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#短編小説
雨宿り(ちくま800字文学賞応募作品)
「また雨が降ってきたなぁ」
僕は、朝に雨が降っていないからと小学校に傘を持って行かなかった自分を恨んだ。慌てて学校近くのタバコ屋の軒先に飛び込んだ。雨は凌げたが、雨脚は強くなる一方で、どうして帰ろうか思案していた。
そこに、スーツを着た男が鞄を傘代わりにしながら、軒先にやってきた。男も朝の天気に騙されたのだろうか? そう思うと僕は勝手にシンパシーを感じずにはいられなかった。
「どけよ、タ
『若者のすべて』が聞こえる
”夏はあっという間に過ぎ去っていく。”
俺は部屋の掃除をしていて、その一節から始まる高校時代の日記を見つけた。掃除しなきゃ、でも日記も気になるし……。結局、1日分だけということで日記を読み返すことにした。それにしても、クサい文体だ。そういえば、あの頃俺は小説家を目指してたんだっけ。新人賞には箸にも棒にも掛からず、社会人になる前に夢をあきらめたんだけども。
”日が暮れていくのも早いし、だんだ