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#79『犬のかたちをしているもの』(著:高瀬隼子)を読んだ感想【読書日記】

高瀬隼子さんの『犬のかたちをしているもの』

第43回すばる文学賞受賞作です。
「ナツイチ2023」の対象文庫にも入っています。

※すばる文学賞とは、集英社が主催する純文学の公募新人文学賞


読んだきっかけ

高瀬隼子さんは気になっている作家さんの一人です。
久しぶりに純文学系の作品が読みたいと思っていたこともあり、「ナツイチ2023」の対象文庫である高瀬さんのデビュー作を読みました。

このような方にオススメの本です

  • 愛するとは何かを考えさせられる作品が読みたい

  • 世の中の「普通」に違和感がある

  • 心の状態がしんどくない、平穏だ

あらすじ

「子ども、もらってくれませんか?」彼氏の郁也に呼び出された薫は、その隣に座る見知らぬ女性からそう言われた。薫とセックスレスだった郁也は、大学時代の同級生に金を払ってセックスしていたという。唐突な提案に戸惑う薫だったが、故郷の家族を喜ばせるために子どもをもらおうかと思案して──。昔飼っていた犬を愛していたように、薫は無条件に人を愛せるのか。第43回すばる文学賞受賞作

集英社より

感想

  • 考えれば考えれるほど、逆に課題が多くなる間橋さんの様子に辛くなった

  • 分量以上に内容が濃く、突き刺さる言葉が多かった


本作で考えさせられる、愛するとは何か?
それは、対象や行為によって明確に分かれるものなのだろうか?
そうではないと本心では思っています。
でも、現実は決して優しくはありません。その1つが周囲の目。「結婚しているか」「子どもがいるか」で見られ方が変わってくる。特に地方出身の間橋さんからすると尚更だと思います。僕も地方出身なので、都会と地方の描写には共感できる部分がありました。

考えれば考えれるほど、逆に課題が多くなる間橋さんの様子に、読んでいて辛くなりました。

そして、男性の立場から読んでいると、本作の突きつける様々なことに対して完全に理解することは難しいんだなと思い、無力さを感じるほどでした。


分量以上に内容が濃く、突き刺さる言葉が多かったです。
その1つに「子どもがほしいのと、子どもがいる人生がほしいのは、同じことだって思う?」があります。
同じ意味のように見えるけど、何回も読み返すと、実は意味が全然違う。怖くなりました。
その他に、大人と子どもの違いについても印象的です。高瀬さんの表現力に震えました。

内容はかなり重めなので、心の状態がしんどくない時に読むのをおすすめします😶

印象的なフレーズ

わたしに子どもがいれば、笹本さんとずっと友だちでいられるかもしれない。郁也ともずっと一緒にいられて、地元の両親は孫ができて喜ぶ。子どもがいるだけで、世界が急にシンプルで優しいものになる。

『犬のかたちをしているもの』

「子どもがほしいのと、子どもがいる人生がほしいのは、同じことだって思う?」

『犬のかたちをしているもの』

「子どもって赤ちゃんや小学生だけじゃないんですよね。大学生だって、親にしてみたらまだまだ子どもで。
(中略)
それは、言動が幼いとか、常識を知らないってことじゃないんです。そのあたりは、社会に出る前にむしろ大学で身につけさせていくべきところだからいいんです。そうじゃなくてね、もっと根本の、その人間が大人か子どもかを決定づけている条件みたいなのが、子どもの方に寄ってるんですよね」

『犬のかたちをしているもの』

わたしのほしいものは、子どもの形をしている。けど、子どもではない。子どもじゃないのに、その子の中に全部入ってる。

『犬のかたちをしているもの』

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