授 高橋佳三)

https://www.kodomonokagaku.com/read/hatena/5345/からの引用

スピードスケートの小平奈緒選手はちょっと変わった一本歯下駄を履いてトレーニングをしています。

小平奈緒
https://midosin288.hatenablog.com/entry/2018/03/01/105307からの画像

前述の高橋佳三さんと繋がりがあったようでそこで色々と体の使い方のコツを習ったようです。

スポーツと古武術は「通じるところ」もありますが「通じないところ」があるのも事実だと思うんです。何者かと対峙するという意味では同じですが成り立ちや文化が違いますからね。


初動負荷しょどうふか終動負荷しゅうどうふか

「初動」と「終動」漢字が一文字しか違わないので間違わないでくださいね(笑)

例えばイチロー選手で有名になった「初動負荷トレーニング」。ざっくり書くと…動き出しの一番最初だけちょっと頑張って後は流すだけというような感じです。なので最初の動き出す力だけが必要になります。

イチロー 初動負荷
2017/04/02放送【S☆1 2夜連続特別版「未来へ遺すべき、イチローの野球」】から
初動負荷マシーンの様子。

https://www.youtube.com/watch?v=0IGMWspMSxY

川崎宗則かわさきむねのり選手の初動負荷トレーニングの様子です。

動き出しが大事で動き出しに負荷がかかるので「初動負荷」なんです。
しかし基本的に他の多くのトレーニングのようなものは「終動負荷」という形で(最初ももちろん)最後に向かっての力が大事になります。通常のジムにあるようなトレーニングマシーンは終動負荷ですね。

初動負荷と終動負荷は力のベクトルが真逆なんです。

現代人のほとんどは日常の基本的な動きが終動負荷なのです。ですから終動負荷の力の出し方に慣れている人が「初動負荷マシーン」で鍛えようとするとワケが分からず体を壊す結果になってしまいます。本人が終動負荷的な力を出したいのに機械が勝手に動いてくれるので「暖簾のれんに腕押し」の状態。だから終動負荷の筋肉に慣れている人にとっては気持ちが悪いんですね。

機械や電気もなく体を使う率が高かった昔の時代は基本的に初動負荷のような動きの人が多いんです。それは初動負荷的な動きの方が「疲れにくい」からです。どんな労働にしてもなるべく疲れたくないのは当たり前です。ジムに行って体を疲れさせる(筋繊維をわざと壊す)のとは真逆ですね。
初動負荷は「柳に風」なのです。フッと力が少し入るとスッと動く、後は風任せ。

スポーツと武術の違いもこの関係にとても似ています。

現代のスポーツの場合はどうしても「表面の筋肉でやった感じ」を求めてしまいます。武術の場合は「如何にやらないようにするか(見せるか)」という体の使い方が大事になってきます。

終動負荷のようなトレーニングに耐えれる人もいます。特に若い時は大概耐えられるし、一時的には良い緊張感も得られるんです。しかし結局は殆どの人がそれが原因で体を壊し気付かないままになって終わってしまいます。

「(一般的な)力ではどうにもならない」ということを気付けるアスリートの方もいますがそう多くはありません。筋肉の出力方法を変えることなのでかなりの努力と柔軟な思考が必要になるからです。

現代の欧米のスポーツはやった感じが大事になってきます。それでも昔の欧米の人も基本的な動きの多くは「初動負荷」的でした。





昔の日本人の歩き方

昔の日本も欧米も多くの国は「初動負荷」的な動きが主体でした。前述しましたがその方が疲れにくいのです。

例えば歩き方にしても日本も西洋も「捻じらない」人が多くいました。捻じる歩き方とは私たちが普段歩いている歩き方で大まかに言うと通常の右腕&左脚、左腕&右脚で歩く歩き方です。腕と脚が交差している動きなので腰やお腹の辺りがちょうどクロス「X」する形になります。

では昔は同側(右腕&右脚、左腕&左脚)で(いわゆる「ナンバ歩き」というようなもの)歩いていたのか?と言われると、、、えー、、、当たらずとも遠からずのようなところですね。

