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物食日記

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美味しいもの、美しいものが好き。 散歩とスナップに夢中。
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2023年12月の記事一覧

電熱グローブ導入

電熱グローブ導入

まだまだ序の口だけど、バイクでの通勤者には過酷なシーズンにいよいよ突入。温暖な三浦半島ですら早朝には氷点下まで気温が下がり、時季特有の冷気と強い風に全身が晒される。昨冬も重ね着による防寒対策でなんとかやり過ごしたが一箇所だけ体温が失われ、しんどい思いを強いられた。それは指先だった。葉山から鎌倉へのわずか20数分の移動ですら米軍仕様のフリースグローブの上にOutdoor Research(OR)社の

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ずっと佳いイームズ

ずっと佳いイームズ

28年前、尊敬する編集者、岡本 仁さんによる企画、雑誌「BRUTUS」の特集『イームズ/未来の家具』(No.342 1995年5月15日発刊)に衝撃を受け初めて椅子を購入した。ロサンゼルスのオフィスにてチャールズ&レイ・イームズがデザインした1950年代製、オリジナル2種を。観たことのない独創性に魅せられたが、革新的で洗練された造形が大量生産を前提に発案された工業製品だとわかり、そのクールさぶり、

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食パン納め

食パン納め

2023年のフィナーレが迫ってきて、年始に備えるモードに突入。正月のパン難民を回避すべく、まずは年内の最終営業日が間近な近所の「ポコパン」へ。

パン好きの地域住民は同様に駆け込む人が多そう。と思いつつ開店時間を少し過ぎての到着になってしまい、ドキドキしながら扉を開けた。

この日も開店前から行列ができ、その第一陣が去ったあとではあったようだが、『トースト食パン』と『全粒粉食パン』が残っていて安堵

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冬至の「ん」

冬至の「ん」

昨日12月22日は夜の時間が最長になる冬至。生命の象徴として古来から崇められてきた太陽の力が最弱になるタイミングと捉えると、「死に最も近い日」と恐れられてきたそう。実際、早朝に家を出て三浦半島南方の職場にバイクで向かい陽が暮れるまで野外労働に勤しむ自分はこのところの、陽がなかなか昇らず、早く沈む日々を冷え込みが厳しくなってきた気候も相まって憂鬱に感じて気分も沈みがちだった。しかし、ついにその時季は

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本当は教えたいレストラン

本当は教えたいレストラン

数ヶ月に一度、東京佃島に暮らす家族と鎌倉の霊園で落ち合い墓参りをする。その流れで葉山へ移動して昼会食を楽しむのも恒例に。ここ数年は決まって木古庭(きこば)の「鳥ぎん」での焼き鳥&釜飯が定番だったけれど、人気店ゆえ開店前から並んで待つのが面倒なのと、安定した美味しさが魅力でもマンネリ化して気がして新たな食事処を開拓しようということに。

●霊園からのアクセスがスムーズ
●駐車場が広々している
●車椅

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秘密のビーチ

秘密のビーチ

何も予定がない、晴れた休日は近所のビーチに向かう。家からいちばん近いのは葉山一色海岸だけど、冬も観光客がちらほら来るから、避けるように海岸づたいにシークレットビーチまで歩いて移動するようになった。

三浦半島最古の地層「葉山層群」が荒々しく露わになった長者ヶ崎。この岬を境に葉山町と横須賀市に分かれる。ぼくが目指すのは横須賀市側(北西側)の秋谷海岸・久留和(くるわ)地区だ。昔から「大崩れ」と呼ばれる

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陽除け帽子

陽除け帽子

早朝に家を出て夕方に帰る毎日。バイクでの通勤時間はちょうど朝陽が上がり始め、夕陽が沈もうとするタイミングに重なる。

道中、眩い斜光に道端のものが照らされ赤く染まる景色はなかなかにドラマティックで眼を楽しませてくれ、活力がみなぎってくる心地になれるのだが、その陽を正面からまともに受けると眼が眩まされ走行が危うくなる。信号の色さえ判別できなくなるほどだから対策を講じた。

