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精密検査


(この話の続きです)

桜の季節は過ぎていった。6月の手術に向けての準備が始まる。

ここから先の検査は、診断のためではなく、手術の際に使うための材料である。初診の翌週には造影MRI、その翌週には造影CT検査を行うことになった。


普通のMRIやCTとの違いは、造影剤という薬剤を撮影の際に注射することだ。造影剤を使用することで、よりはっきりと患部が画像に映ることになる。脳外科手術の場合は避けられない検査だ。

MRIは磁場の影響でびっくりするほど大きく不快な音(ガーガーという音が耳元で聞こえるように感じる)を30分ほど聞かねばならず、なおかつ狭い空間に閉じ込められるので、閉所恐怖症の自分には本当につらい。造影剤による撮影は普通の検査にプラスされるので、いつもより15分くらい長くなるのも気が滅入った。

ただ、大きな病院だけあってか、MRIの圧迫感が低いものだった。たぶん、口径がやや広いか、体が入り込む深さが浅いのではないかと思う。MRIはけっこう機器が病院によって違うので、閉所恐怖のある人は調べてから言った方がいいと思う(豆知識)。

造影剤は、MRIでは大したことはなかったが、CTの際は「うわっ」と思うほど気色の悪い大変だった。造影剤の量がかなり違うこともあるらしいが、体中に熱を帯びた液体が通り抜けるような感覚で、一瞬強烈な尿意を催すような熱さを感じるのが独特だった。

聴神経腫瘍が見つかるまでは、水仕事ですぐに爪が割れることもあり、ジェルネイルをつけていた。手術があるので取ってしまって以来、なにかあったときのために付けるのをやめてしまった。唯一のアクセサリーのようなものだったので、寂しく思ったことを覚えている。

病気のことを話した大阪の友人が、こっちまで心配して見に来てくれた。

せっかくなので、ちょうど銀座三越で開催されていた『アートアクアリウム』へ。

ふとこの歌を思い出す。

はなび花火そこに光を見る人と闇を見る人いて並びおり 俵万智


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