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「わかりやすさの罠」 池上彰

「「罠」とはつまり、「わかったつもり」になってしまうということです。」



「わかりやすさの罠」 池上彰



池上彰さんは、この本を書こうとしたきっかけがありました。


テレビ等で、できるだけニュースをわかりやすく解説してきたわけでありますが、手応えがあった一方で説明を聞いて納得、それで終わりという人が結構多くいたからなんだそうです。


ニュースの解説を見た人たちが、そこから深く掘ってゆき、もっとニュースについて知ろうとか、勉強しようとか、行動するきっかけには至っていないということなんですね。「わかりやすかった、良かった」で終わっている。


「これでいいのかなぁ?」と思い悩みはじめたことが、この本を書くきっかけになったと語っています。


「罠」とはつまり、「わかったつもり」になってしまうということです。


もっというと、「わかりやすさ」が思考停止にもなり得るということなんです。


アメリカ・トランプ大統領のことを例に挙げています。


トランプ演説の「わかりやすさ」が世界の政治を変えたアメリカの有権者は「難しい話を難しい英語で語る」ヒラリー氏を敬遠し、「単純な話をやさしい英語で話す」トランプ氏の「わかりやすさ」を選びました。

(中略)

世界の政治を変えた「わかりやすさ」の罠そのものでした。


世の権力者や政治家は、世論を自分たちの思う方向に向けるために、あらゆる手法を用いようとします。


「わかりやすさ」もその一つ。


今の時代、「わかりやすさ」の罠がいたるところで口を開けています。

特に、平気で嘘をつく政治家や官僚が、曖昧な言葉で自分たちの思うとおりに世の中を動かそうとするとき、わかった気になって自分の頭で考えようとしなかったり、あるいは、見せかけのわかりやすさで納得してしまったりしていては非常に危険です。


そういう意味で、新聞の重要性・正確性は共感するところでありました。


とくに


インターネットだけを見ていることの怖さも感じていたところでした。もちろん情報の速さや、手軽に検索できたり良い利点もたくさんあります。


ただネットの情報だけを見ていると、池上さんも書かれているように、自分の知りたいこと、心地いい情報だけが集まってきて、視点が偏る危険性があるということ。


情報の手軽さや速さとは反対に、新聞や書籍には校閲という情報の正確さを担保する作業があります。


校閲は誤字脱字のチェック、文章の不備がないか事実関係や意味に間違いがないかどうかの綿密な確認を経て世に出てきています。


驚いたのは、新聞では100人、200人といった人数で記事をチェックしているのだそうです。


ネットの情報にどれだけ校閲がは入っているのか。少なくとも個人が発信するSNSでは校閲という「第三者」のチェック機能は働いていないでしょう。

つまり、そこで飛び交う情報を無条件に信頼するのはかなり危険だ、ということです。


新聞も最近は立場の違いが二極化しているようです。できることなら新聞も2紙以上読み比べることを薦めています。


要するにバランスが大切です。バランスをとりながら知る力をつけていくと、「罠」に陥ることを回避できるでしょう。


池上さんは、書店に行かない日はないというほど書店に行かれているそうです。


書店だからこそ仕入れられる情報や
アイデアは、私にとって代え難い宝物です。


新聞だけではなく、書籍からの情報もかなり入れられているのでしょうね。


池上さんは、新書を薦めています。


新書は「気軽に学べるカルチャーセンター」のようなものであると語って
います。


カルチャーセンターでの5回分の情報量が、800円から1200円ほどで得られます。お得である上に、校閲を経て世に出ているので安心感もあります。池上さんは新書を大量に購入しているそうですよ。


池上さんにとっての「新聞」「本」「書店」は


私にとって「知る力」を鍛えるための最も有効な三大情報源といえます。


あと


「罠」に落ちないためには、自分で考えること。


今のような変化が激しい世の中で、時代の本質を見極め、生き抜いていくには、何よりも、自分の頭で考え、判断することが大切になってきます。


お風呂に入っていて、良いアイデアが思いついたなんて話をよく聞きます。池上さんは、それも考える段階があったことが前提だと語っています。


大事なのは、きっとアルキメデスもそうだったように、あることについてひたすら一生懸命考えるということです。

その段階があってはじめて、風呂に入るなどしてふっと力を抜いたときに、いいアイデアが思いつくのだと思います。


いろんな視点から知る力を鍛え、それについてよく考えて「知識」にすることが、わかりやすさの「罠」に陥らない「術」なのでしょうね。



【出典】

「わかりやすさの罠」 池上彰 集英社


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