陰毛の妖精
大学時代のある日、僕は友人の家で飲んでいた。三時間ほど飲んだあと、話すことも特になかったのか各々がケータイを見たり、テレビを見たりしていた。僕はその時漫画を読んでいて、トイレを借りた。
戻ってくると、漫画の隙間に陰毛がすっと栞のように挟まっていた。
な ん で ?
僕はまだトイレから戻って漫画には触っていない。もちろんトイレに立つ前も、人の家で自分の局部を触ることなどない。けれど、漫画の隙間には収まり良く陰毛が居座っていた。
誰がこんなことをするのだ!と怒る僕に友人が言った。
「陰毛の妖精だよ。」
・・・
友人曰く、僕がトイレに言っている間に、ティンカーベルのような妖精が、自分の存在に気がついて欲しくて陰毛を置いていくのだという。
思えば昔から不思議な場所に陰毛を見つけることがある。例えば僕は本棚の上で見つけたことがある。その瞬間「ん?」と違和感は残るもののまあいいかと特に気にもとめていなかった。だが、あれは全部陰毛の妖精の仕業だったのだ!!
妙に納得してしまった僕らは陰毛の妖精を見つけるたびに「ちゃんと気がついてるから。」と小声で言うことを約束した。
あの部屋にいた彼らはまだちゃんと言ってくれているだろうか。
僕は今日、久しぶりに淫毛の妖精のいたずらとドアノブで出会った。そして「ちゃんと気がついているよ。」と小声で言った。ドアノブに話しかける自分が鏡ごしに見えた。今後この妙な約束をやめようか迷っている。
おわり。