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日々雑感

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#罪と罰

奇妙な話

奇妙な話

いわれのない悪意や敵意に出会うこと、そんな経験は誰にでもあることなのかもしれないが、時としてなんともやりきれない、いやな気持ちになるものだ。



『罪と罰』という世界文学史上で十本の指に入るような作品を、過去にもう何度も読んでいるのだが、数日前からまた読み始めている。
この作品については、以前この場を借りて個人的な評論めいたものを計11回にわたり発表した。それは、この作品の意味について自分なり

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ひとりで生きるということ

ひとりで生きるということ

10月下旬の平日、思い立って、ひとりでささやかな旅行にでかけた。

行き先はどこでもよかったのだが、さほど遠くない、手近な「渓谷」あるいは「渓流」を歩いてみたいと思った。

水がある風景が好きだ。
そのことを、初夏に家族旅行で奥入瀬渓流を歩いたときにあらためて気づいた。
とりわけ清流の響きを身近に感じ、水の流れと樹々が茂る山々と空とが同時に視界に広がるような、そんな場所に強く惹かれるのだ。

初日

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「人はどのようにして他者とつながることができるのか」についての断章

「人はどのようにして他者とつながることができるのか」についての断章

「ラスコーリニコフの孤独」(全11回)では、ひとつの仮説を『罪と罰』の世界観として提示した。

その仮説とは、「人と人との絆は、水平的な横のつながりではなく、天上の神を仲立ちとした、垂直的な縦のつながりである」というものだった。

ラスコーリニコフは、殺人を犯すことで、神との絆を自ら断ち切ったのであり、その結果として、この世界のあらゆる人間から切り離されてしまった。それが彼にとっての「罰」であった

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