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我が子の入学式・卒業式には行けなくても「〇〇会」は皆勤賞。

「自分の子供の入学式や卒業式は行けない事も多かったんですよ。大体日程が重なるんで。だけど、懇談会だけは1回も休んだことがないです。これが私の自慢です」

先日、既に定年を迎えた「元中学校教師」のエリ先生(仮名)とお話をする機会があった。

私はエリ先生さんとお話をする中で、自分が懇談会に何を求めているのか?が少しわかった様な気がした。


距離が近かった時代


エリ先生は、60代後半。

2人の子育てと中学校教師という仕事を両立して定年まで完走し引退後も様々な学校で部活指導を行っている。

今も週1~2日しか休みもなく、ほぼ毎日複数ヵ所の学校で指導。
そして、仕事の合間や夜には「元教え子」との交流がとても盛んだ。

20代~40代位までの幅広い「元教え子」達が頻繁に「会いたい」「話を聞いて欲しい」「相談に乗ってほしい」と連絡してくるそうで、食事に行ったり、自宅で飲み会をしたり、交流がとても活発。


以前、別の先生とお話した時も

「土日に一緒にキャンプに行ったり、ボランティアに参加してる」と仰っていた先生がいた。

私はそういう経験はないが、確かに幼稚園~小学校位までの担任の先生とは年賀状のやりとりをしたり、今よりも「個人的なつながり」が多かったかもしれない。

それにしても、エリ先生が余りにも忙しそうなので
「何故そんなに頑張れるんですか?」と聞いてみたら

「子育てをしていた頃、周りの方に本当に沢山助けてもらったからお返しがしたい。今の先生達はとても大変だから私がお役に立てるなら…と思って声がかかると大体引き受けてしまうんです」と笑っていた。

周りの人に助けてもらう。


エリ先生は体育教師で、ずっと運動部の顧問を担当されていた。
今問題視されている「部活指導の時間外労働」「部活指導の為の土日出勤」なんて当たり前の時代を過ごしてきた。

でもエリ先生は、その事を「大変だ」と感じた事はなかったと言う。

子供が小さい頃は、土日の部活指導は子供を連れて行っていた。
生徒も先生も「人が沢山いる」ので、子供を構ってくれるし、子供も楽しんでいたと言う。

大分前に、今ご存命なら90歳を軽く超える「元先生」とお話した時も
「子供をおんぶしてテニス部の指導をしてた」と仰っていた。

もし今、土日に働くとしたら
土曜日→保育園
日曜日→ベビーシッター
という感じだろうか?

今は保育園も夜遅くまで開園しているし、外注先が沢山ある。
だから「子連れで仕事をする」という人は少数派だろう。

でも「お金で解決する」のではなく「周りの人に助けてもらう」という子育てをしたからこそ周りとの繋がりが強固になったり、子供の社会性が育つのかもしれない。

何よりも「周りへの感謝」と「私も恩返しをしたい」という気持ちはその経験があったからこそだと思う。


因みに、以前ご紹介した若田光一さんのお母さんが書かれた著書の中にも「若田さんを出産した直後に数カ月近所の人へ子供を預けて働いていた。
退職後は、別のご近所さんの子供を仕事中に家で預かっていた」という様な事が書かれていた。

今では中々ありそうもない話だけど、そんな風に「濃い繋がり」が当たり前の時代は確かにあったのだ。

まさにこういう時代。


働き方改革とは


エリ先生にとって子育て中に唯一大変だったのは「夜の家庭訪問」だと言う。

これも今では考えられないけれど、不登校や問題行動がある生徒の保護者とお話したい時、相手が「夜しか時間がない」と言えば、退勤後に生徒の家を訪問して保護者とお話する…という事が頻繁にあったらしい。

