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子どもたちには経営思考を身につけてほしい。社会で生きる力をつけるための子育て

 5月24日、リンクスの中期経営計画の発表を終えた。外部の人も入場可能な会場には当日、約170名が足を運んでくれた。さらに懇親会にも約140名が参加してくれていた。

リンクスにとって中期経営計画の場は、リンクスを好きになってもらう場だ。たくさんの人にリンクスを好きになってもらいたい。そのためには情報開示・発信が大切だと考えた僕は、代表に就任した4年前から毎年、外部に開かれた中期経営計画発表会を開催してきた。

 最初の参加者は30人規模だったが、50人、100人と増えていき、今年は170名もの人が参加してくれるイベントになった。しかも、参加していた社員は10名ほどだったので、160名近くの人たちが社外から来てくれたことになる。

こんなにも多くの人が来てくれて、僕はただただ、うれしかった。

医療機関など介護事業を営むリンクスと親和性の高い業種だけでなく、不動産業界や金融業界に所属している人もいて、中期経営計画発表会は多様な業界の人が集まる場となった。そこでは、M&Aやコラボレーションやマッチングなど、新しい事業の芽が生まれている。

 発表では、過去・現在・未来のパートに分け、リンクスの実績や課題を公開する。こうしてありのままを公開することで、リンクスをより深く知ってもらい、新規顧客の獲得や一緒に働く仲間の採用につながればうれしい。だが、それだけではない。より長期的な視点で、次世代の経営者候補となる若者によい影響を与えたいとも考えて発表会を行っているのだ。  

 僕が行っている若者によい影響を与えるための取り組みは、もちろんほかにもある。今回はリンクスの代表として、そして一人の父親として取り組む、次世代の経営者を育てるための試みについて、話したいと思う。


子どもたちの視野を広げる取り組みに共感

 リンクスは、今年からNPO法人「ドリスカッ!」のメインスポンサーとなった。このプロジェクトは、子どもたちが夢を見ることを支援するものだ。僕自身、昨年開催された高校生向けのキャリアイベントに参加した。その時に素晴らしい取り組みだと感じたため、スポンサー就任を決断した。

 僕がなぜ、この取り組みを素晴らしいと思ったかを説明するために、少し僕自身の話をしたい。僕は、誰かに雇われて働くのが苦手だ。だから、もし過去に戻れるのであれば、高校生などできるだけ早いうちに起業したい。

一方で、僕がこれまで債務超過を脱したり数字を重視した仕組み化により利益を上げたりしてこれたのは、勉強に重きを置く学校で学べたからかもしれないとも思う。論理的思考力や思考のための語彙力を授けてくれたこの学校生活なしで起業して、果たしてうまくいったのだろうか。

特に僕の得意科目だった数学は、高校3年生で学ぶ数学III・数学Cにまで進むと、ただ公式を覚えて当てはめるだけでは解けなくなる。答えを出すよりも、習ってきたことを駆使して証明していくことが求められるのだ。この数学の証明を通じて培ったものが、僕のロジック思考の基盤となっている。だからこそ、高校時代に戻って起業すると考えた時にどれだけ今と差が出るのだろうと考えてしまう。

当時、医者を目指して学んでいたことが、経営者となった今、活きている。だから僕は言いたい。目の前のことに全力を注ぎ、その時その時にやりたいことに真摯に向き合うことが大切なのだと。

だが、まだ社会を十分知らない学生の目に映る世界は狭い。身近な大人以外からも話を聞き、世界を広げる機会を持つことが大切だ。だからこそ、子どもたちの夢や将来の選択肢を広げようとする「ドリスカッ!」を応援しようと決めたのだ。

いつか僕の言葉を思い出してくれたらうれしい

 「ドリスカッ!」では、地方にある学校で、情報源が友達や親のみとなるような地域で、積極的にキャリアイベントを開催している。今年も6つの高校でキャリアイベントの開催が予定されており、僕を含めた役員および管理者たちが講師として参加する予定だ。

 前回参加した際には、登壇者が一人ずつ2分ほど壇上から高校生に向けて話したのち、それぞれのブースに分かれ、集まった生徒たちと40分程度会話をした。

ブースで話す際、資料を用意している講師も多かったが、僕は、彼らに準備してきた話をするのではなく、彼らの話を聞きたいと思った。だから、僕は手ぶらで行った。生徒たちに自分のことを話してもらうには自己開示が必要だと考えた僕は、結婚生活で抱えた葛藤や過去の失敗について話した。

その上で質問をしてみると、彼らも自分のことを話してくれた。恋人のことを話してくれた生徒には「自分を丸ごと肯定してくれる人と一緒にいるといいよ」と伝えた。バイトの話をしてくれた生徒もいた。

僕は居酒屋と家庭教師のアルバイトを経験した。時間労働という感覚だった当時は、目の前の仕事に真面目に取り組みつつも、早く時間が過ぎて欲しいと思っていた。しかし今は、学びや成長を意識して仕事に向き合っている。「今のバイトではどんな成長ができていると思う?」と問いかけつつ、対話を深めていった。昔の僕にも問いかけてあげたい(笑)

 その場ですぐに何かに気づいてくれるのもうれしいが、高校生だとどうしても自分ゴトとして考えるのが難しいこともある。何年か経ってからでもいいから、「そういえばあの時こんなこと聞いたな」と思い出してくれればいいなと思う。

