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【蒸留日記vol.34-1】北海道の神秘、青いオイルを採ってみる!

ついに夏が来た!!!青い空!!青いビーチ!!

とはならないのがここ北海道。。。
夜の気温は6月中旬にさしかかろうという時期なのに、未だ10℃以下の日々が続いていて昼夜の寒暖差が激しい毎日を過ごしています(笑)

さて、時はさかのぼること去年12月のお話!!

どうやら北海道では、”とある雑草”から青いオイル/精油を採ることができるとかできないとか。。。

青い精油。。。Blue Oil

しかも運がいいことに、北海道ではその雑草が増えに増えまくっててブルーリスト入りされてるくらい増えに増えまくっているそうなんです。

※ブルーリスト〜絶滅危惧種レッドリストの逆、増えすぎ問題をまとめる

でもおいら氏25年間生きてて道端でそんな草見かけたことないしなぁ〜と半信半疑。

どれぐらい青いんだろうか、青い精油。。。

とはいうものの、冬の間は当然のことながら雪の真下となる草本植物には全くの手出しができないので、かれこれ草木が芽吹き出す5月までの一旦お預けとなりました。

(スマホのカレンダーアプリに通知登録しておいた)



■Achillea millefoliumのサクッとしたプロフィール!

実物

葉っぱを見ての通り、和名はセイヨウノコギリソウといいます。

しっかり外来種なので、名前のかしらに"セイヨウ"がつきます。
"セイヨウタンポポ"みたいだね。
学名はAchillea millefolium L.だそうです。
著名な中世の植物学者カール・フォン・リンネさんが分類したのでケッツにLinnの略記L.が付きます。

日本もとい北海道へやってきたのは、やはり鎖国が終わって貿易が盛んになる明治期に牧草に紛れてヨーロッパよりやってきたといろんな資料で見られます。
クローバーことシロツメクサとかセイタカアワダチソウと同じような侵入経路ですね。

▶︎ヨーロッパでは薬草として重宝されていたAchillea millefolium L.

見てのとおり葉っぱが超ギザギザなのでノコギリソウ

葉っぱを揉んで匂いを嗅いでみると即わかる「あ、この草絶対ハーブだ」感。(葉は柔らかいのでケガしないよ!!)

そうなんです、セイヨウノコギリソウは原産地ヨーロッパではしっかり薬草として活用されている歴史があります。

それもそのはず、学名の"アキレア"は古代ギリシャの英雄アキレスからきているもので、古来より兵士が負った外傷を治癒するために用いられた薬草なんだそうです!

いや嗅いでみるとホント薬草だなぁーという香りがするんすよ。
ヨモギの香りに近いような、近くないような。。。
ヨモギも代表的な和ハーブですしね。

■実際に探してみる。

今回は蒸留釜とおでかけ!

意気揚々!!
蒸留釜をシートベルトに縛り付けていざ出陣!

アキレアが採れたらその場で即釜に閉じ込めてやります。
1ミリたりともオイル成分の揮発を許さない構えです!

本当に三笠に生えてるかどうかわからないからね、うん。。。

キク科ノコギリソウなので根っこでぜんぶ繋がってるらしい

で、山というか沢というか、ついに林道脇でヤツを見つけた!!

いた!こいつがアキレア・ミレフォリウムだ!!

親しくさせてもらってる白老町の野草キングことノダ氏のご助言も得て山道に探しまわったところ、30分ほどの捜索で第一アキレア発見となった!

