作られた分断 第五部:「自主避難者は自己責任」発言から1年 賠償認める司法判断

※本記事は2018年3月16日に執筆した記事を再掲したものです。

7年前の原発事故で、放射能汚染の影響を避けるため子どもたちとともに県外へ自主避難した人の多くは大阪府など関西圏を新たな生活の拠点として選んだ。

昨年4月、当時復興大臣を務めていた今村雅弘は自主避難者を「自己責任」と切り捨て、賠償の対象にならないとの見方を示した。

エヴァンゲリオンのネクタイに注目が集まったが、「自己責任」と切り捨てられた自主避難者はそれどころではなかった。(時事通信社)

しかし、京都地裁は京都府に自主避難した人も国と東電の賠償責任の範囲内であることを認めた。

司法は「自己責任」とは判断しなかった。

政府と東電は、賠償金をできるだけ払いたくない。だからこそ、自主避難者を「自己責任」とみなすことで賠償の対象拡大を食い止めようとしたのだ。

震災時の民主党政権の対応のマズさもさることながら、第一次安倍政権時代にすでに福島第一原発のメルトダウン(炉心溶融)の可能性を国会議員から指摘されていた。
にもかかわらず、原発安全神話を信奉する安倍政権は具体的な防止策をいっさい講じなかった。

古くは佐藤栄作政権時代から、電力会社の幹部や社長が大臣クラスの大物政治家のもとを訪れ現金数百万円の賄賂を渡していた事実もこれまでに明るみになっている。

つまり、原発の安全性を賄賂を渡して政府に広報させることで利益をあげようという魂胆なのだ。

だからこそ、未曾有の大災害に際して起きる可能性のある取り返しのつかない事故について指摘されても無視してきたのだろう。

その怠慢が招いた人災であるのに、自主避難者を「自己責任」と切り捨てる一方で東京五輪の招致に際しては必死に放射能汚染の事実を隠蔽する。

ここにも、安倍政権の卑劣な一面が表れているといえるだろう。

「もう7年も経ったのにまだ争ってるのか」とうんざりする人もいるだろうが、むしろ7年も経つのにまだ賠償責任の全てを加害者側が認めていないということの方がよっぽど呆れた話だ。

福島県に住んでいた人たちにとって国が国益のため原発を稼働し続けたことによって被った損害は、お金で推し量れるものではない。
その土地を追われ、いつ戻れるかわからない不安のなかで新たな場所で生きていかざるを得ない。

放射能汚染は、数年やそこらで根絶できる代物ではない。空間線量が基準値内におさまったとしても、土壌汚染は数百年単位で残留するため農作物を作れば、基準値以上の放射性物質が検出されることは明白だし、実際にそのような数値が検出されている。

それだけ根の深い問題を残してしまったことを政府や東電は受け止め、適切に対応し続けていくしか道はない。

※本記事は2018年3月16日に執筆した記事を再掲したものです。

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