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【ライズ・アンド・フォール、レイジ・アンド・グレイス】 全セクション版
1.
雲一つない、青く渇いた空。隆起した岩肌、荒れ果てた大地。舗装されぬままにヒビ割れたアスファルト。その傍で古代遺跡めいて佇む、寂れたダイナーズ・レストランや雑貨店の廃墟を見れば、この荒野に伸びるアスファルトが、かつては文明の一端を担っていた道路であったことがわかるだろう。
「ゲェーッ、ゲェーッ……」
貪欲なハゲタカが、野垂れ死んだらしいソクシンブツめいた旅人の死体を貪り散らしていたが、
【キョート共和国、ハクトウの邸宅:スプレンディド、ペネトレイト】ア・モーメント・オブ・ニンジャ・ライフ
『ア・モーメント・オブ・ニンジャ・ライフ』。
ニンジャの生活のワンシーンを切り取った短編です。
◇このモーメントは第二部時系列のものです◇
【オンスロート・オブ・ア・ダイコク・フロウ】#5
承前
デスドレインとスプレンディドの攻防を注視ながら、ペネトレイトは広大な会場を駆け回る。右腕を纏う無骨なガントレット・ブレーサーにカラテを込め、砲筒内に鉄杭をカラテ生成する。同時にジツの充填をしながら。彼女の切長の眼、その瞳が紅蓮に染まる。
ペネトレイトがその身に宿すはサクヤク・ニンジャのソウル。タマヤ・ニンジャクランのカイデン者にして、後に同クランから分派したテッポウ・ニンジャクランの
【オンスロート・オブ・ア・ダイコク・フロウ】#4
承前
……「「「ガンバルゾー!」」」「「「ガンバルゾー!」」」「「「ガンバルゾー!」」」……。
キョート城に響き渡る禍々しいバンザイ・チャント。常人がその光景を目の当たりにすれば、震え上がって昏倒、ないしショック死してしまうであろう。そのようなザイバツ・シャドーギルドの恐るべき儀礼のなかに、スプレンディドは参列していた。
此度の例会は人事昇進の発令によるもの。スプレンディドは先日までは
【オンスロート・オブ・ア・ダイコク・フロウ】#3
承前
冷たいアスファルトの上で、キンジは億劫に眼を覚ました。視界はぼやけたまま。全身がズキズキと痛んで、燃えるように熱い。鈍重に身体を起こし、混乱したニューロンを何とか整理させようとする。あの時、何が起こったのか?どれほど時間が経ったのか?突然、リムジンに何かが落ちてきて……アタネを連れて外へ……それから?……。
「……アタネ=サン!!」
喉の奥から声を絞り出す。ハッキリと意識が覚醒する
【オンスロート・オブ・ア・ダイコク・フロウ】#2
承前
ガイオン・シティの栄華は、厚化粧のオイランの美麗さと似ている。詮索の気無しに表層だけを見やるならば、憂いはない。ただただ、美しい。厚化粧をしたオイランは、何も自らを誇示するためだけに化粧をしているのではない。コンプレックスの反動でもない。己を見る者達の眼に彩を添えたい、美しい物を魅せてやりたい……そういったオモテナシめいた精神を着飾っているのだ。
では詮索の気あれば。厚い化粧の下の素
【オンスロート・オブ・ア・ダイコク・フロウ】#1
華の薫りに空気を彩られたチャノマ。オーガニックの畳、フスマはどれも厳かで、それでいて艶やかだ。貴き円卓の如きチャブ・テーブルの前に座するは若い男。閑雅なる薄紫色の髪をミディアム・スタイルに整えた、白磁めいた麗しい肌の男だ。名はマサラサマウジ・ハクトウ。エド戦争で大義を果たした武家一族の血を引く由緒正しき家系の末裔であり、ビジネス界に名を馳せる資産家でもある。
清潔感のあるフォーマルホワイトの
【キョート共和国、アッパー・ガイオン某社:スプレンディド、ペネトレイト】ア・モーメント・オブ・ニンジャ・ライフ
『ア・モーメント・オブ・ニンジャ・ライフ』。
ニンジャの生活のワンシーンを切り取った短編です。
◇このモーメントは第二部時系列のものです◇
アーカイブ:【ヒストリー・リピーツ・ヒムセルフ】
1.
