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【architecture】窓学|トンネル

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」

川端康成の『雪国』の有名な書き出しである

“トンネル”には異世界へ通じる不思議な高揚感がある
高速道路を運転していて長いトンネルを抜けると先ほどとは違った光景が広がっていた
なんていう経験をしたことはあるのではないだろうか


極論ではあるが
“トンネル”が窓だったら?
と考えてみた

何かを考えるときは極端に発想してみるくらいがちょうどいい
メンドクサイ建築家風の発想に良かったらお付き合い願いたい

トンネルには長いものもあれば短いものもある
このトンネルの『距離』を建築でいうところの『壁の厚み』だとする

仮に壁が長いトンネルのように厚いとすると遠くに光が見えるような窓になる

その厚みを徐々に薄くしていくと、望遠鏡のように一点を眺める窓になる

さらに壁を薄くしていくと風景を切り取ったような窓になる

そして壁の厚みと窓の厚みが等しくなると見慣れた窓になる

ちなみに壁の厚みを極端に薄くしていくと窓という感覚がなくなりこれはこれで不思議な感覚を覚える

この極限に薄い壁を実現したのが、世界的な建築家、妹島和世の『梅林の家』である


壁の厚みは窓から見える風景に大きく影響するのではないだろうか

イタリア、アマルフィのホテルには壁の厚い掘り込んだような窓がある

海や断崖にへばりつくような街並みが美しい
絵画のように切り取られた窓とは違い遠近法を用いたトリックアートのような奥行きある窓である

メキシコの建築家ルイス・バラガンの自邸の窓も奥行きがある

この壁の厚みが庭の景色を立体的に見せている
さらに窓右側は内側の壁が伸びているように外に続いている
それに合わせて窓の上面に合わせて軒が伸びている
逆に窓の左側の壁は伸びていない

景色が続いていくような計算し尽くされた窓設計である



レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』は一点透視図法という三次元を二次元で書いたものだ


これもまたトンネルのように見えなくもない

このように壁の厚みによって透視図的により立体的に感じられる効果が生まれるように思う


トンネルで味わう感覚を建築の窓に応用して考えてみた

窓は壁の厚みによっても違った印象を与える…
ハズである

良かったら夏休みの自由研究の題材にしてみてはどうだろうか⁉︎
段ボールで違った厚みをつくって穴を開けてみたときの見え方の違いを研究してみるなんてのは面白いかもしれない

段ボール1枚と段ボール10枚重ねたものの穴の見え方の違いは同じだろうか?


れっつちゃれんじ!

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