とっておきの京都手帖1 茶摘み
<八十八夜/茶畑>
宇治には朝霧が立つ。
今日5月1日は八十八夜。
新茶の季節到来だ。
この日を楽しみしている方は多い。
「八十八夜」とは立春からかぞえて88日目の夜です。
農家にとって、大切な恵みの作物に「霜」は、要注意です。
この「八十八夜」以降「霜」は少なくなり、安心して「茶摘み」や「田植え」の作業ができる目安とされてきました。
皆様ご存知の茶畑、思い浮かびやすいのは、新幹線で静岡県(牧ノ原台地)を通過している時に目にする光景かもしれません。
あのなんとも可愛らしい蒲鉾型の畝が、富士山ともに車窓を楽しませてくれます。
京都とお茶の歴史と文化は800年前から続いてきました。
京都府は、
北から南へ「海の京都」「森の京都」「お茶の京都」と3つをエリアを決め、お茶の普及に取り組んでいます。
今や、海外でも「抹茶」がブームとなっていますが、特に、茶道で使われる高価な
お抹茶について紹介したい。
茶摘みの20日以上前から、茶畑をよしずなどで覆い、太陽光をさえぎり霜除けをします。
新芽はかすかな光を求めて葉緑素が増し、柔らかで鮮やかな緑色になります。
風味は、しぶみが抑えられ、うま味が加えられます。
ーーその後の作業は
①手で新芽だけを摘む
②高温で蒸す
③もまないで乾燥させる
④小さく砕き葉脈を取る
⑤乾燥させ選別する
⑥石うすで挽く
こうして、ようやく栄養満点の「スーパーフード」抹茶の完成です。
覆下茶園で育った新芽は、とても柔らかくしなやかです。
覆下に、わずかながらも差す日の光が新芽を輝やかせて、それはそれは、まばゆい世界が広がっています。
私も何度か、覆下栽培の茶畑を見学し、新芽を摘んだことがあります。
手間隙かけた栽培と、丁寧な製造工程の中で、幾重にもうま味が感じられる極上の茶葉へと変わっていきます。
それは、大変繊細で、労作業の末に誕生するお茶だと知りました。
毎年5月から出回る新茶、そしてこの新抹茶。
飲むと、まろやかなうま味とさわやかな香りが口の中いっぱいに広がります。
ほっこり笑顔になるのは、労を厭わず、お茶に愛情を注ぐ生産者さん達の思いがたくさん詰まっているから。
まさに、携わる方々の努力の結晶です。
「宇治茶の文化的景観を世界文化遺産に」ーー世界文化遺産への登録を目指し、京都府として、宇治茶の魅力を府民へ観光客へ、世界へと発信されています。
そして、その文化的景観から生まれる宇治茶をより身近に感じてもらおうと、宇治茶の老舗も普及に取り組んでいます。
「お茶の京都」ーーそれは、皆様が口にするまでの、生産に携わるすべての方々の宇治茶愛によって日々進化しています。
私も「宇治茶の文化的景観を世界文化遺産に」との取り組みを、心から応援している一人です。
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