そうまるみ

相馬留美/文筆業/関心のある分野は成長企業、成長市場/辛い食べ物が好き/誰も気づいてい…

そうまるみ

相馬留美/文筆業/関心のある分野は成長企業、成長市場/辛い食べ物が好き/誰も気づいていない「面白い」ことを、掬い上げて言葉にしていきたいと思っています

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  • 聴神経腫瘍入院記

    聴神経腫瘍で開頭手術をしたときの経験談をまとめています。同じ病にかかった人の参考になりますように。

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「M&A」はスタートアップに必要だ 私がM&Aクラウドに入社した理由

この記事は2023年M&Aクラウドアドベントカレンダーの9日目の記事です。 「会社を売る」ってどんな気持ち?「るみたん、それで何が聞きたいの?」 彼は少しいら立っているように見えた。 数年前、少しだけ関わっていたスタートアップが、大手にM&Aされたという話を元社員から聞いた。「あの人、会社を売っていい暮らしをしているみたいよ」という、尾ひれのついたセリフを添えて。 私は長らくメディアで記者や編集者をしてきた。今ではそうした仕事柄、買収や合併、事業譲渡の記事を書くこともあ

    • 飲兵衛ワーママ目線のふるさと納税返礼品推し5選

      12月と言えば、忘れていたふるさと納税を思い出す季節である。 マネー系の記事の編集をすることが一時期多かったため、ファイナンシャルプランナー3級も勢いで取るくらいには勉強した。が、結局会社員の節税手段は限られており、こつこつ「ふるさと納税」の返礼品を楽しむのが一番だなと思っている。 ふるさと納税歴10年の私から、もし12月になってもまだふるさと納税の枠が残っているという人のために、個人的なイチオシをお伝えしたい。基本的には行ったことがある場所やなんらかゆかりがある場所に優

      • 後遺症(聴神経腫瘍開頭手術その後)

        (この話の続きです) ここからは退院から1年以上経った現在の視点で、術後の後遺症について書こうと思う。 後遺症は、すぐに出現したものもあれば、半年後に突然出てきたものもある。個人差もあるので、あくまでも私の体験談として読み進めていただきたい。 退院~3か月後ふらつき 退院後1カ月近くふらつきがあり、外出は困難だった。初めの2週間くらいのうちは近所のスーパーに行って帰るのが限界という状態で、家事はほぼ義母にお願いしてしまった。初めの1か月は本当に、病人らしい病人であった。

        • 退院(聴神経腫瘍手術から13日目)

          (この話の続きです) 結局入院は14日間になった。 前日は土曜だったのだが、横浜マリノスのイベントがあったのか、楽しげだなあと窓外を眺めていた。 退院は朝9時ごろで、自分ですべて荷物をまとめて精算手続きをした。フリーランスから会社員に戻って1年未満だったこともあり、自己負担額が大きかったのはそこそこつらかった。 タクシーで自宅に帰る。ややふらつくが、歩けないほどではなかった。リハビリの賜物だ。 会社は有給と私傷病休暇を使い、あと1か月ほど休める予定だ。退院後にそもそ

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        • 聴神経腫瘍入院記
          14本

        記事

          入院13日目(聴神経腫瘍開頭手術から12日目)

          (この話の続きです) 退院は明日に決まった。 長らくぐったりしていたのでまったく他人とコミュニケーションをとっていなかったのだが、この日になって、同室の入院患者と話す機会があった。 同室の患者は2人。一人は良性の脳腫瘍で下半身に麻痺をきたしてしまい、車椅子で過ごしている女性だった。リハビリの必要があるのだが、自宅の近くのリハビリができる病院に空きがなく、この病院に3か月ほど入院していた。コロナ禍ということもあり、面会もできないことから、相当辛かったように思う。 もう一

          入院13日目(聴神経腫瘍開頭手術から12日目)

          入院11日目(聴神経腫瘍開頭手術から10日目)

          (この話の続きです) 結果はいかにこの日は、頭部CTを撮る日だった。髄液漏などの大きな合併症もなかったので、この結果次第で退院時期が決まる。 耳は聞こえないし、顔面麻痺は出るし、まだふらふらとしか歩けないが、どうもこの病気の術後はこんなもののようで、特に医師や看護師が焦っている様子も全くなかった。たぶん、順調に回復しているほうなのだろう。 久しぶりのCT。手術後に向かったときは「ぐええ」という状態だったが、この日はむしろわくわくしていた。早く帰ってコーヒーが飲みたい。そ

          入院11日目(聴神経腫瘍開頭手術から10日目)

          入院10日目(聴神経腫瘍開頭手術・9日目)

          (この話の続きです) できること。ようやく体を起こしていてもつらくなくなってきた。入院が長いと暇だろうと思い、積読の一つだった『ペン字練習帳』を持ってきていたので、このころ初めて取り出してみた。 やってみたが、積読になっていただけあって、すぐ飽きた。 できないこと。顔の左半分は、麻痺が次第にはっきりとわかるようになってきた。入院前に読んだ論文ではたしか、術後すぐに出た麻痺は長引くが、しばらくして発言した麻痺は徐々に良くなると書かれていた。 私が持っていた「顔面麻痺」の

          入院10日目(聴神経腫瘍開頭手術・9日目)

          入院8日目(聴神経腫瘍開頭手術・7日目)

          (この話の続きです) 回復。しかし楽にはならない。月曜日。入院した曜日に戻ってきた。 先週は大荷物を一人で抱えてここに来たけれど、もうあの荷物を持って一人で帰ることができるとはとても思えなかった。しかし、夫の迎えは断ってしまったので、一人で帰ることになる。それまでにもう少しはましになっているのだろうか。 術後1週間経って、全身の倦怠感などはだいぶんましになったのだが、今度は日に日に頭痛の強さに苦しむようになった。 どうも、それまでも頭痛はずっとあったものの、他の部位の

