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入院13日目(聴神経腫瘍開頭手術から12日目)

(この話の続きです)

退院は明日に決まった。

長らくぐったりしていたのでまったく他人とコミュニケーションをとっていなかったのだが、この日になって、同室の入院患者と話す機会があった。

同室の患者は2人。一人は良性の脳腫瘍で下半身に麻痺をきたしてしまい、車椅子で過ごしている女性だった。リハビリの必要があるのだが、自宅の近くのリハビリができる病院に空きがなく、この病院に3か月ほど入院していた。コロナ禍ということもあり、面会もできないことから、相当辛かったように思う。

もう一人の患者は私よりやや年上の女性だった。元看護師で、「この病院はご飯がまずい」と不満げだった。

病気は肺がんからの脳転移。悪性の脳腫瘍だ。散らばっている転移箇所を放射線治療するために入院しているという。

元看護師だからか、自分の病気の状況はよくわかっているように感じた。後から知ったのだが、肺がんからの脳転移の生存率は非常に低い。話したときはとても明るく振舞っていたが、そこにいた3人の中で明らかに一番重い病状だった。

耳が聞こえなくなったことをくよくよしていたが、3人の中では一番私は「軽い」患者だった。私は何と言えば良いのかわからず、ただただいたたまれない気持ちになっていた。

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