私は泡を吹きそうな位びっくりした。

今は「昼の家庭訪問」もない。
だって先生も大変だし、日程調整難航しそうだ💦

でもエリ先生からすれば
「今は学校が時間外の電話すら受け付けないけれど、それじゃぁ夜しか話せない保護者とは永遠にお話ができない。保護者と話せないまま問題が放置されるよりも、1回訪問して解決できるなら早く解決した方が先生もラクだと思う。今の先生は逆にやり辛いと感じている人もいるんじゃないかな?」との事だった。


私はエリ先生とお話をしていると

・社会人として(もし先生だったら)
・働く親として(子育てと仕事の両立)
・保護者として

と色々な立場で考えて、物凄いカロリーを消費する(笑)

きっと「一律のルール」を決めたら成立しない問題なんだろう。

懇談会の在り方


そんな大忙しだったエリ先生は、お子さんの懇談会だけは1回も欠席せず皆勤賞だったそうだ。

エリ先生が「先生として」懇談会に臨む時、物凄い張り切って準備をするし、参加してくれた保護者の方1人1人にお子さんのエピソードを必ず話していたらしい。

「時間は長くなるけど、せっかく来てくれたんだから保護者の方が知らない学校での様子を色々お伝えしたい」と楽しそうだった。

逆に保護者として参加する時も、自分の子を見守ってくれる先生とお話する事がとても楽しみで、どんなに仕事があっても中抜けして参加していたとの事。

私が懇談会に参加した時、参加する保護者の数が物凄く少なかったという話をするととても驚いてショックを受けた様子だった。


懇談会に限らず、エリ先生は3日に1度のペースで手書きの「学級通信」も発行していたそうだ。
学級通信の最後には「独り言」として先生の日記の様な呟きを必ず載せていて、それが保護者から好評だったと言う。

そこでまた私は「距離感」の事を思った。

大好きな長男の担任の先生が、結婚されているのか?お子さんはいるのか?という事すら私は知らない。

年度初めの学年だよりで「子供が楽しく学べるように頑張ります!1年間宜しくお願いします」という様な、ほぼ全クラスの先生が同じようなコメントを書かれていた様に、「まるでテンプレート」なのだ。


「3日1回の学級通信」は流石にお互い大変そうだけど。
「先生の人となり」が今は見えにくい気がする。

きっとエリ先生の懇談会に出席していた保護者さん達は、学級通信等を通して「エリ先生のファン」と化していて、「エリ先生に会いたい!」という気持ちで来ていたんじゃないだろうか?

その証拠に、エリ先生の退任式では卒業生や保護者が沢山駆けつけてくれたそうだ。家中が花だらけになるほど沢山のお祝いも貰ったと話していた。


プライベートの話は確かに難しい。
既婚者だった先生が、離婚をすることもあるかもしれない。
「妊娠しました」という報告が、不妊に苦しむ保護者を追い詰めるかもしれない。

だけど、「人それぞれ」と受け入れるしかない。

エリ先生が懇談会の思い出話をあまりにも楽しそうにお話していたので、私は「懇談会は、好きな人だけが来る場所」として、もっと振り切って良い気がしてきた。

「先生とお話したい!」「保護者とお話したい!」って、お互い熱量高めで話せば良いんじゃないか?と。

この先、どういう先生が担任になるか分からない。
だけど私は自分の子供が1日の大半を過ごす学校での様子を少しでも多く知る為に、懇談会皆勤賞を目指してみようかと思った。
(断言はできない(笑))

〈あとがき〉
ひと昔前「24時間働けますか?ビジネスマーン」ってCMがあったように、そもそも社会全体が仕事に物凄くコミットしていたからかもしれません。
でもその時代は、多くの家庭に「専業主婦」という存在がいたからこそ成り立っていた。
女性の労働参画を促した最大の理由は、「労働者不足の補填」「社会保険料の負担者増加」等と言われていますが、結局「家庭」「子供」は「お金を払って解決」するしか手段がなくなり、「そのサービスを提供する為の労働者」が必要で…って、アレ?(笑)

今日も有難うございました。




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