(都市部より林道なんかに生えてると助言くださったノダ氏のインスタ)

▶︎繁殖力めちゃ強いらしいけど、、、

生える位置が際どいアキレア・ミルフォリウム

調べてみるとアメリカやニュージーランドなど牧畜産業が盛んな地域では増えに増えまくり、帰化植物(生態系に組み込まれる事)となっているぐらいのスゴイ繁殖力なんだそう。

そう聞くと、増えに増えまくって手に負えないくらいヤベーヤツなんだろうな〜という印象を抱くのですが、意外と少なくて発見するのに苦労したんです。(開花期がまだ来てないので見つけづらいというのもある)

写真で示したように、同じ外来種のセイタカアワダチソウの方がマジでどこにでもいるってぐらいの密度。正直これぐらいを想像していた。

けどどうやらアキレアは背の高い雑草と一緒に育つことができないっぽい(上記写真)。
ヨモギやセイタカアワダチソウはこの時期もう70センチほどの背丈になっていて、生えるエリアと生えないエリアの差が明確なぐらい。壁に見えるよね。
けどその中にはアキレア全くいない。

オレンジで囲った部分にしかアキレアは生えていない

雑草の背が高いエリアの中でもこういう草が全く生えていない部分の周縁部にしか生えていないんです。

アキレアって意外と生える場所を選ぶのね…という印象。

どうにか釜埋まるくらいは集められた

ということで、最近まで草刈ってたんじゃないの?ってくらい雑草の侵入が浅い部分で集められたのがこの程度!
やっぱりそんなに生えてないじゃないか。

アキレアみっけた!と調子に乗って全部刈ると翌年そのエリアで全く採れなくなるので、あえて1株の群体に花2,3本残す感じで摘み取ってきました。

再生を考えて根元から行かず中腹くらいからという資源保存の徹底ぶり。
こういう資源植物は保全の考え方が大事なんですよ〜

さてラボに持ち帰ったところで仕込み作業に移ります。。。

■蒸留準備!

このまま蒸留すると最大抽出率を達成できなさそう…

ただ採ってきたばかりのこの状態で蒸留すると、前回蒸留日記や数々の松葉素材蒸留を経て学んだ、素材を刻まないと精油抽出しきれないよね〜という経験則を踏まえて。。。

精油を抽出しやすくするため素材を細切れにした

いつも通り蒸留素材を細かく刻んでやりました。これが下準備!

まぁこの間にも精油成分の蒸発は進んでしまうのですが、とやかく言う前にさっさと細かく刻んで、よりたくさんの精油を抽出してやります。

で、ザザーッと釜に戻す。

細かく刻むと釜のカサは減る。

素材を細かく刻んだので、ラボに持ち帰った時点とを見比べると体積が減りましたね。
いやー蒸留釜にMAX詰め込んでどれだけ精油採れるか調べたかったところではあるけれど、実際あまり生えていないというんだからしゃーないか。

刻んでからと言うものの、あたりは傷軟膏をこぼしたかのような香りがプンプン漂う空間に。
香りが強いから結構アキレア精油採れるんじゃね…!?

で、あとはいつも通り蒸留器を始動。。。


■いざ蒸留!ついに…

滴下開始から3分ほどで青い油膜が浮かび始める

感動の瞬間は蒸留水のポタポタ開始からすぐに訪れました。。。

噂どおり、精油が青いのです!!!!!

セパレータ内に美しいマーブル模様が浮かぶ。美しすぎる。

すげぇ!!!すごすぎるぞアキレア!!!!

オイルセパレータにどんどん溜まるその青にただひらすらカメラをかざし続けていました。
いやむしろカメラを1秒たりとも離せないほど初見を釘付けの夢中にさせるこの魅惑の青色!!!!

美しすぎる!!!!!!

セイヨウノコギリソウ精油の青い油層

まるで国際宇宙ステーションから地球の日の出・日の入りを見ている光景のような美しさ。。。
薄く広がる青のグラデーションがあまりにも美しすぎます。

伝わりますでしょうか?この表現。。。

いつもなら透明なオイルが淡々と溜まっていくだけなのですが、今回アキレアの蒸留は青がどんどん深く染まっていくんです。。。

油層が厚くなるごとにその青の濃さを深める精油。
蒸留が楽しすぎる。。。

精油の結露が始まる地点で青ができている模様

初めてみる植物由来の青がどこから溜まってくるのか?とセパレータの上を辿っていくと、冷却管のちょうど中腹あたりで精油/油分の結露が起こり、そこで真っ青な精油ができているようすが観察できました!

