スポーツと武道・武術
似て非なるもの
基本的にスポーツは欧米のものです。武術や武道は日本のものです。ルールは違えど「体を使って何かで勝負する」という点では同じものです。でも似て非なるものですね。
色々なスポーツに武道の動き(古武術、合気道)を取り入れようとする方は少なくありません。体を使うということでは同じですし、武術の方が日本生まれなので日本人の体に合っているのではないか?と考える方もいると思います。
その中でも野球は大分前から武術や武道、合気道等を取り入れてきました。
実際、野球の王貞治さんを指導した荒川博さんは合気道の植芝盛平翁、居合道の羽賀準一師範に師事していました。初代「安打製造機」と言われた榎本喜八さんも荒川博さんに習い合気道を取り入れていました。桑田真澄さんは古武術研究家の甲野善紀さんに習い古武術を取り入れて成功を収めました。
他にも合気道などを習いに道場に通った方はいるそうです。甲野善紀さんは他にもバスケット選手やサッカー選手の多くを見ています。
スピードスケートの小平奈緒選手はちょっと変わった一本歯下駄を履いてトレーニングをしています。
前述の高橋佳三さんと繋がりがあったようでそこで色々と体の使い方のコツを習ったようです。
スポーツと古武術は「通じるところ」もありますが「通じないところ」があるのも事実だと思うんです。何者かと対峙するという意味では同じですが成り立ちや文化が違いますからね。
初動負荷と終動負荷
「初動」と「終動」漢字が一文字しか違わないので間違わないでくださいね(笑)
例えばイチロー選手で有名になった「初動負荷トレーニング」。ざっくり書くと…動き出しの一番最初だけちょっと頑張って後は流すだけというような感じです。なので最初の動き出す力だけが必要になります。
https://www.youtube.com/watch?v=0IGMWspMSxY
川崎宗則選手の初動負荷トレーニングの様子です。
動き出しが大事で動き出しに負荷がかかるので「初動負荷」なんです。
しかし基本的に他の多くのトレーニングのようなものは「終動負荷」という形で(最初ももちろん)最後に向かっての力が大事になります。通常のジムにあるようなトレーニングマシーンは終動負荷ですね。
初動負荷と終動負荷は力のベクトルが真逆なんです。
現代人のほとんどは日常の基本的な動きが終動負荷なのです。ですから終動負荷の力の出し方に慣れている人が「初動負荷マシーン」で鍛えようとするとワケが分からず体を壊す結果になってしまいます。本人が終動負荷的な力を出したいのに機械が勝手に動いてくれるので「暖簾に腕押し」の状態。だから終動負荷の筋肉に慣れている人にとっては気持ちが悪いんですね。
機械や電気もなく体を使う率が高かった昔の時代は基本的に初動負荷のような動きの人が多いんです。それは初動負荷的な動きの方が「疲れにくい」からです。どんな労働にしてもなるべく疲れたくないのは当たり前です。ジムに行って体を疲れさせる(筋繊維をわざと壊す)のとは真逆ですね。
初動負荷は「柳に風」なのです。フッと力が少し入るとスッと動く、後は風任せ。
スポーツと武術の違いもこの関係にとても似ています。
現代のスポーツの場合はどうしても「表面の筋肉でやった感じ」を求めてしまいます。武術の場合は「如何にやらないようにするか(見せるか)」という体の使い方が大事になってきます。
終動負荷のようなトレーニングに耐えれる人もいます。特に若い時は大概耐えられるし、一時的には良い緊張感も得られるんです。しかし結局は殆どの人がそれが原因で体を壊し気付かないままになって終わってしまいます。
「(一般的な)力ではどうにもならない」ということを気付けるアスリートの方もいますがそう多くはありません。筋肉の出力方法を変えることなのでかなりの努力と柔軟な思考が必要になるからです。
現代の欧米のスポーツはやった感じが大事になってきます。それでも昔の欧米の人も基本的な動きの多くは「初動負荷」的でした。
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