前田将多

カウボーイ見習い、自称コラムニスト、スナワチ代表 http://monthly-sho…

前田将多

カウボーイ見習い、自称コラムニスト、スナワチ代表 http://monthly-shota.hatenablog.com/ 著書: 『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』(毎日新聞出版) 『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』(旅と思索社)

マガジン

  • スナワチのレザーコラム

    レザーストア〈スナワチ〉のオウナーが不定期で書く、レザーにまつわるあれこれのコラムです。

  • ザ ブック オブ マッチズ

    長編小説。ブレット・マクナマスは、15年前に父親が失踪して以来、モンタナ州のBM牧場をひとりで切り盛りしている。青春らしいたのしみも経験せず、牛糞にまみれて働かざるを得なかった人生に失望し、消えた父親に怒りを抱える。ある日、父親の旧友から父親のものだという古いジャケットを返され、そのポケットからマッチが出てきたことから、ブレットは父親を捜してみようと思い立つ。

  • 僕たちのフィルダースチョイス

    長編小説。 高校の野球部から20年の付き合いである田辺(ジュン)、宇賀神(マガジン)、権藤(ゴンドーフ)、藤原(クゲ)という男たち四人は、中年になりそれぞれ仕事と家庭を持ち、各々の悩みを抱いて生きている。 当時四人が好きだった早希子は東京に出て活躍し、いまはシングルマザーとなっているという。彼女のひとり息子であり、コミュニケーションに問題のある塁が、ジュンが塾長を務める塾に入ってきた。 塁をなんとか一人前の男にしようと、平凡な男たちが立ち上がり、少ない得意分野を活かして奮闘する。

  • カウボーイの独り言

    カナダの日本人カウボーイ ジェイク糸川監修、前田将多著のコラム集『カウボーイの独り言』。カウボーイのシンプルな考え方、まっすぐな働き方を、日本人にわかりやすく伝えるコラムを不定期で綴ってまいります。 すぐに役立つ話はありませんが、心のどこかに残しておくと、いつか困ったときや弱ったときに、カウボーイが手を差し伸べてくれるかもしれません。

  • 『ロデオ・サマー』

    「世界で最も危険なスポーツ」ブルライディングに、テキサスで挑戦する若者を追ったルポ。コーヒー1杯分の「旅費」で旅に同道ください。

最近の記事

スナワチPOP-UPストア スピンオフ!

スナワチが単独でPOP-UPストアをはじめたのは2016年ですから、もう8年前になります。 その後仲間たちが増えまして、最近は毎年1回、フナナカ洋装店、NIMUDE、草々、TERAS、konoteといっしょに開催してきました。 刺子・襤褸のTEARASさんなんか、この度、表参道の「ハラカド」に店を出すことになりましたからね。すごい。おめでとうございます。 さて、我々は我々で、「スピンオフ」として、身軽にちょっくらやることにしました。 今回は、スナワチのほか、暮らしとう

    • 配信第15弾「僕たちは なんかいいこと きっとある」

      第15弾となります、ヒマナイヌスタジオからのトーク配信「僕たちはなんかいいこときっとある」を、2024年4月24日(水)夜8時から行ないます。 今回は、田中泰延(ひろのぶと株式会社)、上田豪(アートディレクター)、前田将多(株式会社スナワチ)のみで、特別ゲストは招かずにじっくり三人でお話しする予定です(準レギュラーのワタナベアニさんは来てくれると思います)。 2月に、そのワタナベアニさんと幡野広志さんご両人の著書発売記念の特番として「いい写真も、ダメな写真も、撮る人を写し

      • 「タイポグラフィTの発売です」

        レザー製品を売るというむつかしい仕事をしているスナワチ前田です。 ここ数年、ジョージくんTシャツとスナワチTシャツを春に発売してきましたが、つぎはどういうTシャツをつくろうかと考えたときに、私はコピーライターでもあるので「これだ!」と思いつきました。 私は常々「自分の胸に書いてある言葉には責任を持て」と思っています。 すなわち、「ハーバード大学を卒業していないのに”Harvard University”とプリントされたTシャツを着る」のはダメなのです。反則です。 企業ロゴな

        • ORIGINALバックルのベルト完成

          スナワチのオリジナル・ベルトバックルをつくりました。 これ、すごいんですよ。なんで今までなかったのかな、ワタシいいの考えたな、と個人的には自画自賛です。 バックルでベルトを留める方式はいくつもありますが、一般的にはピン(ツク棒)を穴に通すものが多いです。 カウボーイがするような大きなバックルは、裏面にギボシ(突起)があって、それを穴にひっかけます。 スナワチが考案したバックルは、こういうカウボーイバックルと一般的な尾錠を組み合わせたもので、非常にシンプルかつ美しいです。

        スナワチPOP-UPストア スピンオフ!