腕や脚と言うよりも「胴体がどうなっているのか」というところなんです。いわゆる「体幹がブレない」と言った方が近いかもしれません。

日本人の場合は和服で見ると分かりやすいのですが上記のような捻じる歩い方だと着崩れてしまうんです。

歌川広重『江戸名所 大伝馬町大丸呉服店の図』(1847~1852年頃) 山口県立萩美術館・浦上記念館 所蔵
歌川広重うたがわ ひろしげ『江戸名所 大伝馬町大丸呉服店えどめいしょおおでんまちょうだいまるごふくてんの図』(1847~1852年頃)

上記の絵では腕を大きく振って歩く人はいません。男性は大股ですが腕を振っている印象は少ないですね。女性は着物のせいもありますがそもそも大股ではないのです。

 https://www.youtube.com/watch?v=ZJw0EkKSmZo

 https://www.youtube.com/watch?v=BYOGClmmeao&t=11s

明治・大正時代の日本の映像です。もちろん昔も人も腕を振る人はいたのですが、腰は今のようにあまり捻じれていないんです。

これは着る物も大きく関係しています。和服を着て現代風の歩き方はできません。前述した通り現代風の歩き方をしたら服がはだけてしまうからです。

野口整体の体癖で捻じれ型の人はもちろん捻じって歩いています(笑)
しかし現代のような動き方の捻じり方ではなかったのではないかと推測します。


昔の西洋の歩き方

そして西洋の昔の映像です。

https://www.youtube.com/watch?v=0gAqqmgjyOw

1895年3月(世界最初の映画)の映像です。もちろん腕は降ってる人も多いのですが腰、胴体部分はあまり捻じりません。
これは実際の動きというより体の使い方の意識の話なのでちょっと分かり難いかもしれません。。。

 https://www.youtube.com/watch?v=hZ1OgQL9_Cw
1911年のニューヨークの風景です。

ガイナックスの元社長、岡田斗司夫としおさんが映画《ハウルの動く城》(2004年)でのソフィーの歩き方について以下のように語っています。(動画だと9:30~から)

宮崎さん自身も(ヨーロッパ題材の《ハウルの動く城》を)ヨーロッパでやることに迷いがあったと。
例えば一番最初にソフィーって女の子、主人公がいるんですけれど、街に行くんですね。街に行くときにどう歩かせるべきか?と。
実は当時の19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパの女の人っていうのは絶対に肩も腕も動かさない、歩く時にこうやって下半身だけ動かして歩くんですよね。でもそれをするとなんかツンと構えたような感じになっちゃうので悩んだ末やっぱりソフィーは普通に今の日本人みたいに両手を動かして歩くようにすると、やっぱりそこら辺も色々と言われることになったと、、宮崎さん悔しかったそうです

https://www.youtube.com/watch?v=o2PKTCwceoY&t=494sからの引用

 https://www.youtube.com/watch?v=o2PKTCwceoY&t=494s

アニメーターは動きをよく観察します。そうしないと良い作品は作れません。腕を振るのは現代の日本人の特徴で西洋の人はたとえ腕を振っていたとしてもその感覚がちょっと違います。


モデルのような歩き方が理想的だと思われますがその歩き方も時代によって変わってきます。

 https://www.youtube.com/watch?v=8MCjT_3Khms

1956年ですがまだあまり腰は捻じっていません。そしてその頃、技術が発達しピンヒール、スティレット・ヒールのようにかなり細くて頑丈なハイヒールが誕生しました。それと同時に当時はマリリン・モンロー(Marilyn Monroe、1926年6月1日 - 1962年8月5日)が歩き方に関してはかなり影響を与えたと思います。
有名なのがモンロー・ウォークですね。

