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20240508「あなたの本を開く」

本を閉じ
紙箱に入れて
そっと置く
しばらくすれば
もう一段高くなって
積み重なる
どれもが途中で
それでいて続いている
読んだはずの言葉は
まだ預けてあるから
もう何度か開かれるだろう
言葉の経由を綴じ込んで
塊として物質化して
わたしに溶けていく
身体の成分に付け加えたら
きっとそれは違うわたし

黒い箱に入れたはずの
どこにも見あたらないのは
透明すぎるから
既にあるが
それを見ることはできない
感じるそれをそれとは断定できないが
きっとそうなのだろうとすると
さっきあったものも
さっきはなかったものも
前からそこにあったのだと
そう気づくこともある
閉ざされた空間で
読まれない行間で
右往左往しつつ
その蓋をそっと開ける
眼差しは遠く深く

曇り空だから
もう一枚羽織って
暖かいものを飲もう
もう片方で開いておいた机の上で
文字をなぞる
でこぼこのそれらを触りながら
読めもしない言語だとしても
発語の切端を飲み込み
発動するわたしのどこか
素知らぬ場所へと
ここに居るのにと
同時に抱え
もう手放してもいる
少しひかりが増して来て
穏やかな雰囲気を擬え
もう一枚を捲る

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