面白い推理だね探偵さん、あなたは作家になったほうがいいよ 3

前回の作者当てを書いたら、作者の方々から反応をいただきました。

まずは暴力と破滅の運び手さん。
https://x.com/violence_ruin/status/1705173311918158261?s=20

ありがとうございます……!!!

続いて関元聡さん。関元さんはツイッターでは(いいのツイッターで)、犬飼さんと名乗っています。
https://x.com/skmt3104n/status/1705221871522975876?s=20

つまり、「沖縄を舞台にした某朝ドラを見ていた」他の作者も、にいにを使う可能性があるということか……。
もう一度、前回の推理を復習してみましょう。
最終的にぼくは、「あの星が見えているか」と「月面ジャンプ」で迷った末に、エンタメ要素などを決め手として、「月面ジャンプ」を選んだのでした。
これは「にいに問題」を除外しても成立します。
さらに、実は前回は書いてないのですがもうひとつ、関元さんが「あの星が見えているか」の作者ではないはずだと考える理由があるのです。
みなさん、「あの星が見えているか」の語り手である主人公の「私」の性別は男性だと思いましたか? 女性だと思いました? それ以外?
「あの星が見えているか」では私の性別を決定づけるような説明はありません。唯一、それに近いところがあるだけです。

あんたは見たいモノしか見ないよね、と捨て台詞を残して彼は去っていった。ふたりで探した部屋の決め手となった眺望を、ひとりでのぞみながら、霞みがかった淡路島の島影の奥に、いったい何を間違えたのかをまさぐってみたが、まるで分からない。

「あの星が見えているか」より

パートナーが「彼」であるとは示されていますが、私は男性かもしれませんし、女性かもしれませんし、どちらとも言えないのかもしれません。
読者に性別を委ねる書き方としては、高度なものだと思います。
ただ、もしもこの作品の作者が女性であって、ペンネームが女性を思わせるものであるなら、読者は「私」を女性だと思いこんでしまうかもしれない。これは作者が男性だと「私」を男性だと思いこんで読む場合と同じくらい、高い確率で起こることです。
ですので、そういう可能性もある。

ペンネームが聡であり、かつ、これまでの作品で読者に性別を委ねる書き方を関元さんはしていないと思うので、「あの星が見えているか」を書いたのは関元さんではないと判断したのでした。

「月面ジャンプ」、文章がいつもの関元さんとは少し違う感じもあるんですが、関元さんは以前、「手をつないで下りていく」でブラックホールの一人称を書いたことがあったので、今回もそういうチャレンジなのかなと思ったりもします。
「手をつないで下りていく」
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15146864

今回の一人称もホニャララなので、文章がいつもと違うのは当然の結果なのでしょう。
ということで関元さんがお書きになったのは「月面ジャンプ」のはずなのです。
https://virtualgorillaplus.com/stories/getumenjanpu/

関元さんは東京文フリで発売されるマルカフェ文藝社「棕櫚shuro10」にも参加されています。ぜひお買い求めください。
https://x.com/malucafe_bungei/status/1704148516161888275?s=20

ということで、前置きは終わって本編です。

本日は牧野大寧(だいねい)さんが書いたのはどの作品なのかを当てます。

牧野大寧さんも多くの作品を発表されています。
ゲンロンSF講座での提出作品。
https://school.genron.co.jp/works/sf/2022/students/maquiwo/
牧野さんのnoteにも、いくつか作品があります。
https://note.com/maquiwo
さらにSF創作創作講座を勝手に応援するラジオ「ダールグレンラジオ」も!
https://open.spotify.com/episode/11e37OaDvGN6eGDLkSlBZi?si=PRfZr4kPTGWbIbB2g0NdkA

さて、では牧野さんがお書きになった作品はどれなのか。

講座に提出された全作品に目を通した結果、いくつかの特徴が明らかになりました。
時をテーマにした作品や、メビウスの輪のような作品が面白かった。
「ドパルデューのパズル」
https://school.genron.co.jp/works/sf/2022/students/maquiwo/6698/
「夢で見た龍を殺せ」
https://school.genron.co.jp/works/sf/2022/students/maquiwo/6570/

最終実作が一番好きでした。
「ヤグーの首飾り」
https://school.genron.co.jp/works/sf/2022/students/maquiwo/6999/

かぐやSFで時をテーマにした作品は、「マジック・ボール」なのですが、これは文章を読むと違うのがわかる。
もはや推理ではないですが、読み味が違うので、除外するしかない。
文章だけで判断するなら、「月はさまよう銀の小石」だなと思う。しかし、まだ確定はできない。文章は急に劇的に変わることもある。

で、講座に提出された作品をずーっと、今週末は読んでいたんですが、気づきました。
牧野さんの作品に共通するのは、絵的に派手なものだということに。
最初の作品は砂漠が海になるというお話でした。豪華客船と宇宙空間が舞台となるお話もありました。ルービックキューブの世界大会のお話。ジャズフェスティバルでバンドが空中に浮かんだお話。二〇五一階のビルに登っていく部隊のお話。
どれも絵的に映えるんですよね。
たぶん、想像の質というか、方向性というか、そういうのが映像的なんだと思うんです。
そう考えると、「月はさまよう銀の小石」はぴたっと合います。
マウンド上に立つ、ネアンデルタール人。麻酔から目覚めて顔が変わっていた息子。月に向かってパワーアシストの力を借りてボールを投げる息子。
どれも映像的に、ぴかぴか光っている想像だなと思うのです。

ただ、ひとつだけ引っかかるのは、「イミテーション・アニマルズ」のラストです。
https://school.genron.co.jp/works/sf/2022/students/maquiwo/5580/

ここは、「これから始まるぞ」というところでスパっと切っています。
このラストは、非常に「あの星が見えているか」に通ずるものがある。

ただ、提出作品を読んだ限りでは、性別を読者に委ねる書き方はされていないようです。
ということで、やはり「あの星が見えているか」の作者ではない可能性が高い。

ですので、牧野大寧さんがお書きになったのは「月はさまよう銀の小石」のはずです。
https://virtualgorillaplus.com/stories/tukihasamayouginnokoisi/

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