ノラ

小説、映画、アニメを楽しむということは、この人生にもささやかな希望があるということを表…

ノラ

小説、映画、アニメを楽しむということは、この人生にもささやかな希望があるということを表明しているようなもんだよ。

最近の記事

宮崎駿『君たちはどう生きるのか』論――悪意に染まる世界の肯定――

問題の所在 宮崎駿監督のアニメ映画『君たちはどう生きるか』は、眞人(まひと)のふたりの母をめぐる映画である。 老婆であるキリコと共に森の中の洋館に足を踏み入れた眞人は、ソファーで横たわるひとりの女性を見つける。アオサギはこの女性が眞人の母親だと言う。眞人は思わずそのソファーで横たわる女性に「母さん!」と呼びかけ、その女性の身体に手を触れる。すると、その女性の身体は液体のようにドロドロに溶けて消えてしまう。 宮崎駿監督の映画において、人間の身体が液体のように溶けた物質として

    • 日記⑩――「スキップとローファー」について――

      今回の日記で、「スキップとローファー」というマンガの素晴らしさを語りたい。 まず「スキップとローファー」の簡単なあらすじを記しておく。石川県から高校進学のために上京してきた岩倉美津未(いわくら・みつみ)は、イケメンで女子生徒からの人気が高い志摩聡介(しま・そうすけ)と交流をもちながらクラスのみんなと人間関係を構築していく物語である。 主人公の美津未は「Scene②そわそわのカラオケボックス」というエピソードにおいて、美津未が江頭ミカという女子生徒から馬鹿にされていたということ

      • 日記⑧――2022年に読んだ本のベスト3

        今年2022年にわたしが読んだ本をすべてここに書き記していこうと思う。わたしは、読書ノートをつけているので、その読書ノートの記録をもとに、読んだ本をここに書き記していこうと思う。だが、2022年はわたしは体調を崩して、病院で緊急の手術を受け、一か月ほど入院をしていた。(ちなみに来年にも、再び手術を受けなければいけないらしい。)そのため、今年は読むことができた本が限られていた。何事も健康が第一である。それでは、箇条書きで書き記していく。 ①『燃えあがる緑の木』(第一部)大江健

        • 日記⑦――デリシャスパーティープリキュアの39話が素晴らしすぎる件について

          デリシャスパーティープリキュアの39話である「お料理なんてしなくていい!?おいしい笑顔の作り方」が素晴らしい神回だったので、その感想をここに書き残しておこうと思う。 今回のエピソードの冒頭で、ユイがおばあちゃんのレシピを元においなりさんを作ろうとするところから始まる。ユイはおばあちゃんの言葉やレシピに大きな信頼をよせているようだ。 そして、サッカーの試合に出場するユイだが、玉木わかなというユイの友達はサッカーの才能があり、中学二年生ながらすでにスカウトが来ているという。だが

        宮崎駿『君たちはどう生きるのか』論――悪意に染まる世界の肯定――

        • 日記⑩――「スキップとローファー」について――

        • 日記⑧――2022年に読んだ本のベスト3

        • 日記⑦――デリシャスパーティープリキュアの39話が素晴らしすぎる件について

          日記⑥――新海誠監督の『すずめの戸締り』を酷評する。

           先日、新海誠監督の『すずめの戸締り』を観た。そこで本作に対する僕なりの感想を書いていきたいと思う。  この映画のあらすじは実に単純だ。宮崎県に住む、すずめという少女がたまたま要石の役割をになっていたダイジンという猫の封印を解いてしまい、地震を起こすミミズを目覚めさせてしまう。そこで閉じ師である草太と一緒にダイジンのあとを追いかけることになる。ちなみに映画の序盤で草太はダイジンに要石の役割を引き継がされて子供用の椅子に姿を変えられてしまう。つまり、椅子の姿になった草太と一緒に

          日記⑥――新海誠監督の『すずめの戸締り』を酷評する。

          日記⑤――最近の近況について

          最近思うところがあって、大学院に入り直したいと考えている。どこかの大学の文学研究科の大学院に入り直して、修士課程(博士前期課程)、博士後期課程の両方を修了して、最終的には博士論文を提出して学位が欲しいと思っている。国文学を勉強したいと考えているのだ。また、国語の教員免許も欲しいと思っているので、大変かもしれないが、学部の授業にも参加することになると思う。 仕事を辞めてアカデミズムの世界に飛び込んでみたいのだ。だが、僕はもう若くなく、今年30歳になる。もしかしたら、手遅れなのか

