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物食日記

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美味しいもの、美しいものが好き。 散歩とスナップに夢中。
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2022年8月の記事一覧

櫓を直す隣人

櫓を直す隣人

近所で心躍る催しがあり、嬉々として出かけたものの完全な勘違い。自分本位の勝手な思いこみ予想とは大きくかけ離れた実際で、落胆してしょんぼりとすぐ帰宅。その姿を見かねたのか、2軒隣りの住人Sさんが声を掛けてきた。

Sさんは葉山一色海岸をベースにする漁師。「ちょっと見ていきなよ」と指差した自宅脇の作業スペースには和船を漕ぐ昔ながらの櫓(ろ)が台に据えられていた。

Sさんはエンジン付き小舟で海に出るが

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サタデー・ホームシアター

サタデー・ホームシアター

休日の土曜日。壮絶な猛暑と高湿度下での植木仕事にバテ気味。祭囃子が聴こえる葉山一色界隈だけど、じっと土間で心と身体を鎮める。

『Nebula Astro』で観たのは海辺を舞台にした眩い陽光が満ちあふれる盛夏らしい2作品。MacBook Airに映し出したDVDをMini DisplayPort - HDMI 変換ケーブルでAstroにミラーリング。コネクタに繋げるだけで自動的に感知して映像を転送

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我が家の工芸

我が家の工芸

90年代、シーカヤッキングの雑誌、書籍制作に注力すべく、秋谷海岸の漁師小屋でひとり暮らしを始めたころ。ボルボのステーションワゴンで神保町のオフィスに通勤する途中、頻繁に寄るインテリアショップがあった。目黒通り沿いの古い木造商家を活用した「MEISTER」(現、恵比寿の「DWARF」)である。イームズのオリジナル家具をはじめとするミッドセンチュリーモダンの用品に眼と心が奪われつつも、高価でとても手が

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哀・玄関百合

哀・玄関百合

球根が土中に張っているのか、玄関の引き戸前で毎年梅雨あたりから茎をぐんぐん伸ばすようになった台湾原産の高砂ユリ。6月ごろ開花する沖縄原産の鉄砲ユリに酷似するが、両者は葉のかたち、開花時期の違いで区別できるはず。

今年に存在を意識し始めたのは7月19日。花の受粉に深く関わるとされる昆虫ハナムグリが雨粒をまといながら先端にしがみつく景色に魅せられたのが初端。

数日後には蕾が目立つようになり、こんど

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精霊バッタと釜飯

精霊バッタと釜飯

先祖家族が眠る鎌倉の霊園で草木を整える毎日。8月の旧盆期間はお参りの客さんに応対するスペシャルウィーク。お盆休み中、毎日休まず園内の清掃に周り、ひと息ついたところ。

旧盆あたりからそこかしこに現れるのが精霊(ショウリョウ)バッタ。出現時季に加え、精霊流しの舟に似たかたちが呼び名の由来とか。園内では参道の芝生でぴょんぴょん跳ね、芝刈り機で刈り払わないか気が気でなかった。その杞憂の体験記憶が酷暑とと

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SUN CATCHER

SUN CATCHER

20年ほど前に鎌倉二階堂のギャラリーで入手した『サンキャッチャー ・ ウォータープリズム』。当時は鎌倉にアトリエを構えていた(現在は南伊豆)rainbows worksがハンドメイドしていた。

中に水を入れると、太陽光を受けてプリズム効果で虹を放つという手工芸品。そのシンプルな多面形のかたちと創作センスに惹かれて軒先にずっと吊るしてきた。

光を受けるのは夕方の斜光が差すタイミング。玄関の引き戸

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愛しきAstroちゃん

愛しきAstroちゃん

佳いかたちにひと目惚れたアンカーの低性能モバイル・プロジェクター『Nebula Astro』中古品を落札し、我が家に迎え入れて数日経過。

Nebula Connect というリモコンアプリをインストールしたiPhone12miniで直感的に操作できる軽快さを謳歌しながら、このベーシックモデルを快適に使いこなす方法を楽しく模索中。