すごいすごいすごい。ハラショー。エータプリクラースナ…


■蒸留結果!どのくらい精油を得られた?

最初の1時間では2mLほどの精油が得られた

”抽出率”を知りたかったので、まずは蒸留時間を1時間とみて一旦区切ってみました。

最初の1時間、1本目の蒸留ではこの精油量が得られました。
お世辞にも多いとはいえない、貴重な青い精油ですね。

さて、これを回収した後さらに2時間半から3時間しっかり回してみることに。

続けて2本目3時間回した結果は1mLほどと抽出率が下がった

2本目の長尺蒸留。
やはり最初の1時間には抽出量は及ばず、半分ほどの1mLほどとなりました。

加えて、蒸留される精油成分が変化したのか、最初の1時間で得た精油よりやや粘性が増した感じがしますね。
オイルセパレータの精油のへばりつき方が何やら違っています。

しかし色は薄まることがなく、どれだけ濃い色してるんだ…という感想。

釜半分2/3ほどのアキレアから2mLほどの精油が得られた

ピペットすら青く染めるほど色の濃い精油がGETできました。
なんだこの光景、夢でもみてんのかってくらいインクのような青ですね。

香りはやっぱり蒸留水と精油に別れてしまいますから、ノコギリソウの香りからややドライなヒノキの葉っぱ精油に近いような香りへと変貌していました。
成分を調べてみるとやはりヒノキといくらか共通成分があるようです。

蒸留終了後のノコギリソウ

なぜか真ん中だけが青緑色になっている蒸留終了後のアキレア残渣。
冷却管から青い精油がポタポタ落ちてきて染まったのでしょうか?笑

実は本記事では書きませんが、のちにコレ使って企んでいることがあります、、、

■総評!

外の青空にかざしてなお映える青いアキレア精油

得られる精油の量はさほど多くないものの、『美しい。』の一言に尽きる蒸留結果でした!!!!

調べてみると、どうやらセイヨウノコギリソウが持っているマトリシンという香り成分が高温の水蒸気に晒されることによって構造変化し、鮮やかな青色を呈するという仕組みのようです。
これはハーブティでも有名なジャーマンカモミール(Matricarie camomilla)でも同様の現象が起こっている事が知られています。

なので高温を経なければ透明なまま。水蒸気蒸留さまさまです。

●蒸留の見方が変わる可能性を秘めた青い精油。

今まで「蒸留」という工業手法って、香り抽出のためであって得られるのは無色透明やうっすら黄色がかった香りのある油分が得られるだけのものでした。

しかし水蒸気蒸留という方法が植物成分に与える化学変化・イリュージョンによって、ここまで見ていても楽しい実験に変化するとは思いもよりませんでした!

これは見学イベントをやっても人が来る魅力を大いに秘めていますね…!

ラベンダーなんて育ててる場合じゃねえ!!((オイッ


実はアキレア・ミレフォリウムを採取した最近はまだギリギリ開花期ではないので見つけづらかったんですが、白い花を咲かせ始めるとめちゃ見つけやすくなるので1週間後あたりにまた山へ出向いてみようかと思います!

今度は花がしっかり咲くと青い精油成分は多くなるの?
背丈もおっきくなるから抽出量増えるんじゃない!?
というさらなるギモンを解き明かしていこうかと思います〜〜〜!

ではでは、北海道では息をのむほど美しい青いエッセンシャルオイルが抽出できる植物がいるよ!北海道っていいよね!というnoteでした!

Twitterではラベンダー写真や蒸留実験のリポートを随時つぶやいているよ!

【エゾヨモギの新芽蒸留回】

【水蒸気蒸留マガジン】


若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。