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moss再び

ふと思い立って長年、屋根裏に放置していたモスの美しいタープ『tent-wing』を引っ張り出した。

最後に広げたのは1998年に『シーカヤッカーズ・マガジン』(マリン企画)を創刊した際のロケで、下田御用邸の断崖下、海からしか上陸できないビーチにて。だから、24年ぶりの使用というご無沙汰。

ベトベトになり、凄まじい臭気を放つ生地。崇敬する古着屋さんに教えてもらったテク、『スーパーNANOX』を混ぜたぬるま湯にぶっ込んでジャブジャブ手洗い。しばらく浸けて陰干しのち天日干ししたら、劇的に匂いが霧散。

ついでにポールとペグの埃も祓って、家からカブで3分のビーチへ。

八月のお盆、しかも祝日。海水浴客が大挙するビーチは避けて静かな、秘密の場所で設営。

24年前、シーカヤッキングの撮影と遊びの拠点にしていた久留和海岸そば。今も変わらず盛夏でも静けさをキープしている奇跡になごむ。

どのように張るか、ビル・モスの究極美学がシンプルなタープとてユーザーの意識を求めてくる。ロープをどの方向にどれくらいの長さで留めるか、ポールはどう傾けるか、さまざまに思案し、理想のシルエットを追求していく。アート作品を創出するかのような作業。

このタープはテントに片方をかぶせて使うのが主目的だから、純正ポールは一本しか付属しない。単体で使用し、内部空間を広めにしたいときは代替えの棒をあてがう。あたりには竹が無数に打ち上がっていたので、適当に加工してタープの穴に通した。

久々だから難儀したが、かろうじて美しく影をつくれたかな。スウェーデンの『エルゴライフ・チェア』に腰掛け、アイスカフェ・オ・レを呑みながら自己満足。

モスが醸す影はじつに優美。影だけで酒を呑めちゃう。

設営法を思い出すためのビーチ訪問だったが、安穏な海水浴客が無人に近い景色に心が深く鎮まり、長居してしまった。

かつて仕事も遊びもベースとなったビーチそばで過ごし、シーカヤックで上陸していた無人島、尾が島を眺めているうちに心が固まった。

また、海を歩いてみようと。来月には必ず。準備を進めよう。

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