        マガジン

        • スナワチのレザーコラム
          38本
        • ザ ブック オブ マッチズ
          16本
        • 僕たちのフィルダースチョイス
          17本
        • カウボーイの独り言
          10本
          ¥500
        • 『ロデオ・サマー』
          4本

        記事

          【1名様限定】モニター特別価格のオファー

          ※この募集はすでに締め切られました。  すみません… Decibellはピッグレザーの可能性を追求するレザーブランドです。 細かい仕事を得意とする東京は墨田区のちいさな革工房です。 そのDecibellが、ここ数年で起用しはじめたとっておきの豚革が、こちらのホワイトWAX仕上げのレザー。 墨田区の革鞣し工場でタンニン鞣しされ、仕上げのワックスフィニッシュはDecibellの仕事仲間の仕上げ専門の工場が行なっています。 こんな感じです。 豚革は3点セットの毛孔がポツポツ

          【1名様限定】モニター特別価格のオファー

          POP-UP STOREスピンオフin原宿2024

          スナワチが2016年からつづけている、原宿はデザインフェスタギャラリーEASTでのPOP-UPストアは、2020年から共催の仲間たちが増え、2022年からは6ブランドで開催してきました。 この春は、スピンオフとして、うち3ブランドとちょっくら行ないます。 期間:2024年4月26(Fri)~29日(Mon) 時間:11PM - 7PM(最終日は撤収作業のため6PMまで) 場所:デザインフェスタギャラリーEAST    東京都渋谷区神宮前3丁目20−2    (JR原宿駅から

          POP-UP STOREスピンオフin原宿2024

          スナワチ×Gear Top®ライター先行販売

          素晴らしいモノをつくっているのにまだあんまり知られていないレザー製品を販売するという、むつかしい仕事をやっているスナワチです。 レザー製品ではありませんが、日本製のライターで「む! これはすごい」というものを見つけまして、私自身も愛用している品があります。 ライターはいくつも持っていますが、これを使いはじめてからこれ以外のオイルライターを使う気になれないのです。 Gear Top®といいます。 なにがすごいって、オイルの持ちが異様によい。 世界で一番有名なあのオイルライタ

          スナワチ×Gear Top®ライター先行販売

          ザ ブック オブ マッチズ 16/16

           キャメルを点けた。ここは丘の上で風が強いので、屈みこんで風を遮ってライターを使った。一本喫る間、無言でそこにいた。  またマスタングに乗り、イーサンは川沿いの道を戻るように走ってから、川から離れる小径を左折した。木々に囲まれたカーブの先は円環状になっていて、三軒の家屋が三角を描いて並んでいた。 「ピートに会おう」  オイルセブンのブラックフィート支部にいる男だ。三軒の頂点にあたる位置にある木造平屋の建物は赤いペンキで塗装され、よく目立った。  我々を迎えに出てきたピー

          ザ ブック オブ マッチズ 16/16

          ザ ブック オブ マッチズ 15/16

          「きみの父親は、わしの会社で、少なくともはじめのうちはよく働いてくれた。わしは、オイルセブンには州内のインディアンの各部族からスタッフが必要だったし、白人だって黒人だって歓迎だった。  さっきも言ったように、世界を救うことなどできないが、わしの目の届く範囲で、人種間の壁を越えて、自分たちの小さな世界をよりよくするのが目的だ。  ボイドは、クロウの居留地内の家屋に住んで、今日はわしとあっちへ、明日はひとりでそっちへと走り回ってよくやってくれた。インディアンのコミュニティにも溶

          ザ ブック オブ マッチズ 15/16

          ザ ブック オブ マッチズ 14/16

                    17  翌朝、九時にはオイルセブンに着いた。イーサンはすでに建物のフロントポーチに出て待っていた。今日は黒い襟シャツを着て、昨日と同じ黒いヴェストを身に着けていた。  前庭には昨日あった社用車の白いヴァンではなく、黒いフォード・マスタングが停まっている。  俺がダッジ・ラムから出ると、イーサンが階段を降りてきた。 「ブレット? ブレットだったな」  眉間に深いシワを寄せたまま、にこりともせず確認してきた。 「ブレット・マクナマスです」  俺はもう一度名乗

