吉美駿一郎

祖父は商売上手でしたが「男は小金を持つと浮気するから」と儲けを寺に寄付していたそうです…

吉美駿一郎

祖父は商売上手でしたが「男は小金を持つと浮気するから」と儲けを寺に寄付していたそうです。第1・2回ブンゲイファイトクラブ本選出場。第2回かぐやSFコンテスト大賞受賞。視聴覚文芸部。文体の舵をとってます。 メールアドレス:shun.yoshimi728@gmail.com

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ブーツを食べた男と冷たい人魚(朗読版)

    • 千字戦参加作品その2「問いかける」

       幽霊がいるのだという。  その話が出たのは、いつものように宇宙人にメッセージを送る集いが終わり、帰ろうとしたときだった。いつもだったら、そのままさっと帰ってしまうだけなのに、今日に限っては呼び止められた。今日の振り返りをしたいのだという。まず皆で輪になって集まると、若い外国人の男性が英語で何かをしゃべった。まったく意味がわからず、周りの顔を見ていると、どうもみんなはわかっているらしい。しかし、誰も話さない。若い外国人の男性がまた何かいい、今度はニュアンスから「本当に話したい

      • トゥー・キッズ・ア・デイが放送されます

        世界のベスト!教育コンテンツ ~第50回日本賞~ | Japan Prize International Contest For Educational Media -日本賞- (nhk.or.jp) この作品、BS世界のドキュメンタリーでも放送されています。 そのときのタイトルは「狙われる少年たち -イスラエルの「抑止的」治安対策-」(原題:Two Kids a Day)でした。BS世界のドキュメンタリー - NHK これを見たときの感想を、Twitterに書いていたの

        • BFC5決勝作品の感想 その2

           蜂本みさ「お会いしましょう」の感想を書きます。  ぼくは近鉄線に乗ったことがないので、そのあたりの雰囲気はわかりません。  二度、三度と読み返して思ったのは、ここに登場する「おばけ」というのは、編集されていくつかの要素を切り落とされ、置き換えられた、本物らしいが本物ではない存在のことだろうと思いました。  ところで、「お会いしましょう」は読みましたか?  まだでしたら、今すぐ読んでくださいねー。  読みました?  ではネタバレで感想を書きます。  この短いお話には、質感

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        ブーツを食べた男と冷たい人魚(朗読版)

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          BFC5決勝作品の感想 その1

          鳴骸さんの「ヴィゴ」の感想を書きます。ちなみにぼくはヴィゴ・モーテンセンを知りません。検索したところ、出演作も見ていませんでした。顔は見たことあるような、ないような、という感じです。 ところで、鳴骸さんの「ヴィゴ」は読みましたか? ネタバレを含めて書きますので、先に読んでおくのをおすすめします。 読みましたね。 ではネタバレで感想を書きます。 ぼくはこの作品を、短詩の要素を生かした小説だとして読みました。 ぼくのように「ヴィゴ・モーテンセン」を知らない人間には、その音が通常

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          火はどこに消えるのだろう

           弱い日差しを反射した葉が波打ち、風が光っているようだった。木の根っこがあちこち隆起している山道には、水たまりが飛び石のように散って、雨上がりの空と樹影を映している。近くに敵の姿もないことから私たちは少しだけ気を抜いて、それぞれがタバコをくわえ、ポリマーフレームのアサルトライフルを肩にかけ、苔むした大木にもたれたり、砂色の石の上に腰かけたりしていた。  生き物を殺した話を誰かがはじめた。ルールはふたつ。子どものころの話は無効。人間は生き物にカウントしない。  犬や豚を殺した話

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          昔見たドキュメンタリーの話

          2008年12月にBS世界のドキュメンタリーで「エルサレム ふたりの少女 ~自爆テロ 母たちの対話~」という作品が放送された。 当時の番組ホームページでは、こんなふうに紹介されていた。 当時のぼくは、こんな感想をmixi日記に書いている。 というのが当時の印象でした。 ただ、今では若干、その印象が変わっています。 というのも、2008年とは違って、今のぼくは複合差別とかインターセクショナリティ(交差性)について若干の知識を得たからです。 あくまで私見ですが、イスラエルと

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          群れのルール

           男は異常なほど太っていたので、タワーマンションに食われた。  もともと微細建築知性群は部屋の汚れを取ったり、匂いを吸収したりするために考案されたものだ。群という言葉からわかるように微細な知性の群れだ。多数の個体が協調行動しながら最適な戦略を選ぶためには、シンプルなルールがいくつかあればいい。例えば渡り鳥の群れは互いにぶつからず統率のとれた動きで飛ぶが、リーダーはいない。接近、併走、衝突回避という三つのルールを守っているだけだ。それで群れとしての頭が良くなる。微細建築知性群も

