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【企業解体新書】しまむらの決算書の特徴とは?

ファッションセンターしまむらが絶好調です。2020年9月~11月期の純利益は、前年同期比で3.6倍の110億円でした。背景には、気温の低下により秋冬物の販売が好調だったことがあります。

今回はしまむらの決算書の特徴を3つのポイントに整理し、同社の経営戦略に迫ります。

特徴1.粗利益率の低さ

アパレル各社の売上総利益率

上記は、アパレル各社の売上総利益率(粗利率)の推移を示したグラフです。

アパレル業界におけるしまむらの最大の特徴は、粗利益率の低さにあります。しまむらの粗利益は30%前後で推移しています。一方、ユニクロをはじめとする競合他社は45%~55%に分布しています。

粗利益率が低い水準にあるのは、しまむらの商品の価格帯が低いからです。決算説明資料によると、同社の1品単価は887円です。リーズナブルな商品を販売している為、他社に比べて原価率が高くなる傾向にあるわけです。

特徴2.ローコストオペレーションで利益確保

アパレル各社の営業利益率の分解チャート

上記は、アパレル各社の営業利益率を示したグラフです。グラフの上端が粗利率、下端が販管費率を示しています。その差分が営業利益率になっています。

しまむらは粗利益率が低い分、販管費をコントロールすることにより利益を確保しています。ローコストオペレーションを徹底しているわけです。ドラッグストア業界におけるコスモス薬品と似たようなポジションです。

では、具体的にどうやってローコストオペレーションを実現しているのでしょうか。理由は大きく二つあります。

一つ目の理由は、郊外集中出店戦略です。しまむらは国内に2,000を超える店舗を出店していますが、その多くは郊外型の店舗です。郊外に店舗を構えることにより、不動産費を低く抑えることができているわけです。

二つ目の理由は、パートタイマーの活用です。しまむらのパート比率(パート社員数/正社員数)は約80%と極めて高く、正社員に頼らない店舗運営を実現しています。しまむらは優れたマニュアルを持つことでも知られていますが、業務の標準化を進めることにより、人件費を低くコントロールしているわけです。

そもそもアパレル企業の販管費は「不動産費」「人件費」が大部分を占めます。これらを低く抑えるために、しまむらは郊外に集中出店し、パートタイマー主体の店舗運営を行っているということです。

特徴3.在庫の高速回転

アパレル各社の棚卸資産回転日数

しまむらの3つ目の特徴は、棚卸資産回転率の高さです。上記のグラフは、アパレル業界各社の棚卸資産回転日数を示したものです。これを見ると、しまむらは2カ月足らずで在庫が回転していることが分かります。

ざっくり言うと、しまむらに入荷した商品は2カ月以内に完売しているというわけです。ユニクロを筆頭に競合他社は3~4ヶ月で1回転ですから、どれだけしまむらが商品を早く捌けているかが分かります。

しまむらはもともと低価格帯の商品を主力にしています。もし在庫がダブつき、在庫処分セールや値引き販売が必要になると、ただでさえ低い粗利益率が更に下がってしまう恐れがあります。そうすると利益を上げることが難しくなります。

つまり。しまむらのビジネスモデルでは、商品を正価で売り切る力が生命線になるのです。アパレル業界ではこれをプロパー消化率と言います。

このプロパー消化率を高めるため、しまむらではコントローラーと呼ばれる役割を設けています。彼らは、販売動向を地域別など様々な角度から分析し、正価で売り切る対策を立てます。

例えば店舗Aである商品の販売が好調だと分かったら、その商品の売れ行きが芳しくない店舗Bから店舗Aへ商品を移動させる、というようなことを行っています。

◆コントローラー
商品が店舗に入荷してから売場から無くなる(売り切る)までの在庫管理は、本社に所属する約70名のコントローラーの役割です。コントローラーは、コンピューターのバックアップを受けて、全ての商品の動向を色別、サイズ別、デザイン別、地域別など様々な角度から分析し、正価で売り切る対策を立てます。(しまむらwebサイトより)

まとめ

しまむらの決算書の特徴

しまむらの決算書の特徴は、上記の3つにまとめられます。

郊外に集中的に出店し、低価格帯の商品を高い回転率で売り切るビジネスモデルはユニークです。しまむらでは、今後は都市型店舗の開発を成長戦略に据えています。従来とは異なるフィールドでどう戦っていくのか、継続的にウォッチしていきたいと思います。

今回は以上です。

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