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僕は『絶対倒産する』と言われたOWNDAYSの社長になった。

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売上20億,負債14億,赤字2億『絶対倒産する』と言われ、メガネ業界内ではただの質の悪い安売りチェーンと馬鹿にされ続けていたOWNDAYSが10年間で奇跡のV字回復を遂げて、売上…
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2017年9月の記事一覧

第1話 1.4tの砂利を積んだ2tトラックのハンドルを握る。

2008年1月

東京では新幹線のぞみの喫煙車両廃止に続いて、タクシーでも全国で全面禁煙が実施され、世の愛煙家達には一段と肩身の狭い時代に入りつつあった。
僕は自慢じゃ無いが、超が付く程のヘビースモーカー。
そんな世間の風潮など、どこ吹く風とばかりに、ポケットの数だけタバコを洋服に詰め込んで、禁煙ブームなど「我関せず」といった態度で、途切れることなくあちこちで狼煙のような煙をあげながら、この日も毎

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第2話 初出社

2008年3月1日

東京都内では、一ヶ月前の大雪が嘘のように晴れ渡り、気温はすでに20℃を突破し、季節外れの陽気に公園の陽だまりには、朝から猫の親子が昼寝をし、その鼻先を身軽な雀がピョンピョンと飛び跳ねて行く。そんな穏やかな雰囲気とは対照的に、オンデーズの本社オフィスは、朝からかなり白けた、なんとも言えない、どんよりとした重たい空気感が全てを飲み込むかのように支配していた。
池袋の南口を出て明治

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第3話 荒れる海で眼鏡を回せ。

2008年3月

初出社から三週間後。

本社のほど近くにある回転すし店で、僕は、長尾貴之と、近藤大介の三人で、少し遅い昼食をとりながら話していた。

長尾と近藤は、僕が二十歳の時に埼玉県の片田舎で、小さな喫茶店を始めた時から一緒に仕事をしてきた創業メンバーで、買収以前に経営していたデザイン会社の残務を整理してから、オンデーズに合流してきていた。

この二人の他にも、十名程のメンバーを一緒にオンデ

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第4話  最初の月末「社長、1,000万円足りません」

2008年3月末日

奥野さんは、ウォーミングアップする間もなく、いきなり月末の資金繰りとの格闘の場に放り込まれていた。

「どうすんだよこれ・・いきなり一千万円以上足りないじゃないか。今からこの金を用意するのなんか、どう考えても無理だろ・・」

社員の帰った薄暗いオフィス。引き継いだ稚拙な資金繰り表をシュレッダーに投げ込みながら、奥野さんは自分のデスクでため息まじりに呟いた。

話を少し前に戻そ

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