20240619「球体のテンポ」

一周回って
後頭部を見られつつ
わたしを待って
同時に会う
それはさっきのこと
もう忘れたって
あなたは言う
聞こえないふりして
ここにいて
心拍を溜めて
思いを込めて
ふくらます
風船の軽さは
膨張を促し
されどまた萎んで
パンと割れることもある

突然に音がするから
ビクッとして
また振り向く
そこには誰かがいて
名前も知らない
いつかのわたし
どのわたしでもいいが
選べるとするなら
きっと今のわたし
目を閉じつつ
開くのは
あなたの声を聞きたいから
呼吸を聞いて
体内を巡り
わたしは誰かの息を吸って戻す
そして静けさを得ている

周回遅れで何度も追い越され
また手を振りながら
背中を押している
わたしは鈍いから
そんなに疲れもしないし
適度なテンポで
余所見しても大丈夫
後ろ向きで進んでもいい
違う光景を見られるのなら
どこまでも行ってみよう
手を降って合図して
小鳥が寄って来るかもしれない
誰かが落とした羽を拾い
くるくる回し
またさよなら
そしてまた誰かに出会うのだろう