【small design】路地

日本の法律では、

建築をある敷地に建設するには4メートル幅の道路に2メートル以上接していなければならない

となっている

これは簡単に言うと幅4メートルの道路に接していないと消防車や救急車が入って来れないことが大きな理由だろう
また工事の重機や車の進入を考えても最低4メートルは必要である

しかし、実際には東京の下町や全国的にも細い路地は沢山ある
そんな路地好きな人も多いのではないだろうか

↑中野の路地

↑京都の路地

↑金沢の路地

私も路地好きのひとりである
車の入ってこれない幅の道は、子どもと歩いていても安心だ

最近は息子が雨上がりの水溜りでピチャピチャするのにハマっていて、雨上がりにはすぐに着替えてお気に入りの路地で水溜りを行ったり来たりするのだ

最近の道路は良くも悪くも(良い意味の方が強いが…)水捌けが良くてすぐに水溜りがなくなってしまうのでいつも急いで出かけるのだ

また昔は路地のアスファルトの道に白い石で落書きをしたものだ
雨が降れば消えてしまうから迷惑はかからないし、自由帳なんかより大きなスペースに長い電車を書いたり、ケンケンパの丸を書いて遊んだり路地は立派な遊び場だった

今でもごく稀に地面に落書きがあるとほのぼのした気持ちになる


私が好きでオススメの路地は東京都文京区本郷の真砂町あたりにある樋口一葉の菊坂旧居跡である
細い路地には濃密な歴史が刻み込まれている
関東大震災、東京大空襲を生き延びた古い建物が歴史の重みを蓄えながら今にも残っている

実際に通ると鳥肌が立つような空気感をいつも感じてしまう
真夏の路地は陰でひっそりとしているなかに強烈な線のような光が差し込んでくる
今でもこの路地には住人の声やテレビの音が両サイドから聞こえてくる
時には喧嘩をしている声も丸聞こえだろう
でもそんな開けっ広げの生活も下町らしくて悪くないのではと、思ってしまうのは私だけだろうか

大学時代に近くの地域図書館を建て替えるという設計課題がありよくこの辺りをうろついていた

近くには東京大学があるからか分からないが、夏目漱石や宮沢賢治、谷崎潤一郎など多くの文豪がこの地を愛したそうだ
ゆえに近くには文豪の旧居跡が点在している


井戸端会議という言葉があるが文字通り日本ではこの井戸端という路地がコミュニティの中心であった
この路地の距離感、建物の密集感が日本人にとっては心地よかった時代があるのだ

しかし、現状の法律では先に述べたように4メートルの道路に敷地が接していなければならないから、建て替えるとなると道路を広げた位置にしか建築をすることは出来ないだろう(保存地域で特別な措置があるかは不明)
少なくとも木造建築物が密集するエリアに消防車が入ってこれないのは都市計画的には問題がある


路地は好きだけど、作り直せば二度と取り戻すことはできないというジレンマが生じてしまうのだ

路地は長い間人々の憩いの場であり、あらゆる世間話を盗み聞きしてきた一番の住民である

今後これらの古い路地はどんどん見られなくなっていくだろう

現に六本木や虎ノ門などの再開発でなくなった路地はたくさんある
再開発を否定はしないが、なんとかならんかなぁと思ってしまう…

(しばらく東京に行けていないので本郷の現状は不明である。写真は数年前のものである)

新たに細い路地をもった街をつくることは出来ないとなるとひとつの建築の中に路地的な要素を持たせる方法がある

このアイデアは今まで学生の課題や建築家の建築にもしょっちゅう出てくるものであるが単に路地を真似ただけのものばかりで中々うまくいかないものだ

中には優れたものもあって路地を歩いているような建築もある
ただかなり難しいテーマなので安易に手をつけると火傷しそうな気はしている

また路地には濃密な人々の歴史があっての奥深さがあるように思う
長い歴史を作っていけるだけの余白も路地建築には求められる

いつか路地にチャレンジする機会があれば挑戦してみたい
そのときのためにも思考の準備をしておかなければ…

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