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越境学習って具体的にどうしたらいいの?プロセス・手法を紹介!


越境学習は普段の勤務先から離れ、環境を変化させることによって学びを深める行為です。企業側や越境者、越境先にさまざまなメリットをもたらすことは前回解説したとおりですが、今回は、越境学習のプロセスとそのプロセスごとに越境者が抱えるであろう葛藤、効果を最大限に活かすポイントや、越境学習の具体的な手法まで解説していきます。

越境学習のプロセスと越境者の葛藤

越境学習はEラーニングと比較すると、一人当たりの費用が高く、会社にとって安定的な成果が約束されていないため、学習期間中にはその費用だけが浮かび上がることがあります。しかしながら、企業側や越境者、越境先にもこの対価に見合うだけの利益が得られます。下記では、越境学習を円滑に進め、そのプロセスと効果を最大限に活用するためのポイント、越境者が抱える葛藤について整理していきます。

越境学習のプロセス

越境学習においては、通常、無作為に越境先を選ぶのではなく、特定のテーマに基づいて訪れる先を選択します。越境先も同じテーマに基づき、相手を歓迎する準備を行っています。

ただし、越境先に到着しただけでは、すぐに学びを得たり何かが変わったりするわけではありません。越境先で受け入れ先の人たちと同等の成果を上げられることは稀であり、活躍するには努力が必要です。自身の独自性や、元々いた場所で得た能力を活かして成果を出すことが初期段階と言えるでしょう。

越境学習は「学習」あくまで学習であるため、受け入れ先で高い成果を出すことよりもまず、自身を規定し直すことが重要です。古い考え方や価値観とは異なる環境で活動することは、違和感を覚えることもあるかもしれませんが、その差異を受け入れられなければ活躍することは難しいでしょう。ここでは、自分のスキルやマインドと、新しい環境でのスキルやマインドの違いから生まれる自身の能力を発見し、新たな価値を創造していくプロセスです。

ここに焦点を当てずに、単に過去の経験だけに頼ると、やがては以前の環境や所属企業に戻りたくなるかもしれません。越境学習においては、新しい環境で立ち止まり、自己を振り返りながら学び続けることが第一の壁となります。

越境学習で生まれるアンラーニングと心理的抵抗

越境学習では、越境者が最初に「希少性の高いお客様」状態になることは避けられません。そこから環境に溶け込むことで、学習が始まります。学びがスタートすると持ち前のスキルや価値観、過去の成果が意味を成さなくなるでしょう。信念が揺らぎ、越境先に旧来の価値観を押し付けたくなるかもしれません。自己否定に近い心理的な抵抗と向き合う必要が生じることでしょう。
そうした中であっても越境先に対する理解を徐々に深め、焦らずに学んでいきましょう。新入社員のような姿勢を心掛ければ、取り組みやすくなるかもしれません。自身の価値観を一旦崩す経験は、「アンラーニング」と呼ばれ、近年注目されています。

文芸評論家の小林秀雄は「既存の認識解釈というのは、知っているものから、順々に知らないものに及ぶという流れしかできない。しかし知らないものを知るには、飛躍的にしかわからない。つまり、知るためには捨てよとは非常に正しい言い方である。」という旨のことを述べました。初めは苦労するかもしれませんが、知らないことは率直に質問し、従来の知識を見直しながら前進する必要があります。

越境先でのアウトプットの重要性

越境先においては、アウトプットが非常に重要です。最初は新入社員のようなポジションであるため、アウトプットに対するハードルを感じることもあるかもしれません。そもそも評価されるアウトプットの定義自体が既存の環境と異なる可能性があり、何をすべきか迷うことも考えられます。

それでも、資料作成などの小さな取り組みから始めて、未経験の業務や枠組みに挑戦していきましょう。過去のキャリアを活かせていない、一貫性が欠けていると感じることが一般的ですが、それはまだ既存の価値観から離れきれていない証拠と言えます。自社で要求されている成果に囚われず、越境先独自の評価や成果を得るために行動することが重要です。

海外駐在や地方創生に失敗したり、鳴り物入りで入社した中途採用の社員がうまく馴染めなかったりするケースでは、越境者側が既存の価値観に囚われていることに多くの要因が見られます。現行の価値観を完全に捨てる必要はありませんが、一旦横に置いて越境先を非難するのではなく、それをよく知り、理解することが先決です。
この段階を超えると、既存地でも越境地でも活かせるスキルや考え方が身につきます。場合によっては、自身のライフワークにもつながるかもしれません。既存地と越境地の環境を融合させることで、独自性のあるスキルや考え方を得ることが可能となるでしょう。

軽々と越境する越境者になるには?

