面白い推理だね探偵さん、あなたは作家になったほうがいいよ 4

前回の作者当てを書いたら、作者さんからお言葉をいただきました。

https://x.com/maquiwo/status/1706295559462801690?s=20

さらにそのお言葉に、十三不塔さんもコメント!

https://x.com/hridayam/status/1706532547575087329?s=20

お二方とも、ありがとうございます。ありがとうございます。

さて、前置き終わって本題です。
今回は糸川乃衣さんの作品を当てます。

ぼくは以前、糸川さんの作品は「ベントラ、ボール、ベントラ」で、鈴木無音さんの作品が「歴史的な日」だとツイートしました(いんだよツイートで)。
しかし、よくよく考えてみると、ぼくは鈴木無音さんの作品をひとつしか読んでいません。『京都SFアンソロジー』収録の「聖地と呼ばれる町で」一作のみです。これで当てられるわけがない。
しかし、糸川さんの作品はいくつか読んだことがあります。しかもぼくは、〈世界小説化計画オンライン〉という西崎憲さんが主催する「小説のストレッチ」を糸川さんと一緒に寿行、ではなく受講したことがあるのです。急に西村寿行が出てきてびっくりしたので、そのままにしておきます。
ともかく、鈴木無音さんを当てるよりも、糸川乃衣さんの作品を当てるほうが確率的に高いはずです。
作者当ては、ひとつ外すとドミノ的に外れていくので、まずは確率の高いところからやっていくほうがいいんですね。

ここで整理しましょう。
これまでのぼくの推理が当たっていると仮定すると、残っている作品はあと七つ。
「あの星が見えているか」
「マジック・ボール」
「勝ち負けのあるところ」
「プシュケーの海」
「ベントラ、ボール、ベントラ」
「歴史的な日」
「城南小学校運動会午後の部『マルチバース借り物競走』」

これまで読んできた糸川さんの作品の印象からすると、まず除外できるのは、「城南小学校運動会午後の部『マルチバース借り物競走』」。
あと「プシュケーの海」も除外します。これはTakemanさんの作品なので(理由は最終回に)。
「あの星が見えているか」も除外できます。

宇宙空間に身ひとつで放り出されたような、ちりちりと焦げ付く不安と恐怖。そこに安堵をも認めている自分。
十月の南東の空には一等星のフォーマルハウトだけがかしましく、ミラやデネブカイトスは地平線をかすめる程度。

「あの星が見えているか」より

この文章そのものは端正なのですが、糸川さんの好みとは違う気がするんですよね。糸川さんなら体言止めを続けないだろうと思うんです。文章の質は劇的に変わることはあっても、生理的な好みみたいなものはそうそう変わらないはず。
ですので、これは除外できる。

残っているのは、
「マジック・ボール」
「勝ち負けのあるところ」
「歴史的な日」
「ベントラ、ボール、ベントラ」
の四作。

と、ここで、紹介いたしますが、糸川さんもたくさんの作品を発表されています。
https://www.foriio.com/itokawa-noe

「握りしめるための石ころを探す」とか「またたきの聴き方」とかタイトルがうまいです。
そう考えると「ベントラ、ボール、ベントラ」なのかなあと思ったりもします。

でも「ベントラ、ボール、ベントラ」を再読していると、なぜか、一階堂洋さんっぽいなと思い始めてしまい、そうなるともうそのイメージが離れない。
糸川さんの文章ではないような気がしてくる。

こうなると、頭の中がぐるぐるしてしまいます。そもそも一階堂洋さんは最終に残ったと名乗りすらあげてない。でもなあ。長い長い文章を書いたり、短く学術っぽいこと書いたりする呼吸が、一階堂さんっぽく感じるんですよ。
糸川さんの文章は、もう少し堅実に、しっかりと積み重ねていくタイプだと思っていて、「ベントラ、ボール、ベントラ」が一階堂さんではないとしても、とにかくタイプが違うとしか言いようがない(推理ではない)。
とは思うんだけど、決め手には欠ける。

そこで、糸川さんの作品には必ず登場するであろう、「自己嫌悪」ないし、それに近い感情があるかないかで判別してみることにします。
自己嫌悪というと強すぎるかもしれません。自己批判のほうがいいのかも。すべての作品を読んだわけではないのですが、糸川さんの書くお話には、主人公が自分自身を批判したり、あるいは主人公が気にかけている人が、強く自分を批判したりする。「握りしめるための石ころを探す」で印象的だったのは、題材だけではなく、そういう部分でした。ですので、そういう印象がぼくにはあるのかもしれません。
その条件で、ぴったりくるのは「マジック・ボール」でも、「勝ち負けのあるところ」でも、「ベントラ、ボール、ベントラ」でもありません。

当てはまるのは、「歴史的な日」です。
おそらく、これが糸川さんの作品だと思います。
https://virtualgorillaplus.com/stories/rekisitekinahi/

推理が当たっているかどうかはともかく、「握りしめるための石ころを探す」はとても良いです。おすすめします。

https://www.foriio.com/works/747025

あと、関元さんと同じく、糸川さんも東京文フリで発売されるマルカフェ文藝社「棕櫚shuro10」にも参加されています。ぜひお買い求めください。
https://x.com/malucafe_bungei/status/1704148516161888275?s=20

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