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第一次世界大戦の勝利には「冷凍食品」が不可欠だった?

サムネイルのバック画像はIWM(Imperial War Museum)”TRANSPORT AND SUPPLY DURING THE FIRST WORLD WAR”よりお借りしました。

今日のお昼に食べたマルハニチロの冷凍食品「石焼風ビビンバチャーハン」がめちゃくちゃうまかった(ダイレクトマーケティング)ので、今日は冷凍食品について調べてみました(なんで…?)。

(上の画像だと12個入りですが、スーパーだったらバラ売りで税抜き278円で売ってたので、そっちで買ったほうが良いかも。一袋450gなので、2回に分ければ一食約185円でかなりお得、みんな食べてくれ!

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日経新聞社がスーパーのバイヤーを対象に行った2021年の成長品目アンケートで、食品の2位に「冷凍食品」がランクインしているのを目にしました⑴。(1位は「チューハイ・カクテル」、2020年10月の酒税改正でも税率が据え置かれ、宅飲み需要が高まっているため)

コロナ感染を避けるため自宅で食事をする機会が増え、在宅勤務の合間に簡単に作れることから売り上げが拡大していると考えられます。

私たちが日常的に消費している冷凍食品ですが、その歴史は非常に古く、広い意味で捉えれば人類の歴史と同じくらいに古いと言えるものです⑵。

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なんと、中国では紀元前1000年ごろまで氷の貯蔵庫を使用していたことが確認されており、乾燥、塩漬け、燻製などと並ぶぐらいには、長い歴史を持っている方法だったみたいです⑶。

自然にできた氷などを使った食品の冷凍は、古くからエスキモーや中国の諸地域で行われていましたが、人工的に低温を作り出すことができるようになったのは16世紀になってからでした⑷。

最初の冷凍機は1834年にイギリスで開発され、フランス人のシャルル・テリエ(Charles Tellier)が牛肉や羊肉の冷凍を試み、1877年と78年にフランス―アルゼンチン間の冷凍輸送を行いました。1880年ごろにはオーストラリア・英仏間での畜肉の冷凍輸送が、魚類の冷凍については1860年代にアメリカで開発され、イギリスへ鮭の冷凍輸送を成功させたと言われています。

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Charles Tellier(1828~1913)、冷凍技術の発展に貢献したフランス人エンジニア。画像はAlchetronより借用。

こと19世紀後半に冷凍技術と冷凍輸送技術が発展を見せたのは、海外の食料品を楽しみたいと考えた市民層が、食品を消費文化の俎上にのせたからでした。産業革命以降、品質保存に特別優れた技術が必要でない衣料品や陶磁器はすぐに輸出入の対象になりましたが、食品の場合はそうもいかなかったということです。

また、第一次世界大戦では、兵站(=英語でロジスティクス、前線で戦う兵士の物資や食料の充実のため、輸送網などを発展させる機関又は学問領域)のために、冷凍食品技術が進歩を促進させたと言われています。

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第一次世界大戦時の兵站機関の様子。この時代はまだ馬が輸送手段だった国が多かった。War Blogより借用。

従来の食品保存技術では、タンパク質や資質の多い食事は、前線の兵士に送るにはどうしても酸化・腐敗などが起こってしまっていました。ですので、冷凍食品技術の研究が必要とされたわけです。

戦争に勝つための技術の一つとして冷凍保存がより研究され、一層の進歩をさせることのできた国が、戦争を有利に進められたのではないか、というちょっと面白い研究も世の中にはあったりするみたいです。

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第一次世界大戦の時に冷凍技術が発展を見せたと書きました。それまでの凍結法は「緩慢凍結法」で、第一次世界大戦後の技術は「急速凍結法」と言われているようです。

両者の最大の違いは、解答したときに出るドリップ(液汁)の量の差です。緩慢凍結法に比べて、急速凍結法ではドリップの流出が大変少なくて済むのですが、ドリップが出るというのは、凍結中に組織や細胞が破壊されてしまっていることを意味します。これはうまみの流出や歯触りの変化、カタチ崩れにつながるもので、第一次世界大戦自の冷凍技術研究では、これらの問題点の解決が目指されました。

緩慢凍結法では、食品が凍り始める温度(凍結点)から、食品の中心部まで凍結するまでの温度帯(再代氷結晶生成帯)を通過するのに時間がかかります。そのため、氷の結晶が大きく成長してしまい、細胞や組織を破壊してしまう、ということです。

一方、急速凍結法だと、氷の結晶が微細であるため、一つひとつの細胞内に氷の結晶を収めることができます。氷の結晶が微細かつ均衡がとれているため、組織の破壊が少なくて済む、というわけですね。

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急速凍結法にはいくつか種類がありますが、主なものを上げると以下になります。

コンタクト凍結法…冷たい金属板で挟む!
エアーブラスト凍結法…冷風を食品にあてる!日本では一番一般的な方法らしい。
浸漬(しんし)式凍結法…食品を冷媒に浸漬させる!鶏肉や七面鳥の冷凍でこれが使われるらしい。なんでかは知らん!
液化ガス凍結法…液化ガスが蒸発するときに得られる超低温の気化潜熱を利用して凍結!コストはかかるが、超高品質の冷凍食品がつくれるぞ!

また、近年はカタマリになっている食品の冷凍=BQF冷凍(Block Quick Freezing)とは別に、バラバラになっている固形物の状態で、おいしいまま冷凍させられるIQF冷凍(Individual Quick Frozen)という技術が発展を見せているみたいです⑸。IQF冷凍は食品を個別に凍結できるので、チャーハンなどの米飯類はこっちですね。

ただ、IQF冷凍にもデメリットはあって、その一つとして「冷凍焼け」が起こってしまうことがあげられます⑹。冷凍焼けとは、食品内の水分が抜けていくことで、油脂が参加してしまう現象のことです。

チャーハンなどの米類はバラバラの状態で冷凍するのでIQF冷凍をすると先に書きましたが、バラバラの状態であるということは、表面積がそれだけ大きく、水分が冷凍過程でどんどん抜けていってしまうということです。抜けていった水分は空気中で冷やされて霜になってしまうので、解凍時に水浸しになってしまうこともあるそう。真空包装をすれば防げるみたいですが、どうやら液化ガス凍結法と同じでコストはかさむらしい。

どんな技術も一長一短あるということですね。

さらに勉強したい人向けの参考文献


⑴日経MJ(流通新聞)「スーパー今年の成長品目、バイヤー調査―「家飲み」「内食」に期待、食品、「チューハイ・カクテル」1位。」2021年1月11日,2面.
⑵"Frozen Foods." In Encyclopedia of Products & Industries - Manufacturing, edited by Patricia J. Bungert and Arsen J. Darnay, 437-443. Vol. 1. Detroit, MI: Gale, 2008. Gale eBooks (accessed January 19, 2021). 
⑶"History of Frozen Food." American Frozen Food Institute. Available from 〈http://www.affi.com/factstat-history.asp〉 . "History of Frozen Foods: Long and Varied." National Frozen & Refrigerated Food Association. Available from 〈http://www.nfraweb.org/media/edit1.html〉 .
⑷"冷凍食品", 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-01-19)
⑸"冷凍食品[食生活]", 情報・知識 imidas 2018, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-01-19)
⑹急速冷凍機ナビ「IQF凍結の意味とBQF凍結との違いについて」
https://flash-freeze.net/ja/freeze-technology/iqf-bqf.html

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