          入院8日目(聴神経腫瘍開頭手術・7日目)

          入院7日目(聴神経腫瘍開頭手術・6日目)

          (この話の続きです) 包帯からの解放術後の経過は安定しており、看護師に付き添われながら歩行することもできるようになった。また、1日1回、言語聴覚士と作業療法士のリハビリも始まっていた。 術後6日目にようやく頭をぐるぐる巻きに覆っていた包帯をとってもらうことができ、髪を洗えることに。劇的に回復していく感。人間はすごい。 巡回の看護師さんに、「傷口を写真に撮りたい」とお願いすると、嬉々として撮ってくれた。 勝手に直線だと思っていたのだけど、コの字型だった。ここからぺろっと

          入院7日目(聴神経腫瘍開頭手術・6日目)

          入院4日目(聴神経腫瘍開頭手術から3日目)

          (この話の続きです) 久々のごはん朝から担当医の診察。術後の経過は良好、CTも問題ないそう。体は相変わらずだるくて仕方がなかったが、それでも良くなっている、らしい。 食事も出るようになった。まったく食欲はないけれど、全粥をがんばって口に入れる。味ははっきりわかる。とりあえず全部のメニューに箸をつける。フルーツはなんとなく食べる。牛乳も飲む。えらい、私。 ただ、やはり挿管時に喉までやられたようで、引っ掛かりを感じて飲み込むのは難しい。つらいので、肉や魚は少しだけにした。

          入院4日目(聴神経腫瘍開頭手術から3日目)

          入院3日目(聴神経腫瘍開頭手術・翌日)

          (この話の続きです) ICUの天使これ、は本当に、自、分の、体、なのだろ、うか。 手術後はもう自分が自分ではないような苦しみだった。とにかく頭の痛みと、首の痛み、全身のだるさで何も考えられない状況だ。ぼうっとした意識のなかに、体の奥底の悲鳴が詰め込まれ、動かそうにも動かない手足や頭を投げ出して、ただ浅い息とともにうめにていた。 こうなってしまっては、人間もただの獣に過ぎない。何も考えず体を横たえるのみだった。 夜のICUは、薄く明かりが漏れるのみで、機械音だけが小さく

          入院3日目(聴神経腫瘍開頭手術・翌日)

          入院2日目(聴神経腫瘍開頭手術・当日)

          (この話の続きです) 手術前。手術当日。 手術は午前8時30分からだ。朝は絶食なので、ただ、その時を待つ。前日に関係者各位があれだけさまざまなバリエーションでつらい手術であることは伝えてくれたが、そこまで言われる手術というのはいったいどのようなものなのだろうか? 帝王切開は二度経験した。 意識のある中、局所麻酔で腹を切るのだが、あれのつらさはメスで切られているときに自分の腹の焼ける匂いがすることだと思う。赤子が出てくるにしては傷口はそれほど大きくなく、産後の女性の驚くべ

          入院2日目(聴神経腫瘍開頭手術・当日)

          いざ入院(聴神経腫瘍開頭手術・入院1日目)

          (この話の続きです) 入院は月曜日。子どもたちを見送り、荷物を詰め込んで病院に向かう。 事前にもらった「入院のごあんない」は穴が開くほど読んだ。家電のマニュアルも隅々まで読み込むタイプである。大事なのは、スマホやパソコンが病室で使えるかどうか、くらいだったが一通り理解した。 入院は出産のとき以来だ。帝王切開だったのでお腹が切れている状態の痛みは知っているが、頭を切ったときの痛みは想像もできない。そもそもどこに痛みを感じるものなのだろうか? 10時に病院へ。「患者サポー

          いざ入院(聴神経腫瘍開頭手術・入院1日目)

          入院前のひと仕事

          (この話の続きです) 入院する日は2022年6月13日。手術日前日に入院し、翌朝から手術が始まる。当日の「万一」に備えて、さまざまな同意書や保証書、申請書を用意する。 まず心配だったのは、入院費用のことだった。私は長らくフリーランスだったので、前年の10月まで国民健康保険に入っていた。たまたま転職して会社員になり、協会けんぽに入っていたのだが、1年以下の加入期間だったため、傷病手当金の受給額が小さかった。最低限の医療保険には入っていたが、家計の大半が自分の収入から成り立っ

          入院前のひと仕事

          精密検査

          (この話の続きです) 桜の季節は過ぎていった。6月の手術に向けての準備が始まる。 ここから先の検査は、診断のためではなく、手術の際に使うための材料である。初診の翌週には造影MRI、その翌週には造影CT検査を行うことになった。 普通のMRIやCTとの違いは、造影剤という薬剤を撮影の際に注射することだ。造影剤を使用することで、よりはっきりと患部が画像に映ることになる。脳外科手術の場合は避けられない検査だ。 MRIは磁場の影響でびっくりするほど大きく不快な音(ガーガーという

          診断

          (この話の続きです) 紹介状は固かった。 クリニックで紹介された総合病院の受付で初診の登録をし、脳外科受付のある階まで上がる。受付に行くと、「脳神経外科」と「脳神経内科」に分かれていた。(“脳の病気”として想起する脳卒中やくも膜下出血は「脳神経内科」で、私が紹介されたのは「脳神経外科」である) 診療科で初めて紹介状の封が切られ、中にMRIの画像データのCD-ROMが入っていたことを知る。 受付では、「ガンマナイフを希望されていますか」と尋ねられた。 ガンマナイフとは