溶けて消えてしまうその前に
「田舎帰ってくると、どこか心がさみしくなる瞬間があるの。前まではあった個人商店とか、打ち捨てられた看板や、どこまでも広がる空き地。この空間が、まるで世界に置いて行かれてしまったかのように、私には思える」
助手席に座る彼女がそう呟いて、私はちらりと横目でさみし気な世界を眺めた。確かに、随分といろいろなものがなくなってしまった。言われて初めてそう意識させられたかのように、一瞬だけ、見慣れた景色がどことなく不安定になるような気分を覚える。
「言われてみたら、結構変わったかもね」