1953年『ナイアガラ』では不倫相手と夫の殺害を計画する悪女を主演し、腰を振って歩く仕草(モンロー・ウォーク)で世の男性の注目を集める。

wikiwandからの引用

 https://www.youtube.com/watch?v=AR0IDNl4ECc

マリリン・モンローはお尻を通常よりも大きく左右に振ってセクシーに見える歩き方をすることで有名で、これを指して「モンロー・ウォーク」と呼ぶ。この独特な歩き方の秘密は、彼女が意図的に左右のヒールの長さを変えていることにあると言われている。おおよそ、左のヒールよりも右のヒールを4分の1インチ(6mm強)程度短くしているとされる。このことは、彼女の友人である女優が証言している。

https://www.jalan.net/yad348385/blog/entry0001875434.htmlからの引用

マリリン・モンローのこの体格は生まれ持った体癖にも関係がありますが、この特徴を上手く使った結果多くの人が真似をしました。

そして1984年では歩き方もが変わり捻じっている人が増えています。

 https://www.youtube.com/watch?v=SnL26apWHBQ

もちろん個人差もあります。今は極端に捻じって腰がもの凄く上下左右斜めに動いている人も多く見受けられます。

欧米人にとっては文化の延長上なのでまだ体が持つのですが…やはりバランスの取り方が違う国の人々が真似をすると体を壊す原因になってしまいます。



初動負荷的に歩く~ジダン~

結局、捻じると何が起こるのか?何がデメリットなのか?或いはメリットなのか?ということです。簡潔に言うと…

捻じると必要以上に地面を蹴るという現象が起きます。必要以上に蹴るから捻じれるとも言えますが。。もちろん蹴らずに進むことは不可能です。その割合ですね。

地面を蹴った分は反作用として自分に返ってきます。反動で体が微細にブレるのでそのブレを修正するための体力が必要になるんです。

一歩目以降は体の後ろにある脚で地面を蹴ろうとして進みますが陸上で言うと「脚が流れている状態」であり、既に体は前に進んでいるので形的には終動負荷の力の掛け方なんです。

捻じらなければ床を蹴る比率が少なくなり反発で返ってくるブレの率も少なくなります。これは「腿上ももあげ」とも捉えられなくはないですが…脚を引き上げる力と書くのが一番近いと思います。

昔、日清カップヌードルのCMで元サッカー選手のジダン選手が起用されていました。2001年のCMで「ジダンが地団駄じだんだを踏む」という内容です。

ジダン 地団駄 gif

同側で動いています、いわゆる「ナンバ」かもしれません。蹴るわけでもないし、かと言って腿を上げているわけでもありません。この形のトレーニング(動き)ですが海外では普通にやられている動きだそうです。

日常的にこれで動くというワケではなく腰や腹で捻じらないのが大事なんです。

肩甲骨とナンバのトレーニング

上記のジダンの動き。
脚の話はしましたが実はもっと大事なのが「肩甲骨けんこうこつ」なんです。ジダンが地団駄を踏んでいる時に肩も胸あたりも一緒に緩やかに動いています。

まるで「竹馬」に乗っているかのようですね。或いは「缶ぽっくり」に乗っているかのようです。

https://blog.goo.ne.jp/maruko614/e/f60dbb4ec6324a6a183aeabdee895a67からの画像

ミスタージャイアンツこと長嶋茂雄さんは竹馬が以上に早かったそうです(笑)

竹馬も缶ぽっくりも乗る機会がめっきり減りました…。
もしできるなら乗ってみてください。もし乗る機会がないのであればジダンのように肩甲骨と脚を連動して動かしてみてください。

へその向き

簡単な見極め方としてはお臍の向きが遊ばないことですね。お臍の向きが進行方向に向いているか?というのはとても大事です。

真っすぐ進むべき道なのにお臍が右斜めを向いていたりするので、その時点で体の中では色々と修正しないといけないんです。そうするととても疲れます。進む事ではなく体を修正するのにかなりのエネルギーを使ってしまうんです。

