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【蒸留日記vol.70】北海道ラベンダーはじまりの品種'1号ようてい'を蒸留する!

今年ついにやってきた、北海道ラベンダー品種の中でもなかなか珍しい部類の1号ようてい!
この子たちはまだまだ若い株なので花を成熟させて弱ってほしくない意向から写真を撮るだけ撮ってすぐに精油を抽出することとなりました!

ではさっそく1号ようていの蒸留レポートをば!


※ラベンダー 蒸留noteの注釈
基本的にラベンダーの蒸留記事は生活習慣的な意味で、
蒸留〜精油抽出の1日後に記事が上がるペースとなるかと思います。

蒸留実施日は多分だいたい記事投稿日の1日前だヨ。

■北海道ラベンダー '1号ようてい'のプロフィール!

花穂形状が穂状となるのが特徴の1号ようてい

1号ようてい(Lavandula angustifolia 'No1 Yotei')は紛れもなく北海道のラベンダーオイル生産史において優良選抜品種の第1号として登録された華々しいラベンダーなのですが、この品種について個人的に好きなブラックジョーク・影なる歴史があります。

それはというと、この品種が1937年フランス由来のタネより育った雑種30種以上(試験開始段階で30種余りであり、実際の発生種数はそれ以上)の中から見出され、品種名がつけられたその年1964年に名前の由来である羊蹄山の座するニセコ地域においてのラベンダー商用栽培が幕を閉じてしまったのです。
なんという皮肉でしょう・・・というお話!

▶︎about 'No.1 Yotei'

花穂が成熟してきた6/29の1号ようてい花穂

まぁサクッとこの品種のヒストリーなんかを紹介すると、由来は北海道ラベンダー共通の1937年オートプロヴァンスの高原は農家さん翌年種まき用のタネ5キロ分から誕生しました。なのでフランス由来の品種です。

北海道のラベンダー栽培史において優良品種を見出す選抜試験で1964年に優良品種の座を勝ち取り、早咲1-3という試験ナンバーから『1号ようてい』の名前が付きました。
名前の由来はラベンダーの大規模栽培が最も早くスタートしたニセコ地域のシンボルである羊蹄山から採用されました。

今ではこの品種が見られるのはおそらく中富良野町のファーム富田さんのラベンダー畑のみだと思われます。
なんでか知らないですけど、ラベンダーの歴史を持つニセコ町は特にこの1号ようていを栽培している様子はみられません。
ゆえにかなり希少な品種となっています。

▶︎1号ようていのスゴいところ!

わがラベンダー見本園で収穫できた北海道品種たち

あるんですよそれが。
北海道ラベンダーの代表格を名実ともに欲しいがままにしている4号オカムラサキの収油率を100%とみたときに、この'1号ようてい'はなんと120%もあるのです…!!

1号ようていの光る性質の一つというのが、北海道品種のなかで最も高い収油率を叩き出せることなのです。(調べると当時のデータが残ってます)
おかむらさきを5株植えて得られるラベンダーオイルがなんとようてい4株分で元が取れてしまいます!すごいよね!!

■蒸留素材の準備!

今ある9株から摘んできた1号ようていの花穂

ウチへは今年になって苗としてやってきたので、今シーズン現状この程度しか花がついてません。

しかし4号丘紫に対して収油率120%というのも侮れない数値なので、この花穂からオイル数滴分でも採れれば大勝利!ってことにして、微々たる収穫量ですが蒸留してみることにします。

通称エスピール法でラベンダーを蒸留するため茎と花とを切り分けた

普通の蒸留家ならば何も考えず葉茎ごと蒸留釜にラベンダーを突っ込むと思うんですが、今回の試験蒸留で最も重視したいのはこの1号ようていのアロマを確かめること!

ラベンダー蒸留研究者の常識では、葉っぱや茎が持つオイルの量は0.05%ほどと異様に少ないんですが、問題なのはその0.05%を構成するオイル成分で、1,8cineoleやcamphorなどが主体的に含まれていることから花部分の美しく癒される香りを"グリーン臭"などでかき乱す要因となることが知られています。

なので純粋に1号ようていの花の香りを確かめたければ雑味成分を持つ葉茎除いた花部分だけからオイルを抽出しましょうか、という今回の趣旨でこのようにエスピール法(花穂のみに切り分ける蒸留法)での蒸留となります。

これによりわずかながらの精油であっても純粋な1号ようていのアロマが確かめられる精油サンプルが得られるハズです!

エスピール法とは、ごく近年2017年頃にフランスにて開発された新たな蒸留方法で、花穂のみを切り分けて蒸留することによりオイルの質を向上させた新しい方法です。

■いざ蒸留!

上記写真は完全に事後報告なんですけど、蒸留釜のサイズに対して苗定植初年度の収穫量ではなかなか見合わない差だったので、このようにザルに花穂を乗せて蒸留をしました。
とりあえずは水蒸気が花に当たってくれれば精油成分を持ち上げてセパレータまで送ってくれそうなのでよしとします。

蒸留時間はあまり長ったらしくやってるとアロマがモッタリしてしまう気がするので、50分ほどの比較的短時間の蒸留としました。

■蒸留結果は…!?

しっかり油層が現れているのがわかる
あららららまたもカマズレンの色がわずかに現れた…
0.5mL以下の精油が得られた

またしてもノコギリソウ由来の青色がわずかに移ってしまい、ブルーグレーのような色の精油になってしまいました。
(こりゃしっかり蒸留器洗浄しなきゃだわ…)

さておき、精油がろくに採れない!というよりかは0.3mLほどでしょうか、モノは確かに得られたようです!なので一応合格bb
あのラベンダー素材量の少なさからよくここまで得られたもんだ!とむしろ感心ですね。

1.収油率

収油率の計算については、今回は素材量が過少であり抽出mL数を気にするほどの内容だと考えてなかったので、計測していません!

花穂の本数が安定してくる2,3年目から収油率データを取ってっていこうと思ってマス!

2.香りとか

これが今回の趣旨といいますか、醍醐味でしょう…!

代表的な北海道品種は4ついるのですが、香りに敏感な人だと4種それぞれ違った香り、伸びなどを持っていることに気づくハズです。
(富良野のファーム富田さんで4品種嗅ぎ比べができます!)

で、この1号ようていのアロマが誇るところは、ほか3品種がそれぞれ他に譲らない個性的なアロマ的特徴を持っているのに対して、1号ようていは尖った部分のない最もベーシックなアロマであるとされます。

で実際の香りはというと、、、

まず3号濃紫の後に濃い甘さが伸びるアロマ4号丘紫のアールグレイ紅茶のようなアロマとは明らかに違った香りであることがわかります。
さらに先日蒸留して得た園芸品種の小樽高橋ホワイトラベンダーとも違うことがわかります。
しかし確実にしっかり香るラベンダーアロマがあり、不快な成分/香りは0です。
1号ようてい精油の特に尖ったアロマ特徴は無いものの、不快要素もないサッパリしたアロマを「爽やか」と表現する人もいるでしょうが、個人的に「爽やか」はミント感が連想され、ようてい精油にミント感は感じないので爽やかとは述べません。
うーんやはりクセのない無難なラベンダー精油!という、むしろそれが個性として光っている品種・精油なのだと思います…!

という初めて自家栽培して得た1号ようてい精油の官能結果でした!


若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。