ギュグン!ギュグン!
バイオスモトリによる労働力によって、大型のリフトが降下を始める。数十人は搭乗できるであろうこのリフトには今、二人しか搭乗しておらず、どこか寂しい。二人の内の片方……細身の男はどこか落ち着かない様子だ。
ゴウン、ゴウン、ゴウン……降下音が鈍く鳴る度に、細身の男は身を強張らせるのだった。「緊張しているのか、エフェメラ=サン?」もう一人の、中肉中背の男が聞く。「…
アーカイブ:【オバケ・オブ・コケシ・ザット・マスト・ダイ】
1.
「なぁアニジャ」臆病そうな小柄の男が、先に歩く長身の男に震える声で言った。長身の男は苛立ちを帯びた声で答える。「なんだよ」「本当にこんなところに、金目のモンあんのかよ」小柄の男は周りを挙動不審気味に見渡しながら、おずおずと聞く。
彼等が歩くは、薄暗い廃墟である。時折薄汚いネズミが飛び出しては、小柄な男の心臓を跳ね上がらせた。この廃墟は、かつてはショッピングモールであった。しかし、ヤクザ
【フック・アップ・ウィズ・スタグナント・ブルー】
1.
宵闇に染まるガイオン・シティ、シナシダ区。基盤目じみて整備された往来を歩く人々も、今は疎。ウシミツ・アワーを少し過ぎた頃合い……屋根屋根を駆ける色付きの風あり。色付きの風?否、よく目を凝らしていただきたい。
「……ハァーッ!ハァーッ!」
読者諸氏にニンジャ動体視力をお持ちの方がおられれば、それの正体が荒く息吐く若い男のニンジャであることが容易に認識できよう。鼻から下を覆うシャープな
アーカイブ:【イン・リタリエイション・フォー・ハーシュ・リアリティ】
1.
POWPOWPOW……重金属を含んだ酸性雨が降り続く猥雑な街をサイレンが飾る。また、喧騒の声や上空を飛ぶマグロ・ツェッペリンの欺瞞的広告音声も連なっている。 その光景をボンヤリと見る浮浪者の側を大衆は通り過ぎて行く。脇目も振らずに。
「ザッケンナコラー!」「アイエエエ!!」誰か不運なサラリマンがヤクザに因縁をつけられているようだが、人々の流れはモーゼの海割りめいて分かれ、通り過ぎていく
【イッツ・オールウェイズ・ダーケスト・ビフォー・ザ・ドーン】
TICK TOCK、TICK TOCK……壁に掛けられた質素な時計が針の音を神妙に響かせる。空席ばかりの事務所内は薄暗い。部屋の最奥のデスクを照らす机上ミニ・ボンボリライトと、UNIXから発せられる緑の光とだけが、物憂げに輝いている。室内にただ一人、画面の前で厳しい顔で腕組みをするは……ニンジャだ。
彼の背後の壁には『為せば成る』『不如帰』『徹底する』のショドー……更に新たに掲げられた、彼自
【プル・ザ・シェイズ・ワン・ナイト】
POW POW POW……遠く響く剣呑なサイレン音。宵闇をより暗澹たらしめる、重金属の雨。『ヤスーイ、スゴーイ』『エレメンタルな』『ヤチマエバ』の文字を踊らす電子看板の光が行燈めいて夜に霞む。蒙昧の群衆を貪る、貪欲の電脳都市。眠らぬ喧騒の夜景。
……ネオサイタマ某所にて。
耐重金属酸性雨パーカーのフードを目深に被り、フラフラとした足取りで夜を歩く若い女が一人。微かにのぞく顔立ちは、まだあ
加筆修正:リマスター【マーダー・レッスン・フォー・グッディ・ガール】
◆当エピソードに加筆修正が入り、ボリュームが増しました◆
その影響で総セクション数が④から⑤になり、元々の②が③に置き換わり、②は新たに増設された新規パートになっています。
その他、全編的に細々とした手直しが入っています。
◆ヨロシクオネガイシマス◆