まずはお臍に正しい進行方向に向いてもらう事です。そして歩いたり走ったりしている最中にその向きがあばれないことが大事でこれでやっと体のブレが少なくなるんです。

へそ歩きトレーニング

とても簡単な体幹のトレーニングがお臍歩きになります。
別にお臍で歩くワケではなく(笑) お臍の向きに気を付けて歩きます。

  1. お臍に手を当ててください。

  2. お臍が行きたい方向に常に向いていてブレないで歩きます。

方法としてはとても簡単なのですが意外と臍が進行方向に対して暴れている事が分かると思います。これが疲れる原因、そして体を壊す原因になるわけです。

どんなに腹筋運動をしてお腹がシックスパックに割れても意識が通わないと体を壊しやすくなります。というか寧ろ腹筋運動をやることで体が壊れていきます。
お腹は大事な部分です。何がどう大事かと言うと「立つ」ために大事な場所です。お腹はバランスの中心となります、もちろんその後ろの腰も大事です。



アウターマッスルとインナーマッスル

そして多くの人が理想の体型を求めたり、体力を付けるためにジムに行きます。
そもそもの「体力とは何なのか?」ということです。小中学生の頃にやる体力測定の能力を上げることでしょうか…?違いますよね。。。長時間の労働にも拘らずの肉体の疲労が少ないことを体力と言うと思うのです。

日本語には「コツをつかむ」という言葉があります。どの物事でもコツをつかんだ場合、効率が上がり動きは速くなり疲れにくくなります。

コツとは「骨」、ホネのことです。この体の中の芯である骨を上手く使うことができるとパフォーマンスが上がるということです。実はこれがインナーマッスル(深層筋)の正しい機能の仕方です。アウターマッスル(表層筋)は飽くまでインナーマッスルの補助であり主役には向いていません。
もちろんアウターマッスルがいらないなんて思ってはいません。しかしアウターマッスル肥大化するとがインナーマッスル邪魔をする場合があるんです。これがパフォーマンスの低下の原因であり怪我の原因でもあります。

なのでインナーマッスルを鍛えた結果、アウターマッスルに筋肉が付くのは良いのですが、、、アウターマッスルを肥大化させるのが目的だとインナーマッスルが育たなくなるんです。

今は「マッチョ」が流行りです。しかしマッチョは外見の筋肉が肥大化するので実際の動きとリンクしません。強くなった「気がする」ということです。特に日本人は欧米への憧れ、コンプレックスが強いですからそうなりがちです…

本当に「アウターマッスル=パフォーマンス向上」なのであればボディビルダーがスポーツ業界を席巻せっけんしていないとおかしいわけです。

現役時代に愛知県のあるスポーツ関係の研究施設に行って最新の機器で筋力を測定してもらったことがあるんですが、そこで「オリンピックの選手以上にパワーがある」って評価されたんです。でも、その頃の私は、ずっとケガに泣かされていて、思うようなパフォーマンスがまったくできていなかった。「それだけのパワーを持った自分がなぜケガばかりするんですか?」と聞いても、測定してくれた専門家は不機嫌な顔をするだけで何も答えられない。(中略)
しかも後日聞いた話なんですが、当時、アジア最速のランナーとして活躍されていた伊藤浩司さんは、同じ検査で「女子選手並み」の数値しか出てこなかったそうなんです。

『「筋肉」よりも「骨」を使え! 』甲野善紀、松村卓(ディスカヴァー携書)からの引用

アウターマッスル的な筋肉ももちろん必要ですが…結局はこつがつかめないとパフォーマンスは上がりません。
初動負荷とはその骨をつかむためのヒントを貰えるトレーニングでもあります。疲れにくくハイパフォーマンスな体がを作るには骨をつかむのが近道です。

筋肉が付くのはいいが付けるのは違うんです。体は部分で動くワケではなく全体で動いているからです。


減息トレーニング
レッスン(マンツーマン[約45分])
初回 15,000円(税込)
2回目~ 12,000円(税込)

レッスンチケット3回分
35,000円(税込)

レッスンチケット5回分
​55,000円(税込)

西武池袋線「大泉学園駅」より徒歩5分
出張も行っております。(別途交通費、場所代)
​オンラインでも指導可能です。


SokuRyoku lab 息力研究所
htts://instabio.cc/3110713StvjPm
お問い合わせ先:
hurahura.balance@gmail.com

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