 僕自身、高校生の時にもっと経営者と話したかったという想いがある。僕が中学生の頃、父はリンクスの前身であるイン・リンクを起業していたが、もっといろいろな経営者の話を聞きたかった。

 僕もそうだが、僕の父も経営者となった頃から発する言葉が変わってきた。たとえば、当時医者を志していた僕に「医者になるのもいいけど、雇ってみるのもいいんじゃない?」と言うようになった。

プレイヤーではなく、雇用を生み出すという感覚は、経営者だからこそ生まれてくるものであるように思う。

子どもに教えている論理的思考と経営視点

 ところで、僕は10歳、7歳、5歳の子どもを育てる父でもある。僕の子どもたちも、これから成長して次世代を担う若者となっていく。経営者の道を選ぶこともあるかもしれない。だからこそ僕は、彼らとの会話においても、経営視点や論理的思考力を身につけられるような会話を心がけている。

彼らがどのような考えで友達と会話したり先生に質問したりしているのかを尋ねるようにしている。話してくれることに対して、なんでそう思ったの?と質問を重ねることで、深く思考してもらうのだ。

 子どもの行いが気になる時も、「それはダメだ」と伝えるのではなく、本人が考えた上で行動を変えるかどうかを判断できるように伝えている。

たとえば、長男は忘れ物が多い。楽しいことに没頭してしまうと、持ち物などをすぐ忘れてしまう。それでもなんとかなっているので、彼自身はあまり気にしていないようだ。これも彼の特性なので、「忘れ物なんかダメだ」と否定することはせず、ありのままを尊重している。

一方で、忘れ物をする習慣を持ったまま成長すると何が起きるのかはきちんと伝える。約束事を守れないと、大人になっても仕事ができないかもしれないし、仕事ができたとしても稼げないかもしれない。こうした自分の行動が引き起こす可能性を伝える。単純に忘れ物をダメだと考えるのではなく、忘れ物をしないことの目的を考えた上で行動してほしいからだ。

 一方的にダメだと否定しないようにしている僕だが、子どもたちに禁止していることもある。むやみやたらにYouTubeやTikTokなどの動画を見ることだ。まだ5歳の長女には何も言っていないが、長男や次男に対しては、見て何かを考えることのない、ただ面白い動画を見ることはしないようにと伝えている。

こう聞くと厳しく思う人もいるかもしれないが、子どもが好きそうなコンテンツをすべて禁じているわけではない。一緒にYouTuberの動画を見ることもあるし、アニメや漫画も勧めている。僕自身もアニメや漫画から多くのものを得たし、特に漫画は、文字を読む力とイメージを働かせる力の両方を強化できるので、たくさん触れてほしいと思っている。

 「あれがしたい」「これがほしい」という素朴な欲求を伝えてくることも多い。その際には、消費者としてモノやサービスを受け取る他に、作る側の視点で考えることも提案している。欲求を形にするのが経営であり、欲求を感じた時は「これどうやったらつくれるの?」と、発想のチャンスでもあるからだ。

もちろん、成長途中ゆえにまだ理解していないことも多いが、どんなものでも必ず作る人がいることを話したり、作る側だったらどんな仕事をやってみたいかを問いかけたりすると、子どもたちなりに考えた面白い発想が返ってくることもある。そして少しずつ、回答のレベルも上がっていく。この子どもたちとのやりとりのすべてが、とても楽しい。

特に、今5歳の末っ子の成長には目を見張るものがある。僕ら夫婦の問いかけの仕方も子育てを通じてブラッシュアップされてきたからか、兄たちと両親のやり取りも耳にしているからか、吸収力が凄まじい。何かを話す時は語彙はまだまだ子どもっぽいものの「〇〇したい、〇〇だから」と必ず理由を言うし、5歳でこんな風になるのかと驚いているほどだ。

行動指針が作る豊かな人間関係

 経営的な視点や論理的思考を身につけてもらうことのほかに、僕が大切にしているのが、リンクスの行動指針にも入っている「承認」だ。

小学生の頃、漢字をひたすら書き写す宿題があったのを覚えているだろうか。あの宿題は今もあり、僕の子どもたちもよく取り組んでいる。

その時に子どもからよく上がるのが「めんどくさい」という不満だ。この言葉が出たら「そんなこと言っても仕方ないだろう」、「いいからやりなさい」と言う前に、まず「めんどくさいね」と子どもの感情を認める。すると、子どもは「めんどくさいと思っていいんだ」という肯定感を得ることができる。

そのあとで、何のためにこの宿題があるのか、取り組む意義を一緒に考える。やる意味をわかった上で取り組んだ方が、子どもも前向きになるし、やる気を持ってくれるからだ。

 相手を承認したり理由や意味を意識しつつ深く対話することは、仕事では当たり前にできている人が多いと思う。家でも同じように対話することができれば、家族とより豊かな関係性が築けるのではないだろうか。

リンクスの行動指針は、僕が家族との関わりの中で学んだことから作られている。だからこそ、家庭に持ち帰れるはずだし、家庭に持ち帰ってほしいと考えている。

そして、リンクスの事業を拡大することで、行動指針に触れる人が増え、家族や周囲の人と豊かな関係性を築く人が増えるとうれしいし、そのために僕は、これからも経営に力を注ぎたい。


▼僕の自己紹介noteです。興味をお持ちいただいた方は、読んでいただけるとうれしいです。

こちらはリンクスのヒストリーブックとリクルートサイトです。よかったらこちらも見てくださいね。


書き手 えなりかんな
聞き手・編集 サオリス・ユーフラテス


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