まずは電源。内蔵バッテリーは2.5時間ほど保つとのこと。だけど、

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はじめての映写機

はじめての映写機

10数年来の夢を叶えてしまいました。家の土間にベンチコーナーを設けたのは昼酒を呑みながら漆喰壁に映画を映写し、怠惰に鑑賞したかったのが主動機。このたびヤフオクにて1万円台で中古のモバイルプロジェクター『NEBULA ASTRO』を落札し、思い描いたゴールに到達できたのです。

映像を壁に照射する行為に初めて見惚れたのは15年ほど前。当時愛読していたインテリア雑誌のデザインに強く惹かれ、尊敬していた

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moss再び

moss再び

ふと思い立って長年、屋根裏に放置していたモスの美しいタープ『tent-wing』を引っ張り出した。

最後に広げたのは1998年に『シーカヤッカーズ・マガジン』(マリン企画)を創刊した際のロケで、下田御用邸の断崖下、海からしか上陸できないビーチにて。だから、24年ぶりの使用というご無沙汰。

ベトベトになり、凄まじい臭気を放つ生地。崇敬する古着屋さんに教えてもらったテク、『スーパーNANOX』を混

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箱買い

箱買い

横浜イーストでLEAFの定期点検を終えたあとは福浦のコストコに寄る。オリーブオイルを補充するのが主目的で余計な買い物は控えようと念じたものの、いくつかやっぱり衝動買い。

菓子コーナーの隅で埋もれるように、ひっそり佇んだいた箱。OLD EL Pasoのロゴと色使いに惹かれてつい手を伸ばす。黄色と赤色の組み合わせ、その色合いに眼が引き寄せられた。

当面、夏酒の肴はトルティーヤチップ。

我が家のコ

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横浜東ベイサイド

横浜東ベイサイド

日産の電気自動車、初代LEAFの定期点検で日産の東神奈川営業所へ持ち込む。預けて1時間半ほどで作業が終わるので、いつものごとく近くを散歩して空き時間を過ごす。最寄りの逗子にも営業所があるのだが、わざわざ横浜まで遠出するのは、ちょっとしたお出かけ気分もついでに愉しみたいという心理が行動に働きかけているのかもしれない。

昨日は横浜開港当時の面影がかすかに残存する東京湾沿いの地域を歩いて20分ほどの横

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ニューヨーク愛

ニューヨーク愛

2012年11月末、土地勘のない日本人ツーリストに役立つシティマップを制作するため、マンハッタンに10日間ほど滞在し、島の隅々まで歩きまわった。

到着した晩、街を散策し、ブロードウェイ通りにあるコーチのブティックを覗き、スウェーデンの重い中判フィルムカメラ、ハッセルブラッドなど取材道具を携行するための、タスキ掛けできるショルダーバッグを物色。クラシックなデザインの良さげなものが眼に入り、手に取っ

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棚は、生きざま

棚は、生きざま

読書用に自宅の土間に設けたベンチコーナー。
頭上の簡素な神棚をときどき見上げながら、本づくりの仕事から離れたここ2年、ずっと読めずにいた書籍を開きスムーズに文字を追う。DIYベンチや自作アトリエランプの効き目は明白で、アイデアを我ながら嬉しく思う。

ベンチには雑誌を置いて座るたびにぱらぱらめくり。触感をふくめた紙媒体の愉しみを改めて思い返し喜ぶ今夏。ここ数日、手に取っているのはBRUTUS最新号

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DRYカシワバアジサイ

DRYカシワバアジサイ

梅雨前から庭で鉢植えしていたカシワバアジサイ。

梅雨と初夏の境が曖昧だった今シーズン。たっぷりの雨水に洗われながら七月には白からライムグリーンに花色が移ろっていった。楕円形に垂れるフォルムと淡いカラーは北米東部原産という「洋」っぽさが洒落ている。

そんな魅力的な姿を毎日眺めていたら、ドライフラワーにしてずっと長く愛でていきたい気持ちが起きてきた。アジサイは花が枯れたあとも翌年の開花時までずっと

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