転々と越境し、さまざまな環境で学習を行うことで越境学習の効果を深めることができます。理想的な動き回る「越境者」なるためには、どのような心構えが必要なのでしょうか。

企業はデメリットよりもメリットのほうが多い

越境学習は学びにおける属人性が高いため、コストがかかります。企業はこの点に悩まされるとともに、転職と類似している行為であることから離職のきっかけになりかねないのも企業にとってはデメリットとなるでしょう。

しかしながら、越境学習を経て戻ってくると社員は独自の能力や専門性を従来よりも発揮し、企業に貢献することが期待できるでしょう。企業には一定のデメリットが存在しますが、その一方で多くのメリットがあるのが越境学習の特徴です。社内に越境者が増えると、思わぬ化学反応が対話の中で生まれる可能性も考えられます。

個人は独自性を保てる

越境することにより、従来の確信や信念が揺らぐことがあります。アンラーニングと呼ばれるこのプロセスは、心地よいものではないでしょう。しかしながら、自己の独自性を保ち、存在を確信したいのであれば、積極的に越境を続ける姿勢が重要です。目先の辛さよりも将来を見据えて進んでいくことで、道は開けていくでしょう。

小さな越境から大きな越境へ

越境学習というと、一般的には大袈裟に捉えられがちですが、実際は身近なところにも存在します。これまでの考え方や信念、スキルが通用しない状況に身を置くことで、どんな規模の変化も越境体験となります。まずは気負わずに一歩を踏み出すことが大切です。
とくにテレワークやプロボノ、兼業など既存の能力やスキルのまま取り組むことができるものは心理的な抵抗も低いでしょう。小さな越境であっても多くの気付きを得られることがあります。越境する際には、五感をフルに活用し、様々な考え方を取り入れて自己の成長につなげていきましょう。

越境学習の代表的な体験的手法

越境学習を体験したい場合、どのような選択肢があるのでしょうか。一般的な例を紹介します。

プロボノ

プロボノは、ラテン語で「公共善のために」という意味を持つ「pro bono publico」の略語で、専門スキルや知識を活かして、地域活動や社会貢献に取り組むことを指します。
一例として、地域振興のために広報の経験を活かしたり、子育て支援のウェブサイトの制作にプログラミングスキルを提供したりすることが考えられます。自身のスキルを新たな視点で活用することで、隠れたモチベーションに気付くことができるだけでなく、通常の業務に対する視点が変わる貴重な経験を得ることができるでしょう。

ワーケーション

ワーケーションは、働く(work)と休暇(vacation)を組み合わせた言葉であり、観光地やリゾート地などでリモートワークを行うことを指します。同じ仕事内容でも、環境が大きく変わることで、新たな視点を得ることができるかもしれません。さらに、その地域ならではの業務に取り組むことも可能性として考えられます。近年、リモートワークが一般的になりつつある中で、積極的にワーケーションを支援する企業が増加しています。

ビジネススクール

ビジネススクールは、社会人に向けに提供されている特定のテーマに焦点を当てた学習講座です。目標とするスキルに沿ったコースを受講することで、その分野における知識を深めることができます。通常の業務とは異なる分野の講座を受講することも有益でしょう。単なるスキルアップにとどまらず、より広い視野を身につけられるはずです。
近年は、実際に出かけなくてもオンラインで受講できるコースが増加しており、比較的手軽に越境学習を体験することができます。

副業・兼業

副業や兼業は、通常の仕事とは異なる会社で働くことや、フリーランスとして新たな仕事を引き受けることを指します。このような働き方はパラレルワークやダブルワークとしても知られており、曜日ごとに業務を切り分けるなど自身のバランスを考慮しながら働くことができます。
職種はコンピュータープログラミング、コンサルティング、ライティングなどさまざまで、既存の業務の延長でも、全く異なる業務である場合でも、新しい視点を得ることができるでしょう。

出向(海外駐在)

海外の企業に出向することで、視野を広げることができます。ただし、日本企業の仕組みを踏襲しているような会社では、その意義は薄れることがあります。したがって、海外固有の環境に飛び込むことが推奨されます。

留職・転職・出戻り

留職は、従業員が一定期間新興国に派遣され、現地の社会問題に取り組むことを指します。この派遣を通じて、グローバルな視野を広げることができます。具体的な取り組みとしては、現地のNPOでプロジェクトを実施したり、コミュニケーション支援を行ったりすることが挙げられます。

経済産業界以外の公共団体(社会)

経済活動から離れ、公共団体に所属してみることも多くの発見があるでしょう。利益を追求しない考え方をすることで、新しい視点やアプローチが見つかる可能性があります。

まとめ

越境学習を行うことは、組織において多様性を拡大させ、イノベーションを促す契機となり、従業員にとっては自己を客観的に見つめ直しキャリアを再考する機会となります。

越境先に行った後は、これまでに育んできたスキルや価値観、過去の実績が有用でなくなることがあります。信念が揺らぎ、自身を正当化するために既存の価値観を押し付けたくなるなど自己否定に似た心理的な抵抗に直面する必要が生じるかもしれません。それでも、越境先への理解を一つひとつ深め、成果を急ぎすぎずに丁寧に学んでいくことが重要です。

今回紹介した例を参考に気軽に越境学習を行い、企業と自身の価値を向上させていきましょう。

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