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映画 観たよ

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わりと映画が好きです。というか映画館に行くのが好きです。忘備録的な感想集。
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#創作大賞2023

キラキラせつない『aftersun/アフターサン』

キラキラせつない『aftersun/アフターサン』

12年ほど前、友達Mと音信不通になりました。
共通の友人もみんなMと連絡が取れなくなりました。
1年後、「ゴハンしよ」と突然連絡が来ました。
ふたりで新宿伊勢丹の近くで北京ダックを食べました。

「なにしてたの?」
「小説書いて公募に出したりしてた」

そういうことじゃなくって。
でも、ま、話したくないこともあるだろうよと、北京ダックを頬張りながら極めて一般的な会話を続けていました。

そうしたら

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本物の子どもの方が怖いよ『M3GAN /ミーガン』

本物の子どもの方が怖いよ『M3GAN /ミーガン』

こんなこと言ってみたところで「所詮オカマの強がり」と思われそうなのであまり言わないようにしていますが、私はストレートに生まれていたとしても、子を持たない人生を選んだんじゃないか、と思っています。

私にとって「可愛い」とは

…であって、人間の子どもの順位はかなり低いんです。

遊んだり、一緒に時間を過ごすなら、気の利いた冗談のひとつも言える大人の方が断然に良いですし、人間の赤ちゃんを見て「癒され

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私はつまらない人間です『テリファー 終わらない惨劇』

私はつまらない人間です『テリファー 終わらない惨劇』

私はつまらない人間です。

『テリファー 終わらない惨劇』は「全米が吐いた!?失神者続出の超過激ホラー!ついに日本上陸!」というふれこみなんですけど、私は吐きません、吐けませんでした。

吐く人っていうのはあれですかね?
映画館で上映中に突然「オエッ!」なんですかね?
一度くらいそんなハメを外してお祭り騒ぎしてみたいものですが、 私はホラーを観て吐いた経験は一度もありません。
私が嘔吐する原因はつ

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今年2番目に良かったよ『ウーマン・トーキング 私たちの選択』

今年2番目に良かったよ『ウーマン・トーキング 私たちの選択』

この日は前述の『65/シックスティ・ファイブ』と、この映画とあと1本の合計3本を鑑賞しました。もう少し若いころは4〜5本いけたけど、今は3本が限界。お尻の弾力が落ちてきています。ゲイとして死活問題!

さて、なんてったってキャスティングが良いです。

美しきルーニー・マーラーに、Netflix『ザ・クラウン』で若き日のエリザベス女王を演じて注目されたクレア・フォイ、いかにも玄人受けなアイルランド人

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シガニー・ウィーバーを想う『65/シックスティ・ファイブ』

シガニー・ウィーバーを想う『65/シックスティ・ファイブ』

誕生月で飲み会が続いたり、久しぶりに海外旅行へ行ったり、そのために仕事を前倒しでやっつけたり、しばらくnoteも放ったらかしのままバタバタした日々を過ごしていたら、観たい映画も溜まっていました。

で、真っ先に観に行ったのがコレ。

「宇宙船が事故で謎の惑星に不時着しちゃってさあ大変!」というパターンのやつです。

大抵の場合、不時着後は凶暴な異星人との遭遇が待っているものですが、『65/シックス

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バカでもバカなりに楽しめる『TAR/ター』

バカでもバカなりに楽しめる『TAR/ター』

鑑賞前にあまり情報を入れたくないので、この映画も「ケイト・ブランシェット主演」「女性指揮者の話」「何やら緊張感」「ちょっと怖そう」程度の情報&イメージしかなく、『ブラック・スワン』みたいなサイコ・スリラーかなー、ってワクワクしていました。

世界的に著名な女性指揮者が、プレッシャーや緊張感で精神的におかしくなっていく話、なんだろうなーと。
こういう映画ってポップコーンとの相性いいよねー、みたいな。

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六本木ヒルズまでわざわざ『テリファー』

六本木ヒルズまでわざわざ『テリファー』

6月2日に、この映画が日本で公開されるんですね。
『全米が吐いた』『失神者続出』なんて煽り文句のスプラッター系ホラー映画なんですけど、実はこれはパート2で、2016年製作のパート1は日本未公開でした。

パートの2の公開に先立ちパート1が劇場公開されていたので、何万年ぶりに六本木ヒルズへ行ってまいりました。

ホラー映画、大好きなんです。
一番好きなのはゾンビ映画ですが、その想いはゾンビ映画を観た

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シックス・センスは遠くなりにけり『ノック 終末の訪問者』

シックス・センスは遠くなりにけり『ノック 終末の訪問者』

ネタバレします。
嫌な人は即退散を!