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          明日のかぐやSF予想

          ところでみなさんは「心が折れる」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。 なぜ、心という形のないものが、折れるのだと思います? 作家の夢枕獏によると、「心が折れる」あるいは「心を折る」という言葉を最初に使ったのは、神取しのぶだとのこと。 神取しのぶは試合中に自分の目を殴ったジャッキー佐藤の心を折ろうと思ったときのこと、実際にどうやってそれを行ったのかを、こんな言葉で語ります。 この井田真木子のノンフィクションによって、世界で初めて「心が折れる」という言葉が使われ、今では一般

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          面白い推理だね探偵さん、あなたは作家になったほうがいいよ 5

          最終回です。 残る作者は、Takemanさんと、鈴木無音さんです。 最初にTakemanさんから行きます。 Takemanさんは、貞久萬のペンネームでいくつかの作品を発表されています。 ナイトウォーカー https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19770725 貞久萬短篇集 https://losemind.hamazo.tv/e9606953.html 六枚道場参加作品 https://www.still-blue.com/

          面白い推理だね探偵さん、あなたは作家になったほうがいいよ 5

          面白い推理だね探偵さん、あなたは作家になったほうがいいよ 4

          前回の作者当てを書いたら、作者さんからお言葉をいただきました。 https://x.com/maquiwo/status/1706295559462801690?s=20 さらにそのお言葉に、十三不塔さんもコメント! https://x.com/hridayam/status/1706532547575087329?s=20 お二方とも、ありがとうございます。ありがとうございます。 さて、前置き終わって本題です。 今回は糸川乃衣さんの作品を当てます。 ぼくは以前、

          面白い推理だね探偵さん、あなたは作家になったほうがいいよ 4

          面白い推理だね探偵さん、あなたは作家になったほうがいいよ 3

          前回の作者当てを書いたら、作者の方々から反応をいただきました。 まずは暴力と破滅の運び手さん。 https://x.com/violence_ruin/status/1705173311918158261?s=20 ありがとうございます……!!! 続いて関元聡さん。関元さんはツイッターでは(いいのツイッターで)、犬飼さんと名乗っています。 https://x.com/skmt3104n/status/1705221871522975876?s=20 つまり、「沖縄を舞

          面白い推理だね探偵さん、あなたは作家になったほうがいいよ 3

          面白い推理だね探偵さん、あなたは作家になったほうがいいよ 2

          大変に重要なことを忘れていました。 前回、当然のようにわかっているよねって感じで書いていましたが、今回のかぐやSF3で最終選考に残ったと名乗りをあげたのは6人です。 暴力と破滅の運び手さん 糸川乃衣さん 関元聡さん 牧野大寧さん 鈴木無音さん Takemanさん 本来であれば、まずはこの6人の紹介からスタートすべきでした……。色々と考えずに動いてます、すみません。 前回の作者として名指した、暴力と破滅の運び手さんは、いくつもの作品を発表されています。 「灰は灰へ、塵は塵

          面白い推理だね探偵さん、あなたは作家になったほうがいいよ 2

          面白い推理だね探偵さん、あなたは作家になったほうがいいよ 1

          今日から、かぐやSF3の作者当てゲームをします。 何を隠そうぼくは以前ミステリを書いていたので自信がないわけではない。 自信がないわけでもないはずなんだけど、前回は大幅に外していました。なぜだ。 ですので、ぼくの推理は鵜呑みにしないようご注意ください。 さて(みなさんは「名探偵、皆を集めて、さてといい」って知ってます?)。 さて(二回目)、作者当てゲームをする場合、まずは簡単なところから作者の名前をあげ、残りに対処するのが、おそらくはベストの方法でしょう。 容易な問題から解

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          「ベントラ、ボール、ベントラ」のネタバレ感想

          「ベントラ、ボール、ベントラ」のネタバレ感想を書きます。 読んでない人は今すぐに読んできましょう。4000文字の小説なので、あっという間に読めちゃいますよ。 ベントラ、ボール、ベントラ | VG+ (バゴプラ) (virtualgorillaplus.com) ということで、読んできましたね? ではネタバレ感想を書きます。 この作品、最初に「こりゃただ者ではないな」と感じたのは、タイトルです。 「ベントラ、ボール、ベントラ」ってタイトルは、かなり目を惹きました。タイトルだ

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          「月面ジャンプ」のネタバレ感想

          「月面ジャンプ」のネタバレ感想を書きます。 読んでない人は今すぐに読んできましょう。4000文字の小説なので、あっという間に読めちゃいますよ。 月面ジャンプ | VG+ (バゴプラ) (virtualgorillaplus.com) ということで、読んできましたね? ではネタバレ感想を書きます。 この作品、最初に「こりゃただ者ではないな」と感じたのは、 というところで、それまでのどこかほのぼのとしていたムードから一変してしまって、しかも急にスケールが大きくなっていて、ぼ

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