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ザ ブック オブ マッチズ

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長編小説。ブレット・マクナマスは、15年前に父親が失踪して以来、モンタナ州のBM牧場をひとりで切り盛りしている。青春らしいたのしみも経験せず、牛糞にまみれて働かざるを得なかった人… もっと読む
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記事一覧

ザ ブック オブ マッチズ 16/16

 キャメルを点けた。ここは丘の上で風が強いので、屈みこんで風を遮ってライターを使った。一…

前田将多
3か月前
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ザ ブック オブ マッチズ 15/16

「きみの父親は、わしの会社で、少なくともはじめのうちはよく働いてくれた。わしは、オイルセ…

前田将多
3か月前
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ザ ブック オブ マッチズ 14/16

          17  翌朝、九時にはオイルセブンに着いた。イーサンはすでに建物のフ…

前田将多
3か月前
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ザ ブック オブ マッチズ 13/16

          16  俺は身も心も満ち足りて、一週間も眠っていなかったかのように深…

前田将多
3か月前
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ザ ブック オブ マッチズ 12/16

 もう0時もとうに過ぎていた。これから牧場に戻るには遅いし、ここまで来たら明日はさっそく…

前田将多
3か月前
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ザ ブック オブ マッチズ 11/16

          15  言われた通りの場所にガスステーションはあった。  町の端にあ…

前田将多
3か月前
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ザ ブック オブ マッチズ 10/16

 俺は汗をかいたシャツを着替え、マッチをジーンズのポケットに入れた。そして、廊下の壁にかけられた写真フレームの中からひとつをはずした。  生前の母親が、家族の写真をいくつも飾っていたうちのひとつだ。彼女は父親が消息を絶ってからも、写真や彼の残していったものには一切手を触れなかった。  写真フレームの裏のつまみを捻って、写真を取り出した。父親と母親がいっしょに写った、比較的新しいものだ。新しいと言っても十五年以上は経っているが、仕方ない。  写真の中の母親は微笑み、父親はすこし

ザ ブック オブ マッチズ 9/16

          12  ブランディングのアフターパーティを、ショップの中にテーブルを…

前田将多
3か月前
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ザ ブック オブ マッチズ 8/16

 鉄柵を開いて牛たちを受け入れる準備をした。  ラウンドアップで集めるのは一八〇頭の仔牛…

前田将多
3か月前
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ザブックオブマッチズ 7/16

          10  ドッジ・ラムに乗り込むと、俺はキャメルに火を点けた。  ドワ…

前田将多
3か月前
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ザ ブック オブ マッチズ 6/16

         9  即席の親子牛は、あれから三日間コラルに置いて干し草を食わせたら、…

前田将多
3か月前
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ザ ブック オブ マッチズ 5/16

          8  昼食時に友人のアーロンに電話をして、クーガーを引き取ってもらう…

前田将多
3か月前
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ザ ブック オブ マッチズ 4/16

          7  明け方に雨が降ったようで、空気に湿り気が感じられ、常に露出オー…

前田将多
3か月前
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ザ ブック オブ マッチズ 3/16

          5  俺たちふたりは、ダグのピックアップトラックであるフォード・レンジャーに乗って、暗闇を走った。このあたりは町からも離れているので、夜は海の底に沈んだかのような暗さと静けさだ。  ダグは実家からこちらに向かっているはずの妻、サンドラに置き手紙を残した。 〈俺はブレットと捜索に行く。保安官から連絡があるかもしれないから、きみはなるべくここにいてほしい。大丈夫だ。リアンは戻ってくる〉  リアンが逃げた先を推測するために、持ち去った荷物を点検した。家のキャ