まずはサングラスを装着して

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三ヶ丘山の麓にて

三ヶ丘山の麓にて

住居が葉山と話すと、たいていの人は決まって佳い所に住んでますねと讃える。ぼくはすかさず、はいとても気に入っています、と臆面なく即答する。山が裏に控え、海が目前に迫り、南を向いて温暖な葉山一色ビーチサイド、通称「三ヶ丘地区」の気候風土、花鳥月に心底惚れ抜いているからだ。厳密には葉山町内でもさまざまな地域性があり、海側と山側では寒暖差が激しくまるで別の表情を見せる。ぼくがとくに惹かれた三ヶ丘山の南面一

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京橋で美しい石を聴く

京橋で美しい石を聴く

書籍の装丁家を生業とする模様石の世界的蒐集家、山田英春さんを知ったのは、雑誌BRUTUS No.963の『珍奇鉱物』特集にてだった。この号でステーショナリーブランド「ポスタルコ」のデザイナー、マイク・エーブルソンさんが編集者の導きで山田さんと引き合わされ、山田さんのコレクションを前に、互いの好きな鉱物を語り合う対談記事が差しこまれていた。

マイクさんがとりわけ惹かれたのはフィレンツェ近郊、アルノ

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美しい電動バイク

美しい電動バイク

スウェーデンの軽量電動バイク「CAKE(ケイク)」の格好良さに感嘆したのは一年くらい前からか。荷物の多い仕事で運搬車として活躍したり、荒漠なオフロードを旅したり、サファリの野生保護監視活動に用いたり。西欧やアフリカでの実用シーンを本国配信のインスタを観て羨望し、ただ指くわえていた。どうせ、電動バイク後進国の日本には導入されないだろうし、北欧ではどうしてこれほどまでに洗練されたデザインを創出できるの

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鉄磁鉱に魅せられて

鉄磁鉱に魅せられて

はじまりは、地元のアーティスト榊 仁胡さんの個展を観たことに遡る。鉱物を絵の具にして、心を無に筆を動かし、鉱物がなりたいかたちを描く水彩画。

作品展示のかたわらで会場に何気なく飾られていた地味なマットブラックな石、それが磁石がピタッとくっつく鉄磁鉱だった。最初は気にも留めなかった。しかし、たまたま特徴を説明されたのが縁なのだろう。磁気を内部に秘めるおもしろさと、そこらに転がっていそうな、ありきた

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冬のジャム

冬のジャム

毎年5月に葉山下山口「いさむファーム」の無農薬青梅で仕込む梅酒。11月末から呑み始めたら、ホワイトラムと黒糖に漬けたものがあまりにも美味しくて、あっという間に飲み干してしまった。酒を満たしていたフラスコ瓶はしわしわになった青梅だけが所在無さげに残っている。というわけで、これまた毎冬のルーティンである、その梅を用いたジャム作りにすかさず着手。

梅に黒糖がたっぷり沁みているはずだから、適当な水だけを

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朝のアイスクリーム

朝のアイスクリーム

ここ一カ月、逗子市立図書館の蔵書に魅せられてから週末ごとに通うようになった。東京で働いていた3年前までは毎日、葉山の自宅と逗子駅を行き来していたのに、横須賀市内での造園業に転じてすっかり足が遠のいてしまった。要は逗子中心部の人と車の多さが苦手で、休日は基本、静穏な葉山にこもって安息したいし、わざわざ賑やかな街で過ごすのが億劫なのだ。これは加齢特有の及び腰なのだろうか。

そんな隠居めいた生活ではい

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蓬春&五十八の数寄屋画室

蓬春&五十八の数寄屋画室

ぼくが暮らす葉山町一色には画家・山口蓬春が晩年を過ごしたアトリエ兼自邸があります。

家から歩いて数分、三ヶ丘山緑地(大峰山)のふもとに立つ、建築家・吉田五十八が画室をはじめ増改築の設計を手がけた瀟洒な数寄屋建築と植栽豊かな広い庭は、温暖で光が満ちる風光明媚な風土を象徴する空間。折しも、新旧画室のインテリアを中心に、二人の美意識の交流とモダンなセンスを観覧する企画展が始まる情報を土曜日朝のゴミ出し

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