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記事一覧
アーカイブ:【オバケ・オブ・コケシ・ザット・マスト・ダイ】
1.
「なぁアニジャ」臆病そうな小柄の男が、先に歩く長身の男に震える声で言った。長身の男は苛立ちを帯びた声で答える。「なんだよ」「本当にこんなところに、金目のモンあんのかよ」小柄の男は周りを挙動不審気味に見渡しながら、おずおずと聞く。
彼等が歩くは、薄暗い廃墟である。時折薄汚いネズミが飛び出しては、小柄な男の心臓を跳ね上がらせた。この廃墟は、かつてはショッピングモールであった。しかし、ヤクザ
【フック・アップ・ウィズ・スタグナント・ブルー】
1.
宵闇に染まるガイオン・シティ、シナシダ区。基盤目じみて整備された往来を歩く人々も、今は疎。ウシミツ・アワーを少し過ぎた頃合い……屋根屋根を駆ける色付きの風あり。色付きの風?否、よく目を凝らしていただきたい。
「……ハァーッ!ハァーッ!」
読者諸氏にニンジャ動体視力をお持ちの方がおられれば、それの正体が荒く息吐く若い男のニンジャであることが容易に認識できよう。鼻から下を覆うシャープな
【UCA南西部、ギャング組織のアジト:アズール、アウェアネス】ア・モーメント・オブ・ニンジャ・ライフ
『ア・モーメント・オブ・ニンジャ・ライフ』。ニンジャの生活のワンシーンを切り取った短編です。
【ライズ・アンド・フォール、レイジ・アンド・グレイス】 全セクション版
1.
雲一つない、青く渇いた空。隆起した岩肌、荒れ果てた大地。舗装されぬままにヒビ割れたアスファルト。その傍で古代遺跡めいて佇む、寂れたダイナーズ・レストランや雑貨店の廃墟を見れば、この荒野に伸びるアスファルトが、かつては文明の一端を担っていた道路であったことがわかるだろう。
「ゲェーッ、ゲェーッ……」
貪欲なハゲタカが、野垂れ死んだらしいソクシンブツめいた旅人の死体を貪り散らしていたが、
【サムウェアー・イン・ザ・ガイオン・ナイト】
アンダーガイオン第七階層。強化コンクリートの天井部に留まった化学スモッグと、上層部から染み出した汚水とが混ざりあいできた重く穢れた水滴が垂れ、陰鬱に空気を湿らす。
その一区画、廃工場地帯。揮発した廃油にベッタリと覆われたとある社屋に大勢のヨタモノが屯している。その建物内、元は会議室であった部屋に一人の娘が監禁されていた。椅子に縛り付けられ、口にはガムテープ。痣だらけの顔、その両目いっぱいに涙を溢
SERIES:『リトル・ガール・ディテクティブ・イン・ガイオン』
◇『リトル・ガール・ディテクティブ・イン・ガイオン』とは?◇
第3部終盤〜終了後の少しの時間、少女ニンジャ・アズールがキョート共和国首都ガイオンで私立探偵代理として活動していたら?……という体で錬成された二次創作・テキストカラテ・シリーズです。
月破砕後、アズールがガンドーの遺産をコケシ・サイコウに受け渡すまでの足取りの詳細は描かれておらず、その空白を妄想によって自己保管しようという形だ。
【ライズ・アンド・フォール、レイジ・アンド・グレイス】エピローグ:ステアリング・アット・ザ・サン
……0101010101010100010110……
何処とも知れぬ闇夜の空間を、彼は歩く。視線の遥か先には熱帯びた淡い光。そこへ向かい、彼は歩く。
時折立ち止まり、後ろを振り返り、手を伸ばす。濁った空色の瞳をしたドレスの少女へと。虚無的な嗜虐心と笑顔を浮かべ、残酷なビジョンを幻視し……苦しみ、呻き、蹲る。胸をおさえながら……。
彼の胸元に空いた不可思議な風穴、そこに浮かぶはエメツではなく
【ライズ・アンド・フォール、レイジ・アンド・グレイス】 #6
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少女はゆっくりと瞼を開けた。意識が不明瞭なまま、寝惚けているように上体を起こし、空色の眼で辺りを見渡した。
ドクロめいた月が浮かぶ夜の空。空から降り注ぐ光。至る所から火の手が上がっている。地面に広がるコールタールめいた液体。ケオスの坩堝。動画の一部を切り取ったような静止画の世界。古事記に記されたマッポーの如き様相。整然とした街路を逃げ惑う人々。その顔や輪郭は不明瞭で、抽象的だった。
【ライズ・アンド・フォール、レイジ・アンド・グレイス】#5
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Y2K。電子戦争。世界の定理を覆し、時代を一転させたケオスの中で、広大なアメリカ大陸に点在する美しい自然の山々は、悪党の隠れ蓑として恰好の的となった。マイラ・モンティ。かつてその名で呼ばれたこの地も例外ではなかった。今やその山地、谷間に築かれたナローズ・ピットのアジトが垂れ流す産業廃棄物や、京観めいた死体の山が、見る者の言葉を失わせるに十分なほどの惨状が広げている。
それらのジゴクを
【ライズ・アンド・フォール、レイジ・アンド・グレイス】#4
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……数日前のこと。あの悍ましき<青い火>の永き一夜を明け、ニーズヘグ、サガサマのそれぞれと別れてから約2週間後のことであった。
大陸西海岸沿いに広がる……かつてはマリブと呼ばれていたらしい町にアズールは立ち寄った。メガロシティたるロサンゼルスとはそう遠くないこの町で、彼女はある人物の話を耳にした。離れに暮らし、時折日用品の買い出しにふらりと町に訪れるというその人物は、長い間、人を探し
【ライズ・アンド・フォール、レイジ・アンド・グレイス】 #3
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充満するキリング・オーラ。陽が沈みかけ始め、夕暮れの訪れを仄かに奥ゆかしく告げるなか、凄絶なるニンジャのイクサが幕を開く……!
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油断ならぬソナエニンジャ・クランの老戦士は少女ニンジャの只ならぬニンジャ存在感を前に、確かな高揚感を覚えていた。少女は……アズールは、見た目だけを見れば、小柄な、か弱い十代の美しい娘……といったところ。しかしニンジャの外見
【ライズ・アンド・フォール、レイジ・アンド・グレイス】#2
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カンカン照りの陽の光。正午はとうに過ぎた昼下がり。渇いたアスファルトの道を、仰々しくガトリングガンや火炎放射器などを備え付けた異様なバンの編隊が縦列を組んで走行していた。先頭を走るカンオケ・トレーラーは一層異様な風体だ。車体のあらゆる箇所に固定砲台が付き、牽引した大型コンテナの上体と側面には遠隔射撃用ドローンの発着装置がフジツボめいてびっしりと生えている。運転席に座るは、ドレッドヘアー