          ザ ブック オブ マッチズ 14/16

          ザ ブック オブ マッチズ 13/16

                    16  俺は身も心も満ち足りて、一週間も眠っていなかったかのように深く眠った。彼女には申し訳なかったくらい一瞬で眠りに落ち、次の瞬間に、新しい身体に生まれ変わったような朝を迎えた。  実際申し訳なかったのでアリソンのために朝メシをつくった。  トビーに電話をして、今日ともしかしたら明日も牧場に帰れないことを伝えた。彼は犬の世話もあるし、できることをやっておきますと言ってくれた。助かる。勝手にビール飲んでいいぞ。  つぎに、ロジャーにもらった連絡先の番号

          ザ ブック オブ マッチズ 13/16

          ザ ブック オブ マッチズ 12/16

           もう0時もとうに過ぎていた。これから牧場に戻るには遅いし、ここまで来たら明日はさっそくイーサンに会ってみたい。  町のほうへ戻りながら、そういえば、ダグといっしょにこのあたりのモーテルをあちこち当たったな、と思い出した。あのときの捜索がこんなところで役に立てばいいのだが。  コブウェブの前にさしかかった。すでに店の電灯は消えていた。そのまま通り過ぎようとすると、駐車場の端にアリソンが見えた。ちょうど赤いスポーツカーに乗ろうとしているところだった。  俺はそばまで寄って、ピ

          ザ ブック オブ マッチズ 12/16

          ザ ブック オブ マッチズ 11/16

                    15  言われた通りの場所にガスステーションはあった。  町の端にあるバーから、さらに町はずれといえる、静まり返った建物がぽつりぽつりとしかない道端に、煌々と光を放って存在した。コンビニが併設されていて、地元のひとたちがビールやスナックを買いに来るようなところだ。  ひと気はなく、もう閉店間際に見えるので、俺は急いで中へ入った。  ロジャーらしき人物を見つけて声をかけ、コブウェブから来た旨を話すと、果たしてロジャー本人だった。黒のポロシャツにはガスステ

          ザ ブック オブ マッチズ 11/16

          ザ ブック オブ マッチズ 10/16

           俺は汗をかいたシャツを着替え、マッチをジーンズのポケットに入れた。そして、廊下の壁にかけられた写真フレームの中からひとつをはずした。  生前の母親が、家族の写真をいくつも飾っていたうちのひとつだ。彼女は父親が消息を絶ってからも、写真や彼の残していったものには一切手を触れなかった。  写真フレームの裏のつまみを捻って、写真を取り出した。父親と母親がいっしょに写った、比較的新しいものだ。新しいと言っても十五年以上は経っているが、仕方ない。  写真の中の母親は微笑み、父親はすこし

          ザ ブック オブ マッチズ 10/16

          ザ ブック オブ マッチズ 9/16

                    12  ブランディングのアフターパーティを、ショップの中にテーブルを並べて行なった。ダグの妻、サンディが、リアンとベンの手を借りながら、料理を用意してくれた。  トビーはダグの助けを借りながら、今回去勢した大量のタマをバターとスパイスで煮た。これがカウボーイのごちそうなのだ。  一八〇頭の仔牛への焼き印を完了させたことへの労いの言葉をかけ、帰路の安全を祈り、俺はテーブルの間を縫うように歩き回って、「遠慮なく食べてくれ」と促した。  ドワイトがハットを手

          ザ ブック オブ マッチズ 9/16

          ザ ブック オブ マッチズ 8/16

           鉄柵を開いて牛たちを受け入れる準備をした。  ラウンドアップで集めるのは一八〇頭の仔牛だけではない。母牛もいっしょに来てしまうので三六〇頭の大群だ。仔牛だけをきれいに分けて歩かせられるわけではないから、そうなってしまう。  全員を鉄柵の中に入れてから、カウボーイたちが馬をつかって母牛だけを追い出す。馬と牛のバトルロイヤルのような錯綜した状態が生まれる。舞い上がる土埃と、指示を出し合うカウボーイたちの叫び声と、牛たちの咆哮が交錯する。  事態が収拾したあとも、追い出された母

          ザ ブック オブ マッチズ 8/16