マガジンのカバー画像

シュウ☆クリームESSAY

10
シュウとドレミのふつうの日常
運営しているクリエイター

記事一覧

蕎麦が笑んでます

蕎麦が笑んでます

農家の丹精する田や畑の風景は、自然の森や空よりも尚美しく散歩の目を楽しませてくれる。

9月の初め頃に一面真っ白に咲いた蕎麦の花。

花が真っ白なのはほんの1週間ほどのこと。

すぐに黄土色に落ち着き、2週間もすると実をつけ始める。

10月に入るとどの畑も赤茶色…絵具の顔料名で言うならバーントシェンナ(焼きシエナ土)に染まる。

近づいてみると実がはじけている。実のこんな様子を「笑んでいる」と言

もっとみる
母とシソの実

母とシソの実

「朝焼けしないねー。」

カメラを構えながら90才の母が言う。

眼下に広がる雲海に見え隠れする甲府盆地にはまだ灯火が残っている。9月も終わりのある朝,ボクと母は八ヶ岳南麓の観音平で富士にカメラのピンを置きながら夜明けを待っていた。明るくなり始めた空には雲がなく,どうやらフォトジェニックな朝焼けは期待できそうにない。

前夜のことだ。ボクと母は原村の自宅でちらし寿司を作っていた。妻のドレミが知人に

もっとみる
小澤さんのちょっとイイ話

小澤さんのちょっとイイ話

妻のドレミはボストンまで追っかけするほどの小澤征爾ファンであるが,昨春アイターンしてすぐに諏訪響こと諏訪交響楽団に入団したのは全く偶然のことである。諏訪響は小澤征爾さんと縁が深い。

諏訪響の会長武井勇二氏は小澤さんより3つ年下で同じ成城学園中学に学んだ。それだけの縁を頼りに共通の恩師である国文学者の今井信雄氏を通じて1964年に小澤さんをなんと諏訪響に招へいしたのである。小澤さんは当時ニューヨー

もっとみる
20年目の加筆

20年目の加筆

ボクにもかつて絵の弟子がひとりいた。母方の伯父である。特攻隊員だったが出撃寸前に敗戦となり奇跡的に生き残った。頑固でわがままだったため,親戚内の評判はすこぶる悪く,母や伯母とも喧嘩ばかりしていた。

それがなぜかドレミのことを気に入り,いつも「ナオちゃん,ナオちゃん」と呼んではかわいがってくれた。だから
「シュウちゃん,オレに絵ば教えんね。」
と,頼まれたときに断れなかったのだ。

だが予想通り「

もっとみる
正しい温泉の楽しみ方

正しい温泉の楽しみ方

正しいシリーズ第三弾。「半夏抄」のコンテンツを再推敲しています。

2004年

仕事が秋の激務期間に入る前に予約を入れる。
条件は
(1)近くて鄙びていること
(2)団体が来ないこと
それを心の拠り所にひたすら仕事の嵐に耐える。

当日の朝はのんびりと出かける。地蔵の前の酒屋に立ち寄る。

お土産に蜂蜜を買う。

観光地などひやかす。

明るいうちにチェックインする。

心付けの千円は予め紙に包

もっとみる

FUN x4 Iritamago III

合唱団が山中湖で夏合宿の夜,スタッフとしての地位を利用して当時高校2年生だったドレミを湖畔のデートに誘い出すことに成功したボクは一晩中この歌を歌ってウカレポンチしてました。昔々そのまた昔のお話です。今回,演奏するにあたってリーダーの解釈では「バツイチで連れ子4人の彼女の手にまんまと堕ちた男」の歌だと言うことです。えー!?(笑)メインの5Dにマイクをつなぎ忘れたため,少々残念な音声でお届けします。

イリタマゴは止まらない

イリタマゴは止まらない

2018年の早春,愛犬タローを喪ったボクと妻のドレミは悲しみの淵に沈んでいた。ボクたちが生きていられたのはただただ仕事があったからだ。仕事の忙しさに追われて日々を淡々と暮らしていた。休みの日には廃人のように家に引きこもっていた。何をしていたかよく覚えていない。

ある日曜日の朝,呼び鈴の音に玄関の扉を開けるとイリさんが立っていた。家の前に停めた白いワゴン車にはY夫人も乗っている。事情が分からないま

もっとみる
正しいお花見の楽しみ方

正しいお花見の楽しみ方

正しいシリーズ第二弾。「半夏抄」のコンテンツを順次再推敲中です。

2004年

前夜,たとえ帰宅が11:30であろうとお弁当作りに励む。この際,交互に料理し,シートやカメラなどの準備を並行して進めて,遅くても2:00には寝るようにする。

開門(9:00)の30分前には駐車場に入る。

風への用心のために着ぶくれ,大荷物はきちんとまとめてダッシュに備える。

大木戸門は正門が駐車場より1分ほど早

もっとみる
正しいスリラーの踊り方

正しいスリラーの踊り方

拙サイト「半夏抄」のコンテンツを順次再推敲中です。

2010年

「マイコーが最高な・の・さ。」

サヤカが言うのである。昨秋MJの映画を見た帰りに興奮冷めやらぬまま教室に寄ったときのことであった。

「shuもだまされたと思って聞いてみなさいったら。」

逆である。年代から言って,ボクが彼女に教えるのが筋である。女子高生にマイケルジャクソンを薦められるとはおよそロック音楽に対するボクの興味の薄

もっとみる
一度も使わない回線料金を十数年払ってた。

一度も使わない回線料金を十数年払ってた。

2月頃、携帯大手のS社から一枚のハガキが届いた。「3Gのサービスが終了します」という内容だった。「あ、そう」とゴミ箱に入れようとしてふと気付いた。

なぜ、それをボクにわざわざ知らせるのだろう。

まさかと思ってよく見ると「電子フォトフレームが使えなくなる」という警告のハガキだった。

フォトフレーム?

しばらくピンと来なかったが思い出した。確かiPhoneが欲しくてN社からS社に乗り換えたとき

もっとみる