          日記⑤――最近の近況について

          日記④――『LOVE LIFE』という映画について

          先日、深田晃司監督の「LOVE LIFE」という映画を劇場で鑑賞した。その感想を簡単に記しておく。 この映画は人間の機微が丁寧に描かれていて、それが不穏な雰囲気を醸し出したり、ときにはブラックなユーモアの雰囲気を醸し出している。また、主人公の妙子とパクの関係性が尊いものに感じた。パクは耳が聞こえなく、しかも韓国手話を通してしかコミュニケーションをとることができない人物であり、妙子のかつての夫である。主人公の妙子がパクに与える愛情は「LOVE LIFE」という映画の題名に深く

          日記④――『LOVE LIFE』という映画について

          日記③――三島由紀夫「雨のなかの噴水」について

          突然ですが、あなたは、三島由紀夫の小説では何が一番好きですか? 『仮面の告白』、『金閣寺』、『鏡子の家』、『美しい星』、『豊饒の海』など三島由紀夫の小説はどれも評判が高いのは知っているが、いかんせん長編だし、小難しいし、グロテスクな描写があるし、ちょっと苦手だなという、そこのあなた!ぜひ、「雨のなかの噴水」という愛すべき短編小説から、三島由紀夫入門を果たしたら、いかかがだろうか? 「雨のなかの噴水」という三島の短編小説は、『真夏の死』(不穏なタイトルだ)という文庫本で手軽

          日記③――三島由紀夫「雨のなかの噴水」について

          日記②――村上春樹『アンダーグラウンド』をおススメする

          あいかわらず毎日、本を読んだりアニメを観たりしている。今回も最近読み終わった本の感想を記していこうと思う。 村上春樹の『アンダーグラウンド』を読んだ感想を記していく。本書は、地下鉄サリン事件の被害者および関係者にインタービューして、村上春樹が一冊の本にまとめたノンフィクション作品である。 実は幾原邦彦監督の『RE:cycle of the PENGUIDRUM』という『まわるピングドラム』の劇場版を二ケ月ほど前に観たので、地下鉄サリン事件に関係する書籍として、『アンダーグラ

          日記②――村上春樹『アンダーグラウンド』をおススメする

          日記①

          日記を作成することにした。特に意味はないが、読んだ本や観た映画やアニメの感想を記述していく。 最近、村上龍の小説を大量に購入した。村上龍の小説をかたっぱしから読んで、勉強していくつもりである。 村上龍の小説は、『限りなく透明に近いブルー』を読んで、そのセックス描写や薬物描写に嫌気がさして、それ以降の作品は全く読んでいなかったが、村上龍の小説ぐらいきちんと読んでおかないとダメかなと思い、覚悟を決めて読み始めた次第である。 実をいうと僕は、村上春樹の小説は全部読んでいる。なので

          京都アニメーションと宗教

          京都アニメーションが、かつて90年代に新興宗教である幸福の科学の布教アニメや自己啓発アニメを作っていたのは周知の事実だ。 そして京都アニメーションの諸作品には、たびたび神や宗教への言及がみられる。 以下、京都アニメーションの作品履歴を辿りつつ、簡単に京都アニメーションと宗教の関わり合いを確認していくこととする。 ・『フルメタル・パニック!ふもっふ』の7話である「やりすぎのウォークライ」において、ラクビーの練習前にラグビー部のメンバーがグラウンドで神に祈りを捧げるシーンが存在

          京都アニメーションと宗教

          山田尚子監督作品の本質について――あるいは世界を「赦す」ということ――

          現在、山田尚子監督の新作である「平家物語」がFODで独占配信中である。わたしは山田尚子監督の大ファンである。そんなわたしが山田尚子監督作品の良さについて語りたいと思う。 山田尚子監督の作品といえば、「けいおん」、「映画 けいおん」、「たまこまーけっと」、「たまこラブストリー」、「聲の形」、「リズと青い鳥」、そして新作である「平家物語」の七作品を挙げることができる。 これらの諸作品は扱う題材も異なるが、私見によれば、一貫した山田尚子氏の思想性のようなものをとらえることはでき

          山田尚子監督作品の本質について――あるいは世界を「赦す」ということ――

          アニメ「平家物語」第二話の感想

          これから、山田尚子監督の新作アニメである「平家物語」の感想を、ぼくはこの記事で語ろうとしている。だがぼくはアニメの感想を語るのが、大の苦手である。そんなぼくがアニメの感想を語るのであるから、きわめて個人的な感想になってしまうと思う。その点は、この記事の読者に申し訳なく思う。(この記事を最後まで読み通す、我慢強い読者がいるとすればだが。) アニメ「平家物語」の第二話まで観た感想であるが、率直に言って、本作は傑作である。地上波での放送はまだ先なので、まだ「平家物語」の二話を観て

          アニメ「平家物語」第二話の感想