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入院8日目(聴神経腫瘍開頭手術・7日目)

(この話の続きです)

回復。しかし楽にはならない。

月曜日。入院した曜日に戻ってきた。

先週は大荷物を一人で抱えてここに来たけれど、もうあの荷物を持って一人で帰ることができるとはとても思えなかった。しかし、夫の迎えは断ってしまったので、一人で帰ることになる。それまでにもう少しはましになっているのだろうか。

術後1週間経って、全身の倦怠感などはだいぶんましになったのだが、今度は日に日に頭痛の強さに苦しむようになった。

どうも、それまでも頭痛はずっとあったものの、他の部位の痛みの強さで隠れてしまっていたようだ。あれほど痛かった首や足の痛みは比較的早く治まったのだが、やはりそもそも大きな傷をつけている頭の痛みはそう簡単に良くなるものでもない。起き上がるたびに頭が揺れて痛み、寝返りを打てば頭を振るので痛む。ぐわんとした痛みが、じわじわとつらい。

歩行訓練も始まっていた。歩く機能自体は何も問題ないはずなのだが、この頭痛と、揺れるようなめまいが原因で、常に千鳥脚状態だった。作業療法士に連れられて、病棟の廊下を「能かな?」と思うくらいゆっくりとゆっくりと歩くというのが、私に課せられた訓練だった。

左がおかしい

もう一つ、1週間を過ぎて気になり始めたのは、口の左半分にある違和感だった。

術後すぐから舌の左半分がぴりぴりしていたのだが、もう少し広範囲、口の周り全体でじわじわとした違和感が生じていることに気づいたのだ。挿管時の唇の怪我が原因だとばかり思っていたが、治りつつあるのに違和感は変わらないのだ。

もしかしたら、これが顔面麻痺なのだろうか。

この日は朝から主治医がベッドまでやってきた。「鼻から水が出てきていないか」と尋ねられた。聴神経腫瘍は頭蓋骨を削る手術であるため、術後に髄液が穴から漏れる「髄液漏」という合併症を引き起こす可能性がある。起きた場合、鼻水のように鼻からさらっとした透明の液が出てくるらしいのだが、これがやばい。髄液漏が起きると、同じ姿勢で1週間絶対安静だという。幸い、髄液漏の兆候はなかった。

どちらかというと、私が気になっていたのは口の状態のほうだ。話すと、「手術中に脳を触っているから、まだ揺れてるんだと思う」とのこと。
ふむ、まあ普通触られないもんな。私の脳もずいぶんびっくりしたと思うよ。また、頭痛についてはしかたないとのこと。これは時間がかかりそうだな。

こんなので社会復帰なんてできるのだろうか。術後すぐから考えたらずいぶん良くなってることを考えると、きっとできるんだろうな。

イヤホンから流れる音

肝心の、聴力の話もしておこう。

包帯を外したあとも、なんとなく手術した耳は聞こえている感じがしていた。

担当医が、「もしイヤホンを持っているなら、イヤホンをつけて聞こえるのかを確認してみてほしい」と言う。私は持っていたBluetoothのイヤホンを左耳だけにつけ、スマホの再生ボタンを押した。

驚いた。
何も聞こえなかった。

もしかしたら音量が入っていないのかと右耳にもイヤホンをつけたら、音楽が聞こえてきた。

ああ。
聞こえないんだ。
聞こえなくなっちゃった。

私「あー、全然聞こえませんね」
医師「全然?」
私「どうかな」

イヤホンを外して、耳の穴を指でごしごしとぬぐってみる。
みなさんも聞こえる耳でやってみてほしい。がさごそと非常に大きな音が聞こえるはずだ。
そのがさごそ音が、申し訳程度に聞こえた。

私「(耳の穴をぐりぐりしながら)うーっすら聞こえますね」

聴力は完全に失われたわけではなかったけれど、これからほとんど使い物にならないと理解した瞬間だった。

聴力が残っているからか、両耳でイヤホンをつけて音声を聞くと、左耳にはしばらく大音量を聞いた時のようなぐわーんとした感覚が残るようになった。Bluetoothのイヤホンは両耳をつけていないとエラー表示が出てきてイラっとするので、退院後は片耳用のイヤホンを愛用することになる。


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