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第七期ゲンロンSF新人賞梗概の感想

こんにちは、ゲンロンSF創作講座第六期受講生の牧野です。今年もゲンロンSF新人賞の時期になり、講座サイトに梗概が投稿されました。梗概に感想がほしいと思ってる方もいると思うので、ほんの少しだけ役に立てるように感想を書きます。ほんとにほんのすこしだけです。私は小説は本体がおもしろければそれでいいと思ってるので、梗概でぱっとしなくても小説さえおもしろさが炸裂していたらそれでいいと思います。なので、この感想は気休め程度に見てください。小説がおもしろければそれでいいです。 去年の受講

    • 梗概「ウェルカム・バック・マイチャネル」

      兼業作家の高瀬まきちゃるは英語を使う職場でプログラマーとしても働いている。なのに英語の勉強はさっぱりしないので全然喋れるようにならない。コミュニケーションミスによって、作ったアプリにバグを出しまくったのでしぶしぶ英語を勉強することになり、英語教育系のYoutuberを見ることにする。まきちゃるはMegumi English Channelのメグミさんの見た目が好きになって動画を見まくり、徐々に英語が上達していった。かのように思えたのだが、Megumi English Chan

      • 第三回かぐやSFコンテストで読者賞をもらった

        小説を書こうとするとき、私の頭の中にまずまっさきに思い浮かぶのは「クマと戦う話」である(ときとしてクマの部分がゴリラになることもある)。クマは体が大きく全てをなぎ倒す力が恐ろしい(ゴリラは知性と筋肉が一つの身体の中に同居していて美しい)。クマは物語の登場人物を戦わせるにはふさわしい存在だ。(ちなみにこの場合クマは言葉を話さないが、ゴリラだったら言葉を話す。なぜならばそのほうが恐ろしい気がするからだ)。 小説のアイディアを出す段階では、まずこの「クマと戦う話」がどうにか書けない

        • SF創作講座7期第3回梗概「描かれた救世主」

          1938年イギリス ロンドンに住む騙し絵画家テオ・ブレックマンは一時はもてはやされたこともあったが、今では世間は騙し絵への興味を失い、今日食べる食事にもありつけない落ちぶれた生活を送っていた。 テオはこれまでの人生でいくつもの失敗をしながら、騙し絵を描く上で絶対にやってはいけないことを三つ学んだ。 ・影の方向を間違えてはいけない。(道端で老人から馬鹿にされて学んだ) ・そこにあるべきものを書き忘れてはいけない。(そのせいで絵の報酬を受け取れなかった) ・絵の中にサインをしては

        第七期ゲンロンSF新人賞梗概の感想

          【フラッシュフィクション】「職場のルール」

          業務時間中にやってはいけないことは三つある。一つ、タバコを吸うこと。二つ、インターネットでエロサイトを見ること。三つ、高橋祐介と話すこと。 破った者は次の査定で減給される。 タバコを吸ってはいけないのには合理的な理由がある。タバコの臭いは試験に差し障る。エロサイトを見てはいけないことにも合理的な理由がある。興奮したときに出るドーパミンが試験に差し障る。 私たちの職場ではありとあらゆる試験を実施しており(主には食品の安全だとか、おもちゃに使われる化学物質を子供が舐めても大丈夫か

          【フラッシュフィクション】「職場のルール」

          【フラッシュフィクション】「増えた10ドル札」

          ホテルの部屋のなか、悪党三人組がスーツケースをいくつも開け、なかに入っている拳銃が本物かどうかを確認していた。これからマフィアに高値で売りつける大事な品物だ。 部屋をノックする音がしてボーイの声が聞こえる。 「お部屋の料金の返金にうかがいました」 悪党のボスはあごで手下に指示をして急いで拳銃をしまわせた。 「入れ」と言ってボスはボーイを部屋に入れた。 「申し訳ありません。お部屋の料金を間違えておりました。300ドルを事前に払っていただいていたのですが、本来はこの部屋は270ド

          【フラッシュフィクション】「増えた10ドル札」

          SF創作講座第7期第1回提出梗概感想

          こんにちは、まきをです。最近お腹まわりが気になり出したので炭水化物と甘いものを控えるようにしています。いわゆるダイエットですね。英語のDiet(ダイエット)には食事制限という意味のほかに国会という意味があります。国立国会図書館はNational Diet Libraryです。なんだか、国によって食事制限されてそうな味気ない雰囲気が出てしまいますよね。ぜひとも図書館には肥えていてもらいたいものです。 さて、SF創作講座に提出された梗概への感想を書きたいと思います。 第1回の課

          SF創作講座第7期第1回提出梗概感想

          裏SF創作講座への誘い

          おお、貴いお方よ。遠いところからわざわざお越しいただきました。このあたりには人はほとんど来ませぬゆえ、あちらこちらに珍奇な本が散らかっておりますがご容赦いただきたい。しかし決して本の中身を見てはなりませぬ。世界中のひねくれ者たちが書いた複雑怪奇な書物ばかりを集めておりますので、並の精神の持ち主では吐き気を催すものばかり。ささ、本のことは忘れてこちらの暖炉のそばへお座りください。 さて、今宵あなた様をお呼びたてしたのは他でもありません、裏SF創作講座への招待のためなのでござい

