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夜逃げ中の新規出店(モラトリアム期間4)

父の仕事の仲間と私一人で会うように指示を受けた場所は、某駅の駅ビルの中にあるテナントの一角。そこには父の店に置いてあった什器(商品を置く棚など)がすでに設置されていた。商品は一つもない。
眺めていると穏やかそうなオジさんに声をかけられた。私の名前を知っていたのだ。名刺を差し出された、初めて聞く会社名で代表取締役とも書いている。


続けてその社長は私に「君の名刺も作るので偽名を何にするか決めて欲しい、出来れば君の友人と同姓同名が望ましい。その名前の住民票も駅ビルへ提出するため用意してくれると尚都合が良い」「明日には父と私の商品が大量に届くので、それを陳列させてること。この店のオープンは明後日 だからよろしく頼むね」

父からは何も聞かされていない話で困惑をした。あまりにも事前の説明が足りていない。きっとこれからもこういうことが続くのだろう。こんな時は理解するよりも言われたことに何も疑問を感じずに順応するほうがきっとスピードは早いはずだ。理解などはきっと時間差で追い付いてくる。

質問をした、初めての仕事なのでレジの使い方を教えて欲しいと。新品ではなさそうな、これも父の店のものだろうか。社長も最低限の情報しか教えてくれない、什器のレイアウトや陳列は私の考えで決めていい。朝10時に店を空けて21時に閉店。
駅ビルの店長に挨拶を行い、随分と若いことを指摘された程度だが数ヶ月後には色々と確執を生むことになるとはこの時は当然知るはずもなく。。。

夜逃げ先に戻り説明不足の父を責めた、あまりにも時間がタイト過ぎる。店を回す方法の理解など早急に教えるように伝えるが、困ったら都度携帯で聞いてくれればそれでいいと一蹴される。きっと父も何から教えていいのかよく分かっていないのだろう。

ただ「拐われる心配はないと思うが尾行には細心の注意を払え」と釘を刺される。もうどうでもよかった。刺激があれば、すっかり私は黒に染まっていた。

偽名も仕方が無いので友人に電話をしてした、10人以上。理由を聞かれるたびに断れる始末だ、当然だ。あまりにも無理筋過ぎる。これ以上の恥と迷惑をかけたくはないので諦め、適当な名前を考えた、「立嶋浩二」どこかのキックボクサーの苗字をお借りした。

強く生きなければならなかったので、少しでもその名前から感じる力強さのイメージが私に良い影響を与えてくれる期待をそこに込めた。それでしかメンタル的な自衛が出来ないのだ。きっとホステスでいうところの源氏名に近いことだと思う。

他人名義で借り上げた場所で、偽物の商品を、偽名を名乗る偽者が売って行く。
今でも思う、真っ黒過ぎるスキームだ。中小零細企業や個人事業主は夜逃げのリスクも抱えながらこんなことをしているのか。商売は命がけと言うがこのようなハイリスクハイリターンでなければ割に合わないなと誤った理解が私を支配していく。

次回 無知の強さ

メンヘラで引きこもり生活困窮者です、生活保護を申請中です。ガスも止めてスポーツジムで最低限の筋トレとお風呂生活をしています。少しでも食費の足しにしたいのが本音です。生恥を重ねるようで情けないのですがお慰みを切にお願いします。