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地方創生Coach Note【復興へ向けての振り返り⑦「プレゼンシングと共同体感覚」】

【カヘン自身も「正しい答えを私たちが持っている」という思考のボタンを一時停止して・と語っているように、第一歩として自らさらけ出す行動とその覚悟。「中立性」「好奇心」「謙虚さ」「注意深さ(観察)」といった要素における準備は標準装備で備えておくことです】

前回はファシリテーターとしての態度、準備を見ていきました。そのうえでここでお伝えしておきたいのが、そもそもでファシリテーションという場は全て成功に終わるわけでもありませんし、順調に進行するわけでもありません。「意志なきもの(動員、強制等による主体性ない参加者)」の存在で簡単に崩壊するという側面も常に持ちあわせています。
 
うまくいかないとき、予想外のことが起こった時。そんな時にこそ、ファシリテーターの「在り方(Being)」が真に問われていると言えます。
 
アダム・カヘン自身が「ファシリテーターはプロでもアマチュアでも構わない」と触れているのは、この在り方ゆえとも言えるでしょう。
 
この役を担う上では、よりよい状況になるべく準備をしておきつつ、それでも困難な状況が生まれることも受容できる。困難の中にあって自ら謙虚にさらけだせる自分自身で在る。そんなマインドセットであることは、上手くいく行かないという技術論以上に重要な要素となります。
 
というわけで、育む自身のマインドセットに矢印を向けながら、こうした文脈を見て頂ければと。今回からは、より具体なところに焦点をあてていますが、この「在り方」こそ大前提になっています。

では、見ていくとしましょう!

☆対話の先の世界。プレゼンシングとは?

U理論で知られるMITのオットー・シャーマーがプレゼンシングと呼ぶ状態があります。これは、出現しつつある未来を感じつつ(sensing)、個々が確としてそこに存在する(present)状態のこと。
 
ファシリテーションの場においては、アドラーの「共同体感覚」という言葉の方が日本人としてイメージしやすいようにも思いますが、よいファシリテーションの場ではこうした世界を体験、体感することが可能です。
 
こうした全体で「共同体感覚」にある状態の要諦としては「全体幸福」が最優先され「私」が「私たち」という言葉になっています。個人の信条やイデオロギー、プライドといったエゴは心の棚に置かれていて主張せず、私たちとして積極的に発言し、自分以外の誰かの言葉一つ一つを傾聴し、その意図や未来像を探求するような状態になっています。
 
こうした「場」を作る為に、私たちはどのようなステップを踏むことが好ましいでしょうか?

☆失敗はスタートにありがち

昨年のある学校に関するミーティングでは、その目標や方向性に合意以前の理解が欠けていただけではなく、スタートにおいても丁寧さに欠ける進行となってしまっていました。
 
例えば、出席した学校の先生が「進学校!」というエゴなプライドを見せたシーンがありました。まあ、これは多くの場でもおこりがちです。この発言に対して僕なんかは「井の中の蛙。真の進学校というのは、東京大学に生徒の3割くらいが進む学校のこと」と冷ややかな感想を持ちましたが、その先生方が所属する高校から「学校で成績のよい生徒がそうではない生徒を見下すような態度を取るのが嫌だ」という思いを抱えて参加していた生徒達もいました。この高校生達からすれば「先生方がそんなんだから、人として尊重しあえない同級生が生まれてしまう」と感じるのもむしろ自然でしょう。
 
まさに、ファシリテーションが必要とされる混沌とした「場」です。ファシリテーターはここからプレゼンシングの手本となり、共同体感覚を生み出す体験を参加者に与えられるかどうか。まさに問われたシーンだったと思います。
 
フィードバック的に振り返るならば、この瞬間にでも、運営サイドは自らの予定していた進行やスケジュールを手放す必要がありました。アダム・カヘンが「注意を払う」というのはまさにこうした瞬間です。しかし、残念ながら当時はこの機会を逸してしまいました。
 
コミュニケーションにおいて相応のトレーニングを研鑽した人であれば、この「進学校」という言葉の探索を行うことは難しくなかったと思います。進学校というのは結果であり事象に過ぎません。その先生にとって「進学校」という言葉の奥には、誰にどのような利があると考え、その利が未来の学校には欠かせない・ことが皆に明確になるまで言語化する。その探求プロセスが必要でした。

進学校の方がいいよね・と全員が理解していると思い込んだコミュニケーション初心者にありがちなミスだったわけです。
 
これ、地方創生界隈とかだと、出来る自分(自称)というエゴでやっていて、実は客観レベル低いんだよね・のケースがとても多いです。アンケートとりました、ヒアリングしました。ほとんどのケースが表面的であり、表層的な回答をベースに過去の改善、過去の延長線にとどまる結果になっています。そして、そこには「本当の未来」はありません

☆最初に時間を使う勇気

心理的安全性を確保し、現在地を全員が同じ言語で共有する。
 
コーチングにおける基本中の基本である初手。
これは、ファシリテーションにおいても変わらず最重要となるプロセスであり、全体の命運を決めてしまう最重要課題の一つです。ファシリテーターは、この初手の準備にこそ一番時間をかける必要があり、その対話には謙虚さや丁寧な態度を示し、細心の注意を払う必要があるわけです。

そのうえでファシリテーターは、自らオープンになり、対話では全体「We」の代弁者としての問いを投げかけ、個々の状況や背景、意志、熱量、期待といった未来志向のものを形にして、参加者全体で共有していく手助けが出来る筈です。
 
わかっている!と思いこんでいる「現在地」を疑い、様々な人の様々な視点で眺め、観察し、それを共有し、誰しも理解できる正確な現在地を描く。そこに驚きを共感共有し、つながりを深める最初の体験をつくる。
 
これが、出来ているようで、出来ていない多くの失敗事例にみられる落とし穴なのです。
 
続きます!


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