M.ナイト・シャマラン監督といえば『シックス・センス』です。

死者が見えて声が聴こえることに怯える子と、その子を救いたいと願う小児科医の話で、実はその小児科医も死者だった(本人も気づいていなかった)という結末の大どんでん返しなオチが話題に。「この監督、天才!」と世界中でもてはやされ、アカデミー賞なんかにもノミネートされました。

それから年に1、2度は『M

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好きですTOHOシネマズ『エスター ファースト・キル』

好きですTOHOシネマズ『エスター ファースト・キル』

ネタバレします。
嫌な人は即退散を!

加齢、および、そもそも記憶力が奇跡的に悪いタイプなので、パート1の翌月にはパート2、くらいのテンポ感やってもらわないと全然無理なんですね、私。

2009年公開の『エスター』も、ホラー好きとしては絶対に観ているはずなんですが、どんなに気張っても踏ん張っても「なんか…ツリーハウスが火事に…なってたっけ?」くらいの記憶しか捻り出せませんでした。

こんな場合はネ

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優しさとは誰かを救うことができないことに絶望する想いから生まれるかもね『ザ・ホエール』

優しさとは誰かを救うことができないことに絶望する想いから生まれるかもね『ザ・ホエール』

ネタバレします。
嫌な人は即退散を!

主演のブレンダン・フレイザーは、2000年代に『ハムナプトラ』でスターになった俳優です。

だけど、このころにアメリカ映画界の大御所からセクハラを受けて鬱になっちゃったそうです。ウィキペディアを見ると、その後も俳優としての活動は継続していたようですが表舞台からは消え去っていました。
かの『#Me too運動』で当時のセクハラ被害を公表した時、「ああ、こんな人

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なぜ飲食店副店長候補なのか『生きる-LIVING』

なぜ飲食店副店長候補なのか『生きる-LIVING』

ネタバレします。
嫌な方は即退散を!

珍しく仕事に追われて頭の中がぐちゃっとしてきたので「いいや、映画でも観に行っちゃおう」と自転車飛ばし、その日の最終回にギリ間に合いました。私にとって映画館というのはシェルターでもあります。

さて、黒澤明監督の『生きる』のリメイクです。
設定を第二次世界大戦後のロンドンに移し、主演はビル・ナイ。

役所の市民課長である男は、情熱もなく、日々の業務を淡々と遂行

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まあいろんな映画あるよね『逆転のトライアングル』『西部戦線異常なし』

まあいろんな映画あるよね『逆転のトライアングル』『西部戦線異常なし』

『逆転のトライアングル』は、3つのパートに分かれているお話で、最初のパートは面白かったんですけどね。

インフルエンサーの女子とモデルの男子のカップルがレストランで食事を終え、女子が「素晴らしい食事だったわ。ごちそうさま」と彼氏の目も見ずにスマホをいじりながらさらっと言うと、彼氏が「ちょっと待って、どうしてそんなふうに言えるの?」とつっかかります。

「昨日、明日は私がごちそうするって言ってなかっ

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スピルバーグの闇を見た『フェイブルマンズ』

スピルバーグの闇を見た『フェイブルマンズ』

私、子どものころは怖がりで、いろいろ怖かったんですが、そのうちのひとつが『宇宙』でした。
果てしない。壁がない。そんなこの世のものとは思えないものが事実この世に存在して、しかも、私達はその中に生きているって、そんなの絶望しかありませんした。夜な夜な考えては一人枕を濡らしたものです。もちろんUFOや宇宙人の類も大の苦手でした。

だけど私は人前では、怖いものなど何もない、という態度を取り続けたいタイ

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そこに愛はあるんか『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

そこに愛はあるんか『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

そのうちNOTEにも書きますが、まるで呼吸をするように常に浮気をする男と付き合っていたことがあります。
一緒に行ったクラブでこっそりナンパをしていたり、楽しかったハワイ旅行から帰る飛行機の中の会話で、うっかり嘘がバレて大げんかになったこともありました。

そのうち私は、すごく楽しみしているデートや旅行の前でも「もしかしたらすごく嫌なことが起こるかもしれない」と最低最悪の事態を想定し、深呼吸とともに

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