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コラム「新風」 祇園祭「山鉾建て」始まる



フォトグラファーの北山さとです。

「白石方一のとっておきの京都手帖」、編集・撮影を担当しています。


皆さま、いかがお過ごしでしょうか。




光る匠の技


山鉾やまほこ建てが7月10日早朝より始まった。


撮影取材のために7時前から長刀鉾なぎなたほこ保存会の前にいた。


私同様、撮影目的の人たちも徐々に集まりだした。


長刀鉾保存会 2024年7月10日朝




その中を、マッチョな男衆が次々に登場。


ほこ建ては、インターネットによれば7時からと書かれていた。


配達のワゴンカーが到着。


大きなさかきを2つ、運ぶ。




「立派なさかきですね」

とお声掛けした。


「うちは祖父の代から、長刀鉾なぎなたほこさかきを収めさせて頂いています。

奈良の山から仕入れました。

こんな立派なさかきは最後かもしれません」


と語ってくださった。

届けられた榊 2024年7月10日朝


次に、福井ナンバーのワゴンカーから次々と縄が降ろされている。


福井からは縄
隣接県からも祇園祭を支える職人さんたちの姿が


ワゴンから降ろされ、積み上がる縄




ほこの組み立てで、匠たちは、図面など持たない。


前祭さきまつり23基のうち、今日から開始したのは、


長刀鉾なぎなたほこ

函谷鉾かんこほこ

にわとりほこ

菊水ほこ

ほこ

の5つだ。


匠らが釘を1本も使わずに、荒縄あらなわだけで骨組みの柱を固定する「縄絡なわがらみ」を披露。



長刀鉾保存会の2階ではお祓いが
黙々と縄絡みをする匠たち


思わず見惚れてしまう縄絡み 職人技



みなカラダが覚えているようだ。


美しくもある。


まさに、アートだ。



この光景を見るためだけに、昨夜から泊まりがけで来られている大阪の紳士と親しくなった。


「これだけ多くの方に支えられて、日本一の祇園祭があるんだなぁ」


と感心されていた。



この縄絡なわがらみは、懸装品けそうひんと呼ばれる装飾が施されるともう見ることが出来ない。


隠れてしまうのだ。


釘を全く使わない匠の技が、山鉾やまほこの全てを支える。


巡行するほこのうち、最大のものは12トンにも達するという。



昨日から開始された「山鉾やまほこ建て」という組み立ては、後世に受け継がれていく「祇園祭」であるよう、心を込めた盤石な基礎作りだ。



「安全を約束されたものにする」ーー



職人さんたちの真剣な眼差しに、しばし暑さも忘れて見入ってしまった。




四条通りをはじめ、各山鉾やまほこ町は、一気に祭ムードが高まっている。



匠の技に魅せられた私。



いつの間にやら、見る側よりも祇園祭を作り上げていく町衆の気持ちになっていた。





<(c)2024   文・撮影 北山さと 無断転載禁止>




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