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”少年マンガ的”なレッドクイーン理論とは?

最近にわかに注目を集めている経営理論の一つに「レッドクイーン理論」があります。競争が企業を強くするという同理論は、従来の経営学が解き明かせなかった新たな視点を持つ点が注目されています。

従来の経済学・経営学の考え方

古典的な経済学では、市場を分析するときに2つの極端な状況を想定します。一つは『完全競争』という極めて激しい競争状況で、もう一つは『独占』という競合がまったくいない状態です。

そして現実の市場は完全競争と独占の間のどこかに位置付けられます。

収益性の面では、完全競争においては企業の利益はゼロになります。製品が差別化されていないので、価格で競争するしかなくなるからです。各社が競って安売りをしていった結果、各社の利益はゼロになるというわけです。

これまで経営理論の中心には、ポーターの競争戦略がありました。この理論では、競争をどれだけ避けられるかが企業の収益性を高めるカギでした。つまり、独占に近ければ近いほど儲かるというシンプルなメッセージです。

レッドクイーン理論のユニークさ

レッドクイーン理論が従来の競争理論と大きく異なるのは、競争をポジティブなものとして捉えている点です。競争の中に身を置くことが企業の成功の可能性を高めるという仮説です。

「ライバルがいるから強くなる」という少年マンガ的な経営理論ともいえます。

レッドクイーン理論のメッセージはこうです。厳しい競争環境に置かれた企業は、生き残りをかけてイノベーションに取り組みます。その結果、企業はより強くなり進化していくというわけです。

キツネとウサギの追いかけっこ

このような状況は自然界でも見られます。ここで、ウサギとキツネの生存競争を考えてみます。キツネはウサギを捕食する為に必死で追いかけ、ウサギはウサギで懸命に逃げます。

こうした生存競争の中で、足の遅いウサギは淘汰されていきます。そして足の速いウサギが増えると、今度は足の遅いキツネも淘汰されます。このサイクルを通じて、両者のスピードはどんどん向上(進化)していくわけです。

ガラパゴス化の危険性?

競争をポジティブに捉え、企業の進化を説明するレッドクイーン理論。従来の経営理論では拾えなかった新しい視点を提供することから、近年注目度が高まっているようです。

ところが、目の前のライバルとの競争に特化し、現在の環境に過剰適応してしまうというデメリットもあります。いわゆる「ガラパゴス化」です。この部分については別の機会に改めて整理したいと思います。

※ 参考図書「世界標準の経営理論」


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