          裏SF創作講座への誘い

          2023年3月16日の虚弱日記

          道を歩いていると、歩きスマホをしている人が向こうからやってきた。僕はこう思った。おいお前、お前の歩きスマホは「正当化」されているのか。どうせ「正当化」されていない歩きスマホだろう。見れば分かる。それは「正当化」されていない歩きスマホなのだからただちにやめたまえ。その行為はお前にも、僕にも危険がある。 しかし僕はそれを音がついた言葉(=音声)にはしなかった。僕の思いがお前に伝わることはない。 僕もお前も、実のところ茶番的世界観の中を生きている。はたから見れば茶番のような行為に毎

          2023年3月16日の虚弱日記

          2023年3月15日の仮日記

          今日の朝のことだけども、きまぐれで図書港に行ってみたら木のラックみたいなものがたくさんならんでいて、中をのぞいてみるとぎっしり本が詰まってた。 全部のラックがぎっしりだ。 書漁師の人が綴船からどんどん本を降ろして、でっかい箱に投げ込んで、そうすると円盤がついた機械みたいなのが本をどんどん送り出してラックの中に詰め込んでいく。おもしろくて私は熱心に見た。 あんまり人に話しかけたりはしないけど、書漁師の人と目があったので「おはようございます」とあいさつをした。そしたら書漁師の人が

          2023年3月15日の仮日記

          3月14日の嘘日記

          夜はくしゃみが出る。 寒いからではない。 暗闇になっている空間を見ると鼻がむずむずするのだ。 私なりのイメージでは、暗闇の質量(マス)が私の鼻腔と共鳴して(なぜ共鳴するかというとそれは暗闇というのは波動が伝わりやすいからなのだが)私の身体全体を暗闇にしてしまい、私の身体はそれを拒絶するためにくしゃみとして身体から暗闇を排出するのだ。 身体の中に決して暗闇を飼ってはならない。飼うならば太陽だ。太陽を飼えば、全てが燃えさかり輝くだろう。全てというのは、君が考えているそれやこれ、あ

          3月14日の嘘日記

          【サイバーパンク】ChatGPTに脅迫されて美術品泥棒をしてみた【ロールプレイ】

          TwitterでChatGPTのおもしろやり取りを見て自分もしてみたくなったので遊んでみました。これはあくまでロールプレイであり、実際の犯罪行為には関係ありません。 安楽椅子探偵ならぬ安楽椅子泥棒として活動しているロボットの役をChatGPTにお願いし、私はそのロボットに脅迫されて実行役をする高瀬という人物を演じます。 プロンプトはこちらの記事を参考にしました。 ChatGPTでロールプレイをするためのプロンプト以下の条件に従って私とあなたのやりとりでロールプレイをします。

          【サイバーパンク】ChatGPTに脅迫されて美術品泥棒をしてみた【ロールプレイ】

          SF創作講座第6期第7回「自分の人生をSFにしてください」梗概感想

          以下七名の梗概の感想を書きます。私のスタンスとしては梗概がどうであれ実作がおもしろければなんでもよいと思います。実作の完成に責任を負っていない他人からの意見として、参考程度にお読みください。ストーリーを追うのが苦手なので勝手に要約も付けてます。 中川 朝子「内山」 水住 臨「砕言」 織名あまね「惑星チンチロ、3分18秒」 宿禰「ひかげのひと」 柊 悠里「最小粒度が最高に美しい!」 継名 うつみ「Back to work, Girls!」 夕方 慄「ポタラカへとんでゆく」

          SF創作講座第6期第7回「自分の人生をSFにしてください」梗概感想

          SF創作講座課題考察 第6期第6回 「何か(誰か)を葬る/弔う/喪に服す物語を書いてください」

          課題ページ https://school.genron.co.jp/works/sf/2022/subjects/6/   「何か(誰か)を葬る/弔う/喪に服す物語を書いてください」という課題について大きく「葬儀の話」ととらえて考察する。  まずこの課題を書くにあたって気をつけたいのは、ストーリーに必要だからといって安直に登場人物を殺すことになっていないかどうかである。人の死や人が悲しむことを感動ポルノ的に消費していないかどうか慎重になったほうがよい。  葬儀というのは死ん

          SF創作講座課題考察 第6期第6回 「何か(誰か)を葬る/弔う/喪に服す物語を書いてください」

          SF創作講座ではじめて梗概が選ばれたよ

          第五回課題提出の一週間前の話です。SF創作講座の実作提出はふだんは2万字目安ですが、最終実作は4万8千字上限(になるはず)だと聞きました。わたしはそんなスケールの話を書いたことがなかったので、最終実作でいきなり書けるわけがないと思いました。心苦しいですが目安と関係なくふだんから4万8千字上限で書こうとわたしは思いたったのです。次の実作では平易で読みやすい文章で人間ドラマを書くという課題を己に課し、SF的オリジナリティは考えずに人間が成長していく大河ドラマ的な話を書くことにしま

          SF創作講座ではじめて梗概が選ばれたよ

          SF創作講座課題考察 第6期第5回「生まれ育った場所を離れる話」

          「生まれ育った場所を離れる」というテーマについて物語を書くにあたって、「離れること」に主題を置く場合の考察をする。 「離れる」は他のいろいろな動詞に置き換えることができる。ものとものとが離れる方法には色々あるからだ。千切れる、逃げる、押し出される、他のものに引っ張られる、追いやられる、弾き飛ばされる、くっついていたものが消滅する。 己かあるいは他者からの力学があって、もといた場所から離れる、あるいは離れざるをえなくなる。離れるまでは一筋縄ではいかない。なぜなら、なにかの要因に

          SF創作講座課題考察 第6期第5回